第3話 私の部屋が…!

病院が手配してくれた送迎車に乗り家へと戻る。

退院した時刻は10時、家族の2人は学校にいる時間だ。


「ここまでで大丈夫ですよ。」

「了解しました。」


車椅子を玄関にある段差を乗り越え廊下へと上げてもらった。


「こちら西川にしかわさんの担任看護師からです、いつでも連絡してとの事です。

それでは私はこれで。」

「ありがとうございます。」


車が遠ざかっていく音が聞こえ、久しぶりに家に帰ってきた実感が湧く。


リビングとかも見て回りたい気持ちもあるけど、今は自分のベッドでゆっくり休みたい。

病院のベットも快適だった、でもやっぱり自分が寝慣れているベットじゃなきゃ快眠とは程遠い気がする。


問題は私の部屋が2階にあって階段を登らないといけないこと。

筋力が弱っているだけで歩けない訳じゃないし、壁伝いにゆっくりなら階段も登れる筈。


「めっちゃ痛いの笑えねぇ…」


ゆっくり、10分ぐらい掛けて階段を登る。


半分ぐらい登ったところで、飲み物を持ってくるべきか本気で悩んだけど、そこまで来て戻るのは嫌だった。


さぁ、久しぶりの快適な私の部屋!


「え…」


扉を開けて中を見た私は強い衝撃を受けた。

だって、ほとんど何も無かったんだから…


え、イジメ?

両親の部屋を片付けたとは聞いたけど私の部屋まで片付ける?!


「床が冷えてやがるよぅ…」


あの無駄にフサフサで掃除がクソ面倒だったカーペットも無く、座り込んだ私にダイレクトにフローリングの冷たさが伝わってくる。


「え、マジで?」


急に冷静になる。


いや、キャスター付きの透明タンスとか普通の木のタンスとか中に色々あったけど殆ど使ってないから別にいいんだけどね?!


服は全部クローゼットに入れてたし、むしろあのタンス邪魔だった説あったし、でも急に無くなったらビックリするじゃん?


「タンスの中身有効活用してくれてるといいなぁ。」


昔ショッピングモール行った時にやってた抽選イベントで当たった化粧品とか、中学の頃友達に言われて衝動的に買ったよくわからない可愛いグッズとか…


…別に無くなっても支障ないな!

化粧なんてした事ないし、可愛いグッズより使い慣れたベットとタオルの方が良い。


「あー、ベットぐらいは置いておいてよ…」


少し怖くなり、クローゼットの中を確認する。


「よかったぁ…!」


クローゼットの中身は減ってるけど残ってた。

そろそろ出そうと思って用意していた毛布を取り出す。


疲れたのだ。

家に帰ればゆっくり心置きなく休めると思ってなのにベットは行方不明、仕方ないから毛布にくるまって少し寝る。


「おやすみ…

いや、待てよ?」


そういえば2人が両親の部屋を片付けた理由を一緒に寝れるようにって言ってたような…


私のベットとかタンスを一緒に生活するために移動させたって考えれば、一応納得できるよね。


まぁ納得はできても許せるかは別。

病院で言ってた時はあの2人の冗談だと思ってたけど、ガチだったのかぁ…


「寝よ…」



ーーーーー


zzz


「ーー、ーーー。」

「ーーーーー。」


なんか聞こえる、そして動きにくい…


「「あ、おはよう栞華/お姉ちゃん。」」

「おはようございます…」


私が仰向けで横になってて、目を開けたら2人が腕を抱きながら肩に頭を乗せてた、通りで動きにくいわけだ。


てか、顔近いわ!


「離れて…」

「あ、ごめんなさい。」

「謝らなくていいから退いて。」


2人が帰ってきたって事は、もうすぐ夕方になるのか。ベットが無いとはいえ家は安心できたのか、かなりの時間寝てしまったみたいだ。


「ねぇ栞華しおり。」

「ん?」

「どうしてベットのない此処で寝てたの?」


どうしてって、そもそも私のベットがここに無いとは思わなかったからだよ。


「私の部屋だし、ベットgーー。」

「私達と一緒に寝るって伝えた、よね?

これからは皆んなの部屋、1人きりには絶対にさせないよ?私も畔華ほとりも同じ部屋。

わかった?」


考えてたように話そうとしたら食い気味に遮られた。

手を握る力が強くなって、引き込まれそうな瞳で見つめられて怖い。


「…わかった。」

「良かったぁ、仲直りね。」チュ


「ヒッ…!」


首元にキスされた…

ビックリして呼吸が少し荒くなる。


「あ、姉さんずるい!」

「これからはキスする機会増えるよ。」

「むー!」


2人が何か話してるけど頭に入ってこない。


病院での様子と全然違う、私の事を考えてるのか、考えていないのか、わからない。

心配させてしまって申し訳なく思ってた私の気持ちを返して欲しい。


家に帰ってからの行動で見せるって言ってたし、変わったのはその影響?

わからないけど、私がこの行動から感じたのは家族としての愛じゃないって気がした。


「そうだ、栞華しおりは今日の夜ご飯何が食べたい?」

「なんでもいい…」


平然としている2人、えっともしかして私の方がおかしい?考えすぎ的な?


「だって、姉さんはチューしたし私がお姉ちゃんといるから作ってきて。」

「…ま、仕方ないか。」


私の手を名残惜しそうに離し、部屋を出る。


「夜ご飯、頑張ってつくるから楽しみにしててね。栞華しおり。」

「あ、うん。」


さて、右腕にくっ付いてる畔華ほとりをどうするべきか。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん…」


2人いっぺんに相手するのは厳しいから、どうして様子が変わったのか畔華ほとりしか居ない今が聞くチャンス。


やるか!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次回、畔華との会話


甘さを、そろそろ上げていきたい

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