第4話 畔華

腕を揺らして離れるように促す。


「ん、どうしたのお姉ちゃん。」

「聞きたいことがある。」


どういう風に聞くべきか、やっぱり直球に聞いてみようかな。


「どうして私にここまで構うの?」


これだけだと、ちょっと伝わりにくいよね。


畔華ほとりはあまり私と喋らなくなってたし、入院しちゃったけど毎日来るとも思わなかった。」

「……」

「…!」


畔華ほとりは眼から光を無くして、私が痛く感じるぐらい抱きついて少し震えていた。

部屋の温度が下がった気がする。


「わた、私は…」


震えがどんどん強くなっていく。


「ひ、ひどいことを、お姉ちゃんに…」


途切れて途切れで聞き取りにくいけど、ゆっくり話し始めた。


「ぁぅ…

本当に、ごめんなさぃ…」


いやもっと内容を詳しく教えて欲しかったんだけど、謝罪には少し早いんじゃないかなぁ…

でも涙を流してる畔華ほとりにこれ以上、聞くことは出来ない。


「もういいよ、畔華ほとりが苦しんでまで知りたくはnーー

グェェ…」

「やっ!嫌いにならないで!」


おぉ、首が…首がぁ…!!

なんて力だ、ちょうど畔華ほとりの肩が私の首にハマってめっちゃ痛い。


「はな、離れて…!」


まだ本調子じゃない体で畔華ほとりを引き離す、その後は呆然と座って私を見つめていた。


「ゴホッ…」


あー、死にかけた。


「急に何するの。」

「え、えっと…」

「私が目が覚めてから、謝ってきたり嫌いにならないでって言ってくるけど私は何で謝られてるのかわからないよ。」


ヤバイな、頭に血が昇ってる。

もっと冷静にかつ、傷つけないように話したいのにセーブできない。


「私の部屋も勝手に片付けてる、菁華すずなにいたってはキスまでしてきた。

正直、2人が怖いよ…」


冷静にならないとダメだ。

壁に手をついて立ち上がる。


「少し1人にして。」


壁を伝いながら扉を開け、外へ出る。

後ろからは畔華ほとりの啜り泣く声が聞こえ、罪悪感が湧き出て来たけど、そのまま部屋の外へと出た。


「はぁ〜〜〜。」


壁に寄りかかって滑るように座り、大きく溜息を吐く。


「やっちゃったな。」


いやね、私に非が全くないっていうわけじゃないんだけど、8割ぐらい悪くないと思う。


「謝ったほうがいいよね…」


でも謝ったら更にヤバい事になりそうな気がするんだよなぁ…


こういう時に相談できる友だちがいれば…

いや、それよりもっと姉妹仲を良くしておけば良かった、仲が良ければ2人が何を思ってるのかわかったかもしれない。


「はぁ、私にどうしろと。」


2人について何もわからない。

だけどこれから先、私は面倒な事が多く起こる、そんな気がしていた。



〜妹〜


やっちゃった。

またやっちゃった。


またお姉ちゃんに嫌われちゃった。

そもそも仲直りなんて出来てなかったけど、私が怖いって…


どうしよう。


姉さんと約束していた。

家に戻ったら私と姉さんの2人でお姉ちゃんを支えるんだって、1人にしないんだって、だから家に帰ってきてから過去の事はこっちからは謝らない事に決まった。


一方的な謝罪に意味は無い、わかっていたはずなのに直ぐに謝罪の言葉が出てしまう。


「私はダメな人間だ。」


お姉ちゃんのためを思ってやった事、それがお姉ちゃんにとっては恐怖だったんだろう。


私と姉さんの行動はお姉ちゃんには伝わってなかった。

冷静に考えれば当たり前、自分のことを虐げてきた存在が急に抱きついてきたり、好意の言葉を伝えても信じられない。


逆に怖いだろう。私もされる側だったら怖い。


でも、私はお姉ちゃんより馬鹿だからどういう行動が正解なのかわからない。


「お姉ちゃん、また一緒に過ごしたいよ…」


私の気持ちはどうしたらお姉ちゃんに伝わってくれるんだろう…


どうすればわかりやすく簡単に伝わ……


簡単に?


馬鹿な私でも気づいた。

この考えがダメなんだ、簡単に伝わったら苦労なんてしない。

ひたすら理解できるまで問題を繰り返し解くしかない勉強と同じように、お姉ちゃんに気持ちが伝わるまで繰り返すしかないんだ。


それに気づけば私がやらないといけないことは単純だ。


もっと私がお姉ちゃんに気持ちを伝えられるように動けばいいのだから。

さっきまでと同じ行動ではダメ、さっきまでに更にプラスする!


「そうと決まれば直gーー

いや、しばらく1人にしてほしいって言ってたな…」


流石に今いくのは得策じゃないよね。


「私が抱きついたとき、お姉ちゃんは苦しそうにしてた、もっと抱きつき方を考えないと。」


私のお姉ちゃんに対する行動を振り返る。

どこが悪かったか、逆にどこが良かったか。


考え続けて自分なりに答えがまとまったとき、外から声が聞こえた。


「畔華、ご飯できたから降りてきて。」


姉さんの声だ。

少し冷たく聞こえるのは私が早速間違えてしまったから、一緒にお姉ちゃんを1人にしないで支えると約束したのを破った私に怒っているんだろう。


「うん、今行くよ。」


私はこれからお姉ちゃんとの関係を再び作る。


またお姉ちゃんと一緒に過ごすの、小さい頃はお姉ちゃんも楽しいと思ってくれてたはず、思い出してもらうの!

そして新しい関係を作っていく、私はお姉ちゃんが居てくれればいい、きっとお姉ちゃんもそう思ってくれるはず。


「ずっと一緒ダヨ…」


姉さん?

姉さんは味方であり、敵だよ。


お姉ちゃんに頼られるのは、私だけでいいの。




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畔華ほとり覚醒!


次回、謝罪と違和感

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