第7話 眠れない…

「うぅ……」


信じられないぐらい体が怠い…

お風呂場で倒れかけた私を2人は頭がひんやりするアイス枕を用意して、うちわで仰いでクールダウンしてくれてる。


「お水飲めそう?」

「待って、普通のお水よりホカリの方がいいんじゃない?」

「そうかも!」


冷たすぎなければどっちでもいい…

だけど、そんな私の気持ちは届かず、冷蔵庫で冷やされていたホカリを少しずつ飲ませれた。


その後も2人にお世話されること多分1時間くらい、やっと体調が良くなってきた。

のだが、


「「ごめんなさい。」」


体調が良くなったとはいえ倦怠感は残っている。

そんな私を待っていたのは2人の謝罪、2人の表情は罪悪感でいっぱいバージョン。


もう、やめてや…

私を疲労で殺す気か。


「別に大丈夫。」

「「……」」


なんでや、謝罪は受け取ったやろがい!

元に戻れや!頭を上げろぉ!


ハッ!

危ない、あんまりな光景にエセ関西弁みたいな変な口調になってしまった…


そもそも関西弁なのかすらわからないけど…


「「……」」


罪悪感を感じている人が求めている事とはなんだろうか、まず思い浮かぶのは単純に私の許し、それ以外だと…


罰とか?


「わかった、明日からは1人でお風呂に入る。」

「「そんな!」」


お、結構良い感じだぞ?


「それだけは絶対に嫌です、ごめんなさい。」

「私も嫌です、お姉ちゃんと一緒にお風呂入りたいです、ごめんなさい。」


…私にどうしろと?!


将来の目標を心理学者にしようかと本気で考えてしまうぐらい、最近の2人は意味がわからない。


「じゃあ、入ってあげるから謝罪辞めて、普通に私と接して。」

「「普通…?」」


何故そこでクエスチョンが付くんだぁぁ!


「…何がわからなかったの?」


2人は顔を見合わせたあと、菁華すずなが話し始めた。


「えっとね、普通ってどこまでが普通なのかなって…」


???


意味がわからない言葉にポカンとしてしまう。

まさか普通の定義について聞かれている訳ではないだろうが、2人の顔は真面目そのものであり私に普通の答えを本気で求めているとわかる。


「ふ、2人の普通はどんな感じ、なんですか?」


敬語混じりの変な喋り方。

2人は再び顔を見合わせて、今度は畔華ほとりが話し始める。


「一緒に寝たりとか、おはようのキスとか、生活のお手伝い…」

「ちょっと待て。」


おかしい、これって恋人同士が稀にやる、どこまでOK?だったっけ?

いつから私は2人と恋仲になっていたんだろう、もしかして寝惚けて告白でもしたのか?


頭を掻きむしりたくなるが、なんとか自分を抑えて冷静に話をする。


「とりあえず、キスはなし。」

「「ぇ…」」

「夜寝るのは100歩譲って良しとして、生活の手伝いはまだ本調子じゃないから逆に頼みたい。」


本音では全部ダメにしたいが、それを提案すれば再び謝罪の嵐が襲ってくるだろう。


「「頑張るよ!」」

「あ、うん…

お願いね…」


これ以上は頑張るな。


とても嬉しそうな2人をみて、頭が痛くなった。


暫く様子を見れば2人の様子が元に戻ることを期待して、私は2人がこうなった理由を考えることを辞める事にする。

畔華に聞いたときみたいになれば私も罪悪感を感じて苦しくなるし、2人の様子が落ち着けば良いが逆に悪化して私のストレスがマッハで溜まる可能性もあることに気づいたのだ。


「ふぁぁ…」


眠い…


今の時刻は入院する前ならまだ起きていた時間帯、でも寝たきりで体力が落ち、入院生活で規則正しく生活していたのもあってか眠気が襲ってきている。


「とりあえず、今日はもう寝る。

…それと色々ありがとう。」


ストレスになる事もされたが逆に2人のおかげで生活がしやすかったのも事実。

仕方なく、本当に仕方なくお礼を言う。


「じゃあ行こっか。」

「え?

あぁ、そうだったね。」


2人に付き添われて2階へと上がり、両親の使っていた部屋に入る。


部屋は綺麗に整理されていた。

タンスや収納は無く、小さい机と2個の椅子、そして海外のホテルかと思うほど大きいベット。


「買ったの?」


1番最初に浮かんだ疑問、もっと色々聞きたかったけど大きいベットに気を取られすぎた。


「マットレスだけ買ったよ。

骨組みは2つを組み合わせて使ってる。」


よく見ればベットの骨組みは左右で違う物だ。


「他のベットは分解して物置に仕舞っちゃった。」

「そうだったんだ。」


両親の物と私達姉妹の物を合わせたらベット5個あったよな?って考えてたら畔華ほとりが答えてくれた。

それについても言いたい事があるけど、まぁ良いや。


ピンと綺麗に張られたシーツに手をつき横になって、大きな枕に頭を乗せて中心の方へと移動する。


足元で畳まれたタオルケットを自分にかける。

横になった感想だが、柔らかくてサラサラして、とても快適に眠れそうだと思った。


栞華しおりが寝るなら私達も寝ようかな。」

「私右〜。」


仰向けで横になった私、その右側に畔華ほとり、左側に菁華すずなが横になった。

私にかかっているタオルケットの上にだ。


つまり、


「あの、動けない…」


タオルケットで体を抑え付けられている。


「おやすみぃ。」

「おやすみなさい栞華しおり。」


更にタオルケットの上から腕で抱きしめられ動けなくなる私。


「待って、タオルケットの中に入らないの?」

「「……」」zzz

「え、ま…え?早くない?!」


人は同じ体勢で長時間過ごすことに苦痛を感じることは皆なんとなく知っていることでしょう。


「眠れない…」


声を掛けたり体を揺らして起こそうとするが深い眠りに落ちているようで、全くと言っていいほど起きる気配がない。


「これは早まったかもな。」


一緒に寝る事を許可したのを後悔している。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回 菁華すずなママ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る