第46話 死にたくないので魔王を狩る

 なんてことだ……。


「エリーゼっ! なんであたしの邪魔をする!」

「ノルドさまは私のほうが先に好きになったんです。まったくマオさんは泥棒ネコさんですね!!」


 両親を助けたいマオと俺に好意を寄せるエリーゼの想いがぶつかり、完全に修羅場ってる。


「ああ!? エリーゼ、あんたはいちばんあたしが気にしてること、サラッと言いやがって! あたしは虎の獣人だ! しかも白虎の。猫じゃねえ!」


 突っ込むとこ、そこ? 泥棒はいいのか?


 俺とマオのベッドでいちゃつくシーンさえ見せれば、エリーゼはすぐにでもケインに慰めてもらおうと走ると踏んでいたのに、俺の作戦はエリーゼのまえに完膚なきまでに敗れ去った。


 まさかエリーゼが俺の射○回数まで把握する魔導を開発していたとか誰が想像できるんだよ!


「二人とも止めろ。悔しいがエリーゼの言う通り、俺とマオはそんな関係じゃない。俺がマオに演技してもらっただけだ」

「ノルド! あたしは……」

「ああっ、やっぱりノルドさまは私のことを……」


 エリーゼは祈りを捧げるポーズをしながら俺を見ていたが、


「エリーゼ、俺はおまえには感謝している。だが俺たちは付き合っているわけじゃない。そこは履き違えるな」

「はい! 身体だけの関係ですね♡」


 ……もっと履き違えちゃった。


 それこそエリーゼをセフレや性欲処理メイドになんてしようものなら、ケインが黙っちゃいない。


「もういい……今日はゆっくり休みたい。おまえら、帰れ」

「お疲れになってるなら、私が添い寝しながら治癒を……」


「ま、負けてたまるか! あたしもノルドに添い寝するぞ」

「ということで二人で添い寝することになりました!」


 なにが「ということで」なんだろうか?


 美少女二人を両脇にベッドに入ってしまった。エリーゼは俺の身体にたわわを押しつけてくる。それを見たマオもつんつんと指で俺の身体をつついて、安全確認したあと、猫のようにすり寄った。


 このおかしな状況を打開するには、もう最終手段に出るしかないだろう。



 魔王を狩る!



 と言っても実際に討伐するのはケインだけど。


 俺は妄想に浸る。


『きゃーっ! ケインさまっ! あの世界を恐怖のどん底に陥れた魔王を倒してしまうなんて、素敵♡ なのにノルドとか、ゴミですね。あれだけ豪語しておいて魔王が襲来してきたのに逃げ出してしまうとか最低です』


『エリー、やっとボクの魅力に気づいたんだね』


 俺はケインが魔王を倒したあとの二人が抱き合い、キスしようとするシーンをひとり芝居で演じていたときだった。


「ノルドさま? なにを……」

「なんでもない……これからの未来を考えいただけだ」

「まあ! ノルドさまにいっぱい孕まされて、赤ちゃんがたくさんできちゃうんですね♡」


 エリーゼがどんどんえっちになっているような気がするんだが、俺のせいじゃないよな?



 チュン♪ チュチュチュン♪



 年齢は同じとはいえ女子生徒二人と添い寝して朝チュンしてしまう先生とか前世なら絶対大大大炎上して、懲戒解雇不可避なのにエロゲ世界じゃ学院長公認とかおかしい……。


 今朝方少しだけ目を閉じた程度なはずなのに俺は全裸にされて、右隣に寝ている女も全裸になっていた……。


「あっあっ、あううん……ノルドさまぁぁ、らめれすっ! そんな奥まで突いちゃすぐに赤ちゃんできてしまいますぅぅぅ……おほっ、おほっ! おほーーーッ! むにゃ……むにゃ……」


 俺を脱がしたであろうエリーゼは俺の胸板に幸せそうな顔でよだれを垂らして、卑猥な寝言を宣っていた。


 まだ処女だよな、この娘……。


 もはや【魔闘外皮アームスーツ】すら、エリーゼの「私とノルドさまの愛のまえに隔てる障壁などございません♡」という言葉通り、無力化されて無駄だと観念したら、これだ。



 パーーーーーン!



 左隣で寝ていたはずのマオの姿はベッドにはなかったが、エクスカリバーのまえにおり、どうやら柄に触れて持つことを拒絶されているようだった。


 あえてそこに触れずに世間話をするようにマオへ訊ねた。やはり彼女は俺が魔王の新たな器に相応しいか値踏みしているらしい。


「マオの国にはレガリアなどはないのか?」


 適当なガウンを羽織り、彼女の後ろから声をかけると猫のようにビクッ! と毛を逆立たせている。


「えっ、と……あるにはあるけど、それがどうしたの?」

「いやな……どうもケインの奴が我がアッカーセンのレガリアたるエクスカリバーを獲得したらしい……」


「えっ!?」


 マオは大きな目を見開いて、口をぱくぱくさせて驚いている。そりゃ、俺を勇者だと思っていたのにケインがそうだったら、驚くだろう。


「そ、それでケインは強くなってるの?」

「ああ、かなり強くなってるらしいな。さすが聖剣さまさまだ」


 あいつに握らせているのは俺の作らせた偽物レプリカだがな。


 ホンモノエックスが特注で仕立てた鞘の鯉口をがたがた揺らしていたが、押さえこんで黙らせた。


「そっか、ありがと」


 お礼を告げるとマオはツェン国のレガリアを俺に語ることなく、立ち去ってしまった。


 くっくっくっ、やはりアッカーセンの動向には目がないらしい。これでケインは……いや勇者学院は魔王から狙われるだろう。


 目を覚ましたエリーゼはベッドから目をこすりながら、去ってゆくマオを見ながら訊ねた。


「マオさん、どうしちゃったんですか?」

「ククク……もうすぐ嵐が来る。それに備えないとな……」

「……ノルドさま?」


 これでケインが魔王を倒せば万事上手くいく。俺はそのサポートに徹すればいい。


―――――――――あとがき――――――――――

ケインは魔王を倒して、勇者として称えられることになるのか!? 読者の皆さまならお気づきだと思うのですが、いつも通りの展開にしかなりませんw

ケインよりもマオとえちえちして欲しいという読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

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