第9話 能力「真実の・・。」可哀相な奴らだ。だがしかし、罪は罪。
びっくりしたな。最初に使った(というか、勝手に発動した)のが、あれ・・・。エドガー、黙ってたら罪人になるところだったじゃないか・・・。それでもいいと思っていたのだろうか。
能力名とかあるのかな?流れ込んでくる感じだったからね。「真実の風」とか「真実の波」とか?にしておこうかな・・・。冤罪防止にはなるから、使っていこう!!発動条件とかあるのかな?
なんて考えている間に、イアンとウィルが拘束され、拘置所に連行されて来た。速いな!!
まずは、イアンと対面して座った。金色の髪、青い瞳。エドガーと面持ちが少し似ている。気位が高そうだ・・・。時系列で質問していくが、こやつもだんまりを決め込んでいる。
このへんで頭の中に流れ込んでくるはずだが・・・?まだ来ない。深呼吸して、イアンを見つめ直す。青い瞳・・・。少し気が遠くなってきた・・・。
・・・・・イアンの少年時代?面影がある。天使のようだ。可愛らしい。「母上、どうしたのですか?」心配そうに母の顔を覗き込んでいる。
金色の髪、青い瞳。美しい貴婦人。しかし、物憂げな表情。今にも泣きだしそうだ。
「イアン、ウィル。私の可愛い天使たち。今日エドガーという子が屋敷にやってきます。一緒に暮らすことになりました。仲良くしてあげてね。」そう言った先に見つめていたのは、黒髪の少年と黒髪の美しい女性。
自分たちの父上と共に屋敷に入ってきた。父上が二人に優しく微笑む。あんな優しい顔もあるんだ・・・。
その日から、母上は笑わなくなった。優しく笑い上戸だった母上。あいつらが母上の笑顔を奪った。仲良くなんて出来る筈がない。絶対許さない。
エドガー、お前から全てを奪う。お前を弟などと認めはしない。
まずは、お前の母親から始末する。少しずつこの毒で弱らせて・・・。
誰もこんな子どもがやったなんて気が付きやしない。病気として逝った。
悲しむがいい、エドガー。これからもお前の悲劇は続くぞ。
努力家だな、エドガー。毎日の精進。報われる事は無いがな。勇者の称号を得たのか。お前ごときが・・・。我々も勇者の称号を得ようではないか。なあ、ウィル。
エドガー。大分活躍しているそうじゃないか。恋仲の娘は、随分と美しいな。お前にはもったいない。分不相応だ。私が代わってやるぞ。お前には不名誉が似合っている。お前がやりそうな罪を、代わりに行ってやるぞ。お前の名のもとでな。・・・・
イアン。なんて歪んでしまったんだ。あんなに、天使のようだったのに・・・。
「イアン。エドガーの母親まで手にかけていたとは・・・。エドガーに全ての罪を着せて、満足したのか?」
「・・・・。」
「そんなことを繰り返して、お母様は笑顔を取り戻せたの?」
「・・・・。」
イアンは、最後まで口を開かなかった。
可哀相なやつだ。だが、罪は罪。
次はウィルか・・・。なんだか気が重いな。
ウィルと対面して座る。一通り質問していく。深呼吸して、気が遠くなりかけた時、ウィルは自分から話し始めた。
「兄上は、とても優しく、聡明な方でした。エドガー達が屋敷に来たあの日から、変わってしまったのです。母上も変わってしまった・・・。あの日から・・・。二人が笑わなくなって、兄上の憎悪が大きくなっていく。私にはどうすることもできませんでした。私は悪い事だと分かっていても、止める事は出来なかったのです。すべては、兄上と私がやってしまった事です。」
「自分から話してくれて、ありがとう。」
イアンとウィルは、妖精女王の館で、正式に裁かれ、在籍国に送られる。
勇者の称号も、返上する事となる。エドガーがまた、第三の勇者となるわけだ。
この二人は、獣人の売買には関与していないようだ。その件は、またじっくり調べよう。
母親の笑顔って大事だな。それを失って起こしてしまった犯罪の数々。切ないな・・・。
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