第45話 聖女の性欲管理
――――【マオ目線】
ノルドはあたしの嘘を信じたようだ。あいつの強さは馬鹿げているけど、意外と抜けてるらしい。
お父さま、お母さま……あたしはノルドを落として必ず国を再興するから!
幽閉されている両親たちに向かって、誓いを立てていると、ドアの縦枠にもたれ腕組みする者があたしを見ていた。
「ようやくノルドに取り入ったようだな」
「ロン!?」
ロンはリザードマンの獣人でツェン国で最も信頼のおける将軍として、あたしの両親を支えてきたが、突如としてロンはあたしの両親を裏切り、進攻してきた魔王軍へ寝返ってしまう。
「よくもぬけぬけと、あたしのまえに姿を現せられたものだな!」
「長い物には巻かれろと言うじゃないか。すでにツェンは死に体だった」
「おまえの裏切りで壊されたようなものだ!」
両親はロンたちに幽閉され、あたしはアッカーセンを滅亡させた暁には二人を解放する条件に魔王軍へ加わった。
強大な魔王軍だったが、まだツェンは持ちこたえられたはずだ。だがロンの裏切りですべて台無しにされた。
「笑わせてくれる。バオを慕う10万もの命をごみのように犬死にさせたマオにそんなことは言われたくないな」
国を再興するためとはいえ、ノルドに嘘を信じさせるために多くの臣下が殉死してしまった……。
「あたしはもう覚悟はできている。再興が成ればあたしは命を断つ!」
「しゃしゃしゃっ! 面白い、おまえの覚悟、見せてもらおう。本当に馬鹿な女だ。素直にオレのモノになっていれば楽に生活できたのになぁ! あのノルドとか言う鬼畜に犯され、おまえは泣き叫ぶことになるだろう」
「失った者たちに比べれば、あたしがノルドのおもちゃになることなんて、なんてことないっ!」
「まあせいぜい頑張るんだな。黒の勇者ノルド・ヴィランスを籠絡し、魔王さまの新たな器とするのだ。あの男は牝奴隷を飼うほどの女好き……おまえのような気丈な女でも肌のひとつやふたつ見せてやれば、簡単に落ちる」
「おまえに言われなくても分かっているっ」
いくら武勇を誇り、ツェン国で将軍を務めたロンとはいえ、ノルドとぶつかれば一溜まりもないことは誰から見ても明らか……。
だからあたしに色仕掛けをするように提案してきたのだ。
「おまえの心掛け次第でおまえの家族がいかようにもなることを忘れるなよ」
私に鱗の生えた指先を差し、忠告をするとロンは姿を消した。
両親を救い出すためには、あたしの貞操がなんて言ってる場合じゃない。ノルドの精力がなくなるほど、搾り取ってやるんだから!!!
――――【ノルド目線】
「おまえらに今日からともに学ぶことになった留学生を紹介する……」
「はいは~い! ツェン国皇女付き侍女のマオ・ガオランだよ、よろしくぅ!」
マオがコミュ力高めの陽キャっぽく両手を振って、笑顔で愛想を振りまくと、クラスの男子どもは鼻の下をダラリと情けなく伸ばす。
今朝リリアンから改めて紹介され、俺は戸惑うしかなかった。
「……おまえ、なに考えてんだよ。魔王軍の幹部がしれっと勇者学院に入学してくるとか! バレたらそれこそ吊し上げだぞ」
「元魔王軍だも~ん。いまは綺麗さっぱり足を洗って、綺麗な身の上だかんね」
生徒というか、クラスメートたちに聞こえないようにマオの耳元で小声で突っ込んだが、彼女はそんなことどこ吹く風といった感じで、気にも留めていない。
「それよりノルドぉ、授業なんて退屈なこと止めて、あたしと子作りしちゃお!」
「ククク……いや授業はする。いまから性教育の授業だ。俺とおまえのまぐわいをみんなのまえで見せてやろうじゃないか」
「お、おっけー! やろう! やろう!」
さすがエロゲ! と言いたいところだったが、俺はマオが漏らした独り言を聞き逃さなかった。
「これもお父さま、お母さまのため……」
マオはわざとチョロインのように振る舞い、俺を魔王軍へ引き込もうとするんだよな……。
これはちょうどいい。
「ちょっと待ってくださいっ! マオさんはノルドさまのお相手を務めるには荷が重いです」
「エリーゼ!?」
回復科のエリーゼが攻撃科の授業の教室に乱入してきて、マオのたわわを掴み、なにやらチェックのあと言い放つ。
いやおっぱいの荷が重いのはエリーゼではあるんだが……。
結局エリーゼとマオが俺を巡って不毛な言い争いを続け、俺は平常運転で授業を進めた。
過程を終え、部屋に戻るとマオが木箱に入って待っていた。
「おまえは本当に木箱が好きだな」
「こうやって悲壮感を出すとコロッと男は引っかかちゃうからねー」
いつもなら、もうそろそろエリーゼが俺の部屋を訪れる。それを見計らい、マオをベッドに誘いこんだ。
ふーっとケモミミに吐息を吹きかけるとマオは耳をピクピクさせ、ぶるるっと身体を震わす。
「み、耳はダメぇぇぇ……」
猫が互いの親密さを表すために毛繕いするようにマオのケモミミを舐め回す。まえから見ると白い毛でふさふさしているが後ろは虎耳状斑と言って、黒い毛のなかに楕円状の白い斑点がついていた。
マオは口に手を当て、顔は真っ赤になってしまっている。マオの白い髪に褐色の肌……短い制服の上着から常に露わになっているおへそやお腹を撫でながら訊ねた。
「おまえ処女だよな?」
「ち、ちげーし! 男なんて取っ替え引っ替えしてるし!」
マオは必死に経験があることをアピールしたが、どう考えても彼女の初々しい反応から見て、未経験であることはすぐに分かった。
「まあ俺はどっちでもいい。おまえは俺の腰のうえに跨がって、喘ぐ演技をしていろ。それでぜんぶ上手くいく」
シーツで露わになった肌を覆い戸惑いの表情を見せながらも、マオは頷いた。
「ノルド、スゴいよぉ!」
「おら、イけっ! イけっ!」
俺の胸に手を置き、腰に跨がったマオは嬌声を上げながら、えっちの真似事を始めていた。
早く来いエリーゼ! そう思ったときだった。
「おほぉーーーっ!!!」
マオは動物的なおほ声を出して、背を仰け反らせながら、口角の端からよだれを漏らして震えていた。
いや、マオよ。ちょっと艶技、上手すぎじゃね? と思ったがそれはそれで都合がいい。
「ノルドさまっ!? マオさんっ!?」
俺の部屋のドアが開き、エリーゼは俺とマオのえっち(嘘)を目の当たりにする。もちろんおしべとめしべはつながっていないが、寝具によって覆い隠していることにより、完全にヤってるとしか見えないはずだ!
俺が勝利を確信したときだった。
【
「マオさん、嘘はダメですよ。ノルドさまは今日は一度も……出されていません!」
「「なっ!?」」
「私……ノルドさまのことが気になって、えっちなことをされた回数を記録する魔導をかけさせてもらいました」
なんてことだ……。
マオと同衾している場面を見せれば、エリーゼは俺に幻滅して、俺の下を去ってくれる算段が脆くも崩れ落ちてしまった。
「ノルドさま……マオさんではなく、私をお使いください。私はノルドさまが欲情されたというなら24時間いつでも駆けつけます」
それじゃ「セ○ムしてますか?」じゃなくて、「セクスしてますか?」じゃねえか……。
「なぜあたしの邪魔をする! エリーゼ!」
「そんなこと簡単ですよ。マオさんはノルドさまを愛していらっしゃいませんから!」
いやエリーゼ……本気で俺を好きじゃないマオを煽るんじゃない! ぜったいにややこしいことになっちまうじゃねえか!
「ま、まだ……なかで出したかどうかまでは分からないんですけどね……でもいずれ把握できるはずです。ノルドさまが私のなかに出してくれさえすれば……♡」
エリーゼは顔を赤くしながら、ぼそぼそつぶやいていたが、詳しい内容まで聞き取れないでいた。
―――――――――あとがき――――――――――
作者、ケモミミ娘書きたかったんだ~(≧▽≦)
ああもう……これはエリーゼとマオ、両方をメイド妻にするしかなさそうw マオがノルドに完落ちするのが楽しみという読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。
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