第8話 菁華

「「おはよう栞華しおり/お姉ちゃん!」」

「あ、うん…おはよう…」


くっそ眠い…

私は結局限界が来て気絶するように眠るまでずっと起きていた。というか限界が来た時には外は薄っすらと明るくなってた。


「体調悪い?」

「少し眠い…」


そんな寝不足の私を2人が心配そうに見つめている、でもそんな風に見つめるのなら私が何回か声掛けた時に起きて欲しかった。

てか起きろ、地震かと錯覚させるほど揺らしたのに起きないって逆にヤバいよ?


「そっか、ならもう少し寝ようか。」

「いや、少し1人にしtーー」

「「え…」」


頭働かない今対応する余裕ないんだよ、お願いだから寝かせてくれぇ…


「2人が用意してくれたベットを1人で使ってみたくて、大きいベットを独占するのが夢だったんだ。」

「そうだったんだね。」


自分でも意味わからん夢だけど、2人は納得したみたい、ベットから降りて私は圧迫感から解放される。


「じゃあ、おやすみ…」

「おやす…あ、待って。」


もう直ぐにでも寝落ちしそうなのに姉に止められる。


「お昼ご飯何食べたい?あと、夜ご飯も希望を教えてくれると嬉しいな。」


それ今答えないとダメ?

なんでもいいし、今から寝るって言ってるじゃん!


「なんでも、いいよ…」

「わかった。

畔華ほとりと話し合って何にするか決めるね、おやすみなさい。」


いざゆかん、夢の世界へ。



〜姉〜


あの日から眠れなくなった。

いや、正確には眠ってるんだけど浅かった、でも栞華しおりと一緒に寝た今日はとても快眠で起きた時も疲労感は一切感じない、さすがは栞華しおりだ。


「ヤバい、今ならテスト100点取れる気がする。」

「受験なんだし、調子良い時にもっと勉強した方がいいんじゃない?」

「お姉ちゃんと離れるから嫌。」


ワガママだな。

快適に眠れた私達とは対照的に栞華しおりは眠そうにしていた、多分家に帰ってきて安心した影響で疲れが出たんだろう。


「勉強しなくても離れることにはなるよ?」

「え?なんで?」

「昨日のご飯は私が作ったんだから買い物を含めても今日は畔華ほとりがやるんだよ。

一回やらかしてるしね。」

「うぐぐ…」


畔華ほとりのやらかし、廊下で栞華しおりが座り込んでいた。

私が原因の畔華ほとりをしばいてやろうかと思ったけど、優しい栞華しおりの前で実行するわけにはいかなかったんだ。


「わかった買い物に行ってくる。」

「いってらー。」


はよ行け、私と栞華しおりの2人だけの空間を作りたいんだ。

ほら、はよ。


「まだご飯は軽いのが良いよね。」

「そうだね、軽めの方がいいよ。

早く行ってきな。」


流石にやり過ぎたみたいで、殺意の視線を私に向けてきた。


「覚えてろよ。」


扉が閉まる直前に聞こえたのは、とても低い怒りを堪えた声だった。


「さてと、栞華しおり…」


顔にかかった黒髪をずらして顔を見る、とても綺麗だ。

栞華しおりはあまり美容に気を使っているようには見えなかったけど、羨ましくなる程の綺麗さだ。


肌はモチモチでニキビ1つ見当たらない、長い髪はサラサラかつ潤っている。


「ん…」


っと危ない。

流石に触り過ぎたか。


「…!」


髪を撫でていた私の右手が掴まれ胸元へと寄せられる。

少し痛いけど柔らかい部分が当たって…


「ヤバ、鼻血が…」


入院する前までは姉妹の容姿なんて見てもなんとも思わなかったし、全然気にして無かった。


でもよく見ると女の私ですら惚れ惚れする綺麗さなんだ。

私の中で栞華しおりの存在が大きくなってるのも影響してるのは間違いないけど、綺麗な栞華しおりにこんな事されたらドキドキが止まらない。


「ティッシュ…」


手の届く範囲にティッシュがあってよかった。

それにしても力が強い、栞華しおりって寝る時に抱きしめる癖でもあるのかな?


よくよく思えば夜中に結構動いてたのは抱きしめるのを探していたのかもしれない。

今晩から畔華ほとりと戦争だな。


「ん、へへ…」

「…食べちゃいたい。」


この感情はなんなのだろうか。

姉妹愛?家族愛?なんか違う気がする。


あまり人を好きになった事が無い私にはわからないだけで、他の人にはわかるのかも。

あ、男子をカッコイイと思ったことはあるよ?でも好きとは違うじゃん?


「愛でる気持ち?」


いや、う〜ん…


「よくわからない。」


自分の気持ちがなんなのかを考える。


「ゅ…」


私達と過ごしてる時より遥かに安心してる気がする。どこか表情が穏やかなんだ。


「そうか!」


この気持ちは子供を見守るお母さんだ!

私は栞華しおりに安心して欲しい、1人じゃ無いんだって教えてあげたい!


スッキリした!


「愛してるよ、栞華しおり…」

「は?」


大きな声を出したせいか起きてしまった栞華しおりと目があった。

起こしちゃったのか。


「いや、待って…は?」

「私に甘えていいからね。

なんでも言って?ギュってしてあげようか?」

「いやいや、は?」


混乱しちゃってるんだろうけど、私の肩から変な音鳴り出したから少し力弱めて欲しい…


待てよ?この痛みは私に与えられた罰?


なら、


「もっとギュッてしていいよ!」

「え?

あぁ!ご、ごめん…」


あぁ、離れちゃった。


「急に変なこと言われて眠気が吹き飛んだよ。」

「変なこと?」

「急に愛してるとか、ギュッてしていいとかあげるとか…」

「普通じゃない?」

「マジかよ…」


頭抱えちゃった、そんなに変なこと言ったかな?

不思議な栞華しおりちゃん。



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次回 学校の準備

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