第47話 魔王城急襲

 俺はエロゲ内イベントを思い出していた。


 『成勇』だとマオから魔王軍がアッカーセンに攻め込む準備をしているとの情報を掴んだケインは魔王を倒すため、先手を打ちトヴィトゥンにある魔王の居城へ討って出た。


 実は魔王はすでに勇者学院へ進軍してきていたんだな。ケインは魔王の影武者を倒したものの、ノルドは魔王に魅入られ、ラスボス化って流れだ。


 裏をかかれたケインは生き残ったアッカーセン王国民から酷い罵倒を浴びせられ、評判を著しく落としてしまうが、ノルドを倒したことが認められ、魔王を倒した勇者として末永く顕彰けんしょうされる。



 じゃあ、『成勇』とは逆に俺が魔王城パレスへ攻め込めばいい!



 何も告げずに勇者学院を出て、魔王が攻め込んできているのに逃げ出したというチキン野郎のそしりといままで有能ムーブのあった俺が無能の烙印をみんなから押されれば、いくらエリーゼでも耐えかねて俺の下を離れ、ケインに鞍替えしてもらえるはずだ!


 教授室でクラスメートたちから出された課題の採点をしながら、俺の完璧な没落計画を練っているとハリーが駆け込んできた。


「ノルド先生っ! たいへんです、魔王が名指しで勇者学院とケインを潰すと王都に魔物の大軍を引き連れ迫ってきてます!」


「攻性科の生徒全員を叩き起こせ! 3分で用意を済ませ、校庭にて待機。俺はリリアン及び他の教授たちと協議に行く」

「はい!」


 さて……行くとするか。


 ハリーが部屋を去ったあと、バルコニーに出て【服従の檻サモンスレイブ】を使う。すると銀の鱗に被われた飛竜ワイバーンが現れ、欄干を爪で掴んで止まっていた。


 キュルルルルン♪


 俺に鼻先を擦り付けて、甘える飛竜のククル。


 マオが率いていたモンスターで半死のところを助けてやったら、やたら懐いたので飼うことにした。


「ククル! 俺を魔王城の近くまで運べ」


 キュルルルルーーーーーーーーッ!


 俺に翼のある背を見せて、ぱたぱたと羽ばたきを見せてたので飛び乗る。



 はっきり言って、これはまさに俺にとって逃避行と言えた。


 俺が功を焦り偽物の魔王を狩ってドヤ顔で戻れば、みんなから向けれられる残念な顔が思い浮かぶ。俺は逆夜這いまでし始めたドスケベ聖女のエリーゼをケインに返し、静かにのんびりスローライフを送れるんだ。


 ルンルン気分イイ気分で上空を舞っていると、行き先の空が曇って……違う!



 モンスターどもが空を覆ってやがるんだ。



 飛行系モンスターだけで300万ぐらい軽くいそうな雰囲気だ。ノルド語で煽ったせいか、陸上系モンスターと合わせて、マジで1000万くらい動員してきいるのかもしれない。


「ノルドさま! ここは私にお任せください!」

「えっ!?」


 どこかで聞いたことのある声が後ろから響いてきて……、


「神に背き、悪しき者どもに愛の女神エロリスの聖なる裁きをお与えくださいっ!」



神罰ゴッデェェェェス・パニシュメントォォォォ!!!



 振り返るとククルの背で立ち上がり、眩いばかりのエロン教の紋章のついた錫杖ビショップスタッフをかざして、シン・聖女級の者しか扱えないはずの攻性聖魔導【神罰】を放つエリーゼがいた。



 たまや~! かぎや~!



 なんて不謹慎な言葉が出てきそうになった。【神罰】がモンスターどもに迫ると光の束は目の前で拡散し、奴らを包み込んだあと、シュっという音とともに蒸気が上がり、漆黒だった空に青さが戻る。


 立ち上る蒸気に【神罰】の光が反射して、天使の輪ヘイローのように見えてモンスターどもが天に召されるようだった……。


「なぜエリーゼがここにいるっ!? 俺は誰にも知られないうちに逃亡してやろうと思っていたのに……」


「ノルドさまがあの程度のモンスターで逃げ出すとは到底思えません。むしろ嬉々として魔王軍を迎え討つはずです」

「あ、いやしかし、いまのは……」


「はい! ノルドさまのお側にいられるようにお稽古したんです。これでもダメでしょうか?」

「攻性魔導を母体とする者なら上の下といったところだが、回復魔導を扱う者としては最上級と言わざるを得ない……」


 まさか俺の言った言葉を忠実に守り、修行に勤しんでいたなんて……。いつも人のマウントを取りたがるノルド語でも賞賛してしまうくらいだ。


「だがそれとこれとは別! いますぐ降りて、勇者学院へ戻れ」

「まだまだ余力が有り余っていますので、もう一撃放とうかと思います」


 えっ!?


 いやいや、ある程度残しておかないと俺というか、エリーゼが魔王軍どころか魔王までを狩ってしまいそうな勢いだって!


「エリーゼ! 雑魚に構っている暇はない。いま魔王城ではアッカーセンを一撃の下に滅ぼそうする策謀がなされている。俺は急いでそれを止めにいかねばならない。つまり魔王が親征してきたというのは陽動のための嘘だ」


「さすがノルドさまです。勇者学院、いいえアッカーセン王国の誰もが気づいていないことを予想し、先手を打たれようするなんて! ますます私はノルドさまに溺れてしまいそうです」


 エリーゼがぜんぶ倒してからとか言いそうだったので、適当な嘘をでっち上げた。『成勇』でもそんな描写なかったし。


 俺の嘘を信じたエリーゼはぴたりと身体を寄せてくるが上空でこんないちゃいちゃしてるシーンをクラスメート、特にケインなんかに見られたらヤバいだろ。


「クルル、翼の回転数をレッドゾーンまで上げてやれ!」


 キュルルルルーーーーーーーーッ♪


「レッドゾーン? 回転数?」

「な、なんでもない……ただの言い間違いだ」


 飼い慣らしたクルルにはニュアンスが通じたが、エリーゼはキョトンと首を傾げていた。



「疲れたでしょう? 回復してさしあけますね」


 俺が加速ブーストのバフ、エリーゼがクルルへ回復魔導をかけつつ、ぶっ通しで飛び続けたことで、ものの数時間で魔王へと着いてしまった……。



  お邪魔しまーす。



 置いておくとエリーゼがまたバーサクヒーラーアスナ化しかねないので、二人で魔王城に侵入した。


「~~~ッ!? ――――……」


 魔王城はモンスターを総動員させたせいか、もぬけからとなっており、数少ないオークの衛兵の口を塞ぎ、仕留めると糸の切れた操り人形のようにガクリと倒れた。



 薄暗い魔王城を奥へ奥へと進んでゆくと、髑髏の装飾が施されたベタな大きな扉が僅かに開いて、光が漏れていた。


 なかを覗くと、


 なんだと!? なぜ魔王アズライールがパレスにいる!? 親征していたはずじゃ……。


 それにあの魔導陣はバルバルス!!!


 あれが発動したら、大陸ごと大地を割ってしまう。


 俺は描かれることを防ぐためにアズライールのまえに姿を晒した。


「魔王と担がれている割にしこしこ魔導陣づくりか、やることが小さいな。どうせおまえの股間のモノも大したことないんだろうな」


「平静を装っているようだが、読みが甘かったな、黒の勇者ノルド。力に目覚めていない勇者ケインなど影武者で十分。我の裏をかこうとしたらしいが見事に我の陽動に引っかかってくれた」


「はあ……本当にだ、逆だったら良かったのにな」

「ふはははははっ! 己の運のなさを悔やむがいい! えっ?」


 そう魔王のほうがな……。


 さっさと戻り、影からケインの尻拭いでもしてやるために俺が完全なる闇の覚醒フルバーストモードへと移行するとアズライールは素で青ざめた。


「すまんな、控え目に言って俺はおまえを遥かに彼方に置き去りにするくらい強くなってしまったらしい……」

「に、人間ごときがぁぁーーーーーーーー!!!」


―――――――――あとがき――――――――――

ごめんね~、強くなりすぎちゃったノルドに魔王ちゃんたじたじw

正妻感マシマシのエリーゼと魔王討伐後、このあといっぱいおっぱいシた展開をご期待の読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

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