第50話 純愛に狂った毒親

 俺はあれだけ俺たちを毛嫌いしていたワルドが賞賛してきた行動に解せないことがあり、【邪気眼スパイアイ】を潜伏させてワルドの動向を探っていた。


 俺とマリィが部屋を去るとワルドの妻であり、俺たちの母親であるダリアの肖像画をじっと無言で眺めていた。それにしてもダリアの容姿は大人に変身したマリィとそっくりだ。


 俺のただの杞憂かと思ったときだった。


「おまえたち、少し席を外してくれ」

「かしこまりました」


 執事やメイドたちをを部屋から下がらせると怪しげな動きを見せ始めた。ワルドは立ち上がり、本で詰まった書棚を押し始める。



 テレレレレテレン♪



 俺の脳裏に響いたゼルダの謎解き音。


 書棚が移動した場所にあった壁には隠し扉のようなものが見えたのだ。


 こんな場所があったなんて、『成勇』をプレイしていたときはまったく気づいていない。


 ワルドは胸ポケットから鍵のホルダーを取り出すと何重にもかかった鍵をひとつひとつ解錠してゆく。


「ダリア、待っててくれ。いますぐ行くから」


 なっ!?


 扉が開くと入り口が暗く恐らく地下へ通じているであろう階段が見えた。ワルドが指をパチンと弾くと火の玉が灯り、階段とその先を照らす。


 邪気眼よ、ワルドを追え!


 邪気眼には【気配遮断LV10】のバフをかけておいて正解だった。


 邪気眼は俺の目となりワルドの跡をつけて、階段の奥深くへと降りてゆく。ワルドが百段ほど下ったところでまた扉が出現する。



 ワルドが耐火金庫を思わせる重厚な扉を開けるとなにやら空間の奥からか微かな声がしてきていた。



 ……して……して。


 ……して……して。



 感度上昇!


 邪気眼で拾える音と視野を高めると俺は絶句した。



 ……して……こ、ろ、して……。



 胴体が千切れ、脊髄が露出し上半身だけとなった姿のダリアと思しき身体が緑色の保存液なような液体が入った円筒形のガラスの容器に収められていた。


 そんな状態にもかかわらず、ダリアは生きているようでワルドに懇願するかのように手を伸ばしてガラスの容器の中から手を伸ばす。ワルドもそれに呼応してガラス越しに手を重ねていた。


 話が違うじゃねえかえかよ!!!


 俺とマリィはワルドからダリアが辺境のサナトリウムで療養していると聞いていた。


「ダリア……聞いてくれ……やっとノルドが勇者学院に入学して、皆から勇者と呼ばれるようにまでなってくれたみたいだ。マリアンヌまでもノルドに倣い努力している。なんて親孝行な子どもたちなんだろうな」


 なんだ、毒親かと思ったら、本当に俺たちの成長を喜んでくれていたんだ。


 ダリアの痛々しい姿に驚きを覚えたが、悪役領主の典型だと思われたワルドが俺の想像よりも人の子らしいことにほっこりしそうになっていたら、


 うっ!?


「もうすぐだよ。マリィもキミを受け止められる身体に成長してくれている。私は必ずキミを復活させてみせるから。ノルドによって魔族どもを根絶やしにして聖地アクロエロスを奪回し、かの地にてノルドの膨大な魔力を触媒に儀式を行えばキミの魂が確実に器であるマリアンヌに定着するだろう」


「……して、殺して……」

「心配ないよ。あの子たちも親孝行ができて、さぞよろこばしいことだろう」


 ワルドはガラス容器に額をつけてダリアを愛おしそうに見つめ、優しげな笑顔を浮かべていたが、ダリアは震える声で死を望んでいた。


「私はキミさえいれば、地位も富もなにもいらない。マグダリア家が没落した今、アッカーセン王国は私の手中に落ちる。国のすべてを犠牲にしてでも、キミを復活させるから待っていてほしい」

「お……ね……が……い……ころ……して……」


 ダリアに想いを告げると固く拳を握り、決意に揺るぎないことを示したワルド。


 ワルドの奴……ここまで狂った奴だったのか!?


 子ども二人と王国民を犠牲にたったひとりの妻を復活させようなんて……。俺はワルドに悟られないように地下室から邪気眼を引き上げた。


 正直ワルドとダリアを地下室ごと埋めたい気持ちでいっぱいだった。



 ふう……。



 邪気眼が手中に戻ってくるとため息をついてしまう。やはり修正力って奴で魔王を倒しても、死亡フラグはついて回るらしい。


 ワルドは差し詰め、セカイ系ヤンデレ公爵さまってとこか。


 確かに狂ってはいるが……、


「純愛ですよねっ!」

「うわっ!?」


 俺のデスクの下にいつの間にか潜り込んでいたエリーゼが股間の間から笑顔で出てくる。


「なんで俺の思っていることが分かったんだ!?」


 邪気眼から流れてくる映像は俺の脳に直接入ってくる。だからエリーゼには分からないはずなんだが……。


「それは長年ノルドさまをお慕い申しておりますのですぐに分かっちゃいます」


 監視カメラでワルドをスパイしていた俺の情報がエリーゼに筒抜けだったなんて、笑うに笑えない。


「ノルドさまぁ、さぞかしご心労だったでしょう。私がご奉仕で癒やしてさしあげますね」


 令嬢だけあって以前は辿々しい服の脱ぎ方をしていたが、今は手慣れた手つきでメイド服のブラウスのボタンを外し、ブラジャーを取るとエリーゼは俺にけしからんたわわを披露してしまう。


 なっ!?


 それに止まらず、目にも止まらぬ速さで抜刀させて挟んでしまう。


 上目遣いで俺を見てきて、あまりのエロかわいさに抵抗する気力が萎えるのとは裏腹に息子は元気になりすぎてしまっていた。


 これじゃエロいオフィスラブ物でそれこそ筒抜けならぬ、筒抜きじゃねえか!


 エリーゼに心の中で突っ込んでいるとベッドの下に隠れていたマオが姿を表す。

 

 いやそんな狭いところに潜んでたのかよ!


「ちょっと待って! エリーゼの変わり映えのしないぱいずりなんて飽きただろ。あたしがしっぽで抜いてあ・げ・る♡」


 しっぽ扱きとかハイレベルすぎね?


 マオは人差し指と親指で輪っかを作るべきところをしっぽで輪っかを作って舌をいやらしく動かしている。


 いやなんてプレイをしようとしてるんだよ!


「「ご奉仕いたしますね♡♡♡」」

「あっ、あっあああああぁぁぁぁぁぁぁーーー!」


 二人に搾り取られたあと、賢者となった俺にアイデアが浮かんだ。


 仕方ねえ、毒親もまとめて教育してやるしかねえよなっ!


―――――――――あとがき――――――――――

ここまでお読みいただいたことに大感謝です!

たくさんのフォロー、ご評価、ご感想にレビュー、誠にありがとうございました。作者的に過去最高に読まれて、終わることができ……まだだ、まだ終わらんよ!


 ということで、今後の展開をちょっとだけよ、しちゃいます。


●とある人物がノルドに復讐を誓い、外国の勇者学院みたいなところと対決する


●聖女エリーゼ、魔に魅入られ闇落ちする

(サキュバス化)

でも結局ノルド好きはなのは相変わらずでエロさに天元突破がかかるw


●ケインの闇落ち

むしろノルドにいいようにやられっぱなしなので、魔王に魅入られ暴走する


 まだ2章のプロットを考えていないので上記をすべて採用するわけではありませんが、なんとなくそんな感じで書いていこうかと思います。早く再開しろ~、楽しみ~という読者さまがいらっしゃいましたら、フォロー、ご評価で早くなるかもです。それではまた読みに来ていただけるとうれしいです。

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勇者学院の没落令嬢を性欲処理メイドとして飼い、最期にざまぁされる悪役御曹司に俺は転生した。普通に接したら、彼女が毎日逆夜這いに来て困る……。 東夷 @touikai

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