第7話 到着
夜が明けかけた頃、魔装車が不意に止まった。
王狼の「着いたぞ。」との声を聞き、降りる準備をする。
準備が終わって降りる際にふと「なぁ、雪。」と魔槍に呼び止められる。
振り返る雪に「あの時の約束覚えているか。」とトーンを落とした声で聞かれる。
「覚えているけど、どうしたの?」
そう返した雪に、一瞬考える素振りをした後、「やっぱなんでもねぇわ。はよ降りろ、のんびりさん。」といつもの調子に戻り言う。
(理不尽な・・・)
なんて思い、降りる雪は初めて前方を確認して、思わず感嘆の声を漏らした。
そこにはギルドの街程の広い遺跡が眼前に広がっていた。
「こんな広い遺跡、今までよく見つからなかったわね。」
同じく感嘆の声と一緒に疾風がぼやく。
「特殊な結界で付近の森と同化するように細工されていたそうだ。」
王狼が答える。
確かにこんな大きさの遺跡を隠すほどだ、何かしらの情報は残っているかもしれない。
「まっ、だからこそ、災渦の獣に繋がる手掛かりがあるかもしれないと思ったのだろう。」
「見つけたやつで調べりゃいいのに、怖がりなこった。」
「そんな事を言うものではありませんよ、魔槍。早速探索にとりかかりましょう。」
そう言って、魔槍、王狼が遺跡へと足を踏み入れる。
続いて、疾風、雪、調査団員が踏み入れた。
空には白い雲がうっすらとかかっている、そんな天気の中、探索は始まった。
とはいえ、基本疾風と魔槍が単独で進んでいき、残るメンバーは端からじっくり調べ上げていくだけだった。
「皆、今日はここまでにしよう。時期に疾風と魔槍も戻ってくるだろうしな。」
王狼の一言で今日の探索はここまでとなった。
この日は何事もなく終わった。
夜になり、戻ってきた疾風、魔槍達とご飯を食べる。
話を切り出したのは、疾風だった。
「ここ、魔物とか全然いないわね。今日見た限りだと一匹も見なかったわ。」
「あぁ、ほとんど散歩みたいなものだったぜ。未知の遺跡だって聞いたから、つえーやつの一匹や二匹いるもんだと思ったんだけどよぉ。」
愚痴る魔槍とは裏腹に、雪は危ない魔物が居ないことに少し安心する。
「まぁ、多分あの塔のせいでしょうけど。」
「塔?」
確かに、遺跡の奥に塔のようなものが建っている。
けど特に魔法の気配はないような気もするが。
「明日以降調査するけど、多分堕獣クラスが一匹いるわね。」
堕獣。
元々崇められていたり、特殊な個体が堕ちた姿。
強さによってランク付けされている。
人々に被害を出すもの(村を滅ぼす程度)を堕獣。
人々に多大な被害を出すもの(街を滅ぼす程度)を堕天。
人々に甚大な被害、または国を滅ぼす恐れ、様々な事情により、討伐が困難な個体を堕神とそれぞれ呼んでいる。
魔物と呼ばれるものと間違えられることもあるが、一応区別される理由があるらしい。
理由は忘れてしまったけど・・・。
「ではその堕獣がこの遺跡を滅ぼしたのでしょうか?」
雪の問いに疾風が答えてくれる。
「うーん、多分違うような気も・・・どうだろ、それも明日以降調べてみないとわからないかな。」
するとさっきまで黙っていた魔槍がニヤリと笑った。
嫌な予感がした。
「その堕獣、雪に討伐してもらうってのはどうだ?」
「え゛っ!?」
とんだ飛び火である。
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