第11話酔っ払い4
今夜も良い酒でした。
体がポカポカして、気持ちがいい。
まだ、21時半。嫁さんも怒らないだろう。
「お兄さん、お兄さん」
「誰だ、呼び止める馬鹿は」
「こっちです。タクシーです」
「何か用か?」
「お兄さん、タクシーに乗ってもらえませんか?」
「何で?」
「個人タクシーなんです。今夜、お兄さんに乗って頂けたら、お腹を空かせた子供達に飯を食わる事が出来るんで。お願い致します」
「オレの急所を知ってるな。ええい、人助けだ。乗ろう」
「ありがとうございます」
「どちらに向かいましょうか?」
「どちらにって、行くとこないよ。あんたが乗れば子供が助かるって言ったから、乗ったの」
「ご自宅はどこですか?」
「ご自宅って、ここ」
「こ、このマンションがご自宅ですか?」
「35年ローンよ」
「でしたか〜。……。」
「運転手、これは前払いだ!取っとけ!」
「それは悪いです」
「良いから、持って早く子供にご飯を食べさせなさい」
「お客様、ありがとうございます。これで、助かります。寺前タクシーなので、こちらの名刺の番号にお電話頂いたら、直ぐに飛んできます」
「おぅ、分かった」
「ありがとうございましたぁ〜」
「千円で喜ぶとは……。千円、せんえ……ん?しまった!一万円札だった!」
こんな、体験ありませんか?
ちょっとした面白い出来事 羽弦トリス @September-0919
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