第4話 任務

 目の前で言い合いが始まった。


「危険性が少ない任務とはいえ、雪を連れていくのはどーかと思いますけど。あの時みたいなのはゴメンだぜ。」


「はぁ?あんたこそ、足手まといになるんだから居なくなりなさいよ、大体その言い方、雪が不快になるから止めて。」


 そういって、魔槍と疾風の言い合いがエスカレートしていく。


「大体疾風てめえ|も弱えのについてくんなよ。」


「あんた如き全然よゆーで勝てますけどぉー??」


「あ゛?」


「は??」


 言い合いの発端になった人としては苦笑いだ。

 それでも、これだけ魔槍に色々と言われていても自分自身、魔槍の事は嫌いではない。

 色々あった仲という事もあるし。

 それに今はきつい言い方をするけど彼は・・


「そこまでにしてくれ。」


 奥にいた秩序の声で思考が打ち切られる。


「雪は私が呼んだんだ、助けになるかもしれないし、本人にとっていい修行にもなる。それとも・・・」


 じっと魔槍を見つめる。


「私の采配では不満かな、槍。」


 少しの間が空いて魔槍が答える。


「いえ、そんなことはありません。ただ少し、思うところがあっただけです。」


 そういって魔槍は言い合いすることをやめた。


「やーい。」


「疾風。」


「すみません・・・。」


 煽った疾風は秩序に咎められていた。


「すまないね王狼、時間がかかって。」


「いえ、大丈夫ですよ」


 王狼はにこやかに答える。


「さて、本題に入ろう。実は先日、聖王国の辺境でとある遺跡が見つかった。♡3《王狼おうろう|》、♦3《疾風しっぷう|》、♦9《魔槍まそう|》、君達にはそこの調査を頼みたい。」


「なぜ私達が?」


 王狼が尋ねる。


「災渦の獣が関係しているかもしれないからだ。」


 災渦の獣。

 遥か昔に天使と悪魔が放ったとされる十二の獣。

 現在も生存しているのは5体ほどと言われているらしいが。


 キミナリ国はこれの討伐に力を入れている。

 小さく建国して日が浅いこの国だが、どうして他国に表立って攻められていないか、その理由が災渦の獣の討伐実績とその理念である。

 九大王国(現在はキミナリ国が入っているため、元々は八大王国)において甚大な被害を出し続けている災渦の獣の討伐を優先し、かつ領土の拡大をしないと宣誓しているこの国を攻める事は、他国に攻める理由をわざわざ渡す事になる。

 そんな愚かな事はどの国もしない。

 また、自ら兵を動かして災渦の獣を倒すのはリスクとリターンが見合っていない。

 ゆえに欲を出さない事を宣誓しており、好き勝手依頼できるこの国は、第三者として有難くも思われているのだ。

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