第6話 寄り道
魔装車に揺られること数時間、一行は途中にあった小さな街へと寄っていた。
出発後に不足した物資などの補充や、情報の収集である。
魔装車で待つと言った魔槍を置いて、雪、疾風、王狼は情報収集がてら散歩をしていた。
「久しぶりの遠出任務だとやっぱり緊張しますね。」
話し始めたのは雪だった。
「ほう、雪は遠出の任務は久しぶりなんですね。」
王狼が意外といった顔をする。
「そうなんですよ、秩序から遠出はしばらく無しと言われていて・・・まぁ自分が色々とやらかしちゃったらしいですから。」
あはは、と苦笑いをしながら雪が答える。
それに対して、王狼は引っかかることがあった。
「らしいとは、ずいぶん他人行儀なんですな」
まるで覚えていないみたいだ、と王狼は思っていた。
「いやぁ、そのあんまり覚えていないんですよ、その時の事。ただ、自分が何をやってしまったかは秩序達から聞いているから、知ってはいます。」
だから何というか、実感があまりなくて他人事なのかも、そう思っていた。
ただ、やってしまった以上、責任も申し訳なさも感じてはいるのだけど。
「王狼、貴方まで雪を責め立てる気ですか?」
疾風の棘のある言い方に王狼は苦笑いをした。
「いえいえ、少し気になってしまって。気を悪くしたなら申し訳ない。」
「いいえ!気にしないでください。」
あまり争いごとを好まない王狼は素直に謝った。
それに任務のチームメンバーとの雰囲気を悪くはしたくなかった。
それは雪だって同じだ。
「ふふ、ありがとう、君は優しいんだね。」
そうして、宿屋に冒険者ギルド、組合等に顔を出して異変はないか、遺跡の情報はないか等色々な事を聞いた。
一通り聞いた後、魔装車まで戻ることにした。
「特に収穫はありませんでしたね。」
「そうだね、最近見つかった遺跡だからね、まだほとんどの人が知らないのだろう。」
実際聞いたときも、ほとんどの人が知ってもいなかった。
「もしかしたら向かった人が誰一人として戻ってきてないだけかもしれないわ。」
疾風がさらっと怖い事を言っていたが、聞かなかったことにしよう。
―――
魔装車に戻った三人は軽い点呼を取り、再度出発の準備をする。
魔槍は魔装車の中で寝ていた。
戻ったことに気づいた彼は「収穫は?」と短く聞いた。
「特に何も。」と疾風が答えるとまた眠ってしまった。
「さて、このままいけば夜明けには着くでしょう。」
王狼の計画では夜明けらしい。
意外と時間かかるんだなと思いながら、雪と疾風は魔装車に乗り込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます