第5話 お風呂 前

畔華ほとりと一悶着あってから廊下でウトウトしながら座っていた。

しばらく経つと姉に呼ばれ、今は3人で静かに食事をしている。


「「「……」」」


え、こんな静かなことある?

姉妹が揃って夕飯だよ?もう少しさ、なんか会話とかあってもおかしくないじゃん?


でも私から話しかけられない、なんかヤバそうなオーラが出てる気がして、声を出せないんだよね。

もしかしたら私コミュニケーション能力は人並みにあると思ってたけど、実際は全然ないのかもしれない。


(あ、これ美味し…)


「「……」」


気まず過ぎるよこの空間、なんか喋ってよ…


そんな気持ちが伝わったのかはわからないけど、畔華ほとりが話し始めた。


「お姉ちゃん。」

「ん?なに…」


箸を置いて私に向き直ってきたから、私も夜ご飯を食べるのを辞める。


「さっきは、ごめんなさい。」


謝罪だった。

なぜこのタイミングで?食べ終わってからでも良かったんじゃないかな。


「いいよ、私も言い過ぎた。」


私自身かなりカッとなって冷静じゃ無かったし、流石にね。


「ありがとう…

これからはもっと伝わるように頑張るからね…!」

「そっか…

ん?」


反省…?

いや、反省はしてるんだろうけど、とても嫌な予感がするな。


「どうしたの?」

「あっ、いやなんでもない。」


これ以上は触れてはいけない、目の前の豆腐つくねを無心で食べる。

体に優しい、美味しい…


それからしばらくして、


「「「ごちそうさまでした。」」」


夕飯を食べ終えた。


「お姉ちゃんはまだ本調子じゃないんだから座ってて。」

「そうそう、でも横になるのは体に悪いからダメだよ?」

「あっ、はい。」


いつもの癖で食器を片付けようとしたら恐ろしい速度で止められ、これまた恐ろしい連携で食器を取り上げられしまった。

否と言わせぬ圧があったよ。


「そうだ、栞華しおりは今日どっちとお風呂に入る?」

「え?」

「まだ本調子じゃないし、1人でのお風呂は危険でしょ?」


冷静になれ私、姉が言ってる事は正論だし、別 それに女同士だから恥ずかしがる必要なんてない。

そう、別に緊張したり変に意識する必要もない!


はずなんだけど…


「「……」」チラ チラ


チラチラ見てくる2人の視線がちょっと怪しい感じがする。

例えるならナンパする相手を見定めてる男みたいな!された事ないから想像だけど…


「どっちでもいい…」


結局私は逃げた、2人のうち1人を決める事なんて恥ずかしくて無理だろ…

そこまで開き直れない。


「だって畔華ほとり、わかってるでしょ?」

「姉さん、2人より圧倒的に馬鹿な私にも譲れない事ぐらいあるの。」

「そうなんだね〜。

でも一回ミスしてるよね?」


喧嘩な始まりそうな雰囲気を感じる。

そんな嫌なら頑張って1人で入るから、別に無理して一緒に入らなくていいのに…


ピッ


なんとなく長引きそうだと感じた私はテレビをつける。

時間的にニュースが終わって、バラエティー系の番組が多い時間帯だ。


「……」


今話題のドッキリ番組がやってる。


『次のドッキリはーーー』


芸人やアイドルがドッキリに掛けられる。

今はくだらないドッキリ集という、絶妙に面白くないドッキリの映像が30秒ぐらいで連続再生されている。


金魚掬いにメダカしかいないドッキリとか、笑いどころがわからん。

司会の人も苦笑いって感じ。


「はぁ…」


変えよ変えよ。

特に見たいテレビ番組がないけどなんとなくつける番組ランキング1位、歌番!


ふと喧嘩になりかけてた2人が静かになってる事に気づいた。

解決したのかな?


「こんなつまらない事を話してる場合じゃなかったね。」

「うん、そうだね。」


横目でさりげなく確認してみると握手してた。


「お姉ちゃん、お風呂いつぐらい入る?」

「いつでも良いよ。」


畔華ほとりが聞いてきたし、一緒に入るのは畔華ほとりに決まったんだろう。


「じゃあ私は栞華しおりのパジャマ取ってくるから、先に準備しててすぐ行くから。」

「わかった、お願いね姉さん。」


うん?


「あ、そうだ畔華ほとり

次は無いからね?」

「わかってる、次は無い。」


次とは?

2人の会話に疑問を覚えつつも、なんとなく察してしまった次の展開、


「3人揃ってお風呂なんて久しぶりだね、最後に入ったのは私が小学生になってすぐあたりの頃かな?」


そう、3人で入る事となっている。

なんでや、2人とも嫌がってたじゃん…


「1人で入るよ…」

「それはダメ、絶対にダメ。

私と姉さんは、お姉ちゃんが心配で、心配で、大切な存在で、本当に大切なの。」


それで?


「お風呂楽しみだね。」


理由になってないわい!

あまりの話の繋がりのなさに、変な語尾がついちゃった。


絶対に純粋な心配じゃ無いでしょ…


「ゆっくり立とうね。手を掴んで。」


私が転ばないように安全を保ちつつ、立ち上がるための行動に過度な干渉はしてこない。

ベテランの介護士に迫るほどの技術だ。


「壁に手を付けるところまで、私でバランスとって。」

「ありがとう。」


お風呂場は廊下に出てすぐの所にある。


家を建てるとき母が『広い浴場が欲しい』と強く希望し私達3人が入っても少し狭いかな?ぐらいの広さがあり、狭いから1人で入るという言い訳は使えない。

覚悟を決めて、気まずい空間に行くとしよう。


上から脱ぐ。


「お姉ちゃんの肌綺麗だね。」


私より綺麗な畔華ほとりに言われるとなんか複雑な気持ちになる。


1ヶ月も寝てたせいでガリガリとまではいかないけど、少し細くなった気がする。

健康的じゃ無い痩せ方を想像してもらえればわかりやすい。







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想像以上に長くなったので分けます

前編と後編に分かれることになったので、また明日更新します

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