第34話 勇者の好感度激下がり【ざまぁ】
「将来有望なボクの子種をキミにあげるんだから、いいよね! ね!」
このクズ童貞……マジしばきてーーーーー!!!
くっ!?
ファーオン♪ ファーオン♪ ファーオン♪
アラートが俺の脳内で鳴り響いた。
―――――――――――――――――――――――
ステータス異常発生!!!
【頭痛】【吐き気】【悪寒】【めまい】【幻覚】【毒】【痺れ】【硬直】【震え】【虚無感】【幽体離脱】
―――――――――――――――――――――――
なんとか魂が身体から抜け落ちそうになっているのを戻して、復帰したがケインのキモさはここまでだったとは思わなかった。
ノルンの正体が俺とも知らず、ぐいぐい迫るケインのキモさに、いますぐにでもオロロロロロロロロロロロロロロローーー!!! してしまいそうだ。
「これでノルドに勝つる! あれ? あれ? ノルンちゃん? どこに行ったの? ねえ、隠れてないで出ておいでよ。ボクの本物の聖剣を見ていきなって~!」
ケインがエクスカリバーのレプリカだとも知らずに頑張って抜いている間に、俺は気持ち悪さから木陰で虹汁を吐き終えた。
それとほぼ同時に俺の変身は解けてしまう。
「ふう~。やはり男に【変身魔導】は応えるな……」
変身は魔女っ娘の専売特許みたいなところがあるらしく、Sランク相当の魔導師でも男の場合、維持するのは十秒と保たない。
まあ俺は5分程度なら大丈夫だから、ケインを誘い出すくらいはできたのだけど……。
つか、ケインはあんな女癖が悪かったか?
ノルンが俺とも知らずに無理やりキスしようとれろれろ舌を出してくるとか、男の俺でもキモすぎんぞ。
ノルドは
あんなところ誰か他の女の子にでも見られていたら、ケインの学院生活は破綻してしまうんじゃないだろうか……。
まあ、それは
あとは中間試験の生徒同士の対戦で俺がケインとの勝負に負ければ、エリーゼはケインの下へ行ってくれる。俺も枕を高くしてぐっすり眠れるってもんだ。
まあ、あの100年の恋も液体窒素くらい冷えてしまいそうなキモさはなんとかしないとならないけど……。
そして俺はワルドよりひとつだけ上位の5番手の勇者として学院を卒業とともに辺境開拓へ旅立ち、のんびりスローライフを送る。
まさにパーフェクトな計画だ!!!
――――数日後。
俺たちは夏休みをまえにテストとしての実技演習を迎える。
俺の睨んだ通り、聖剣……と言っても偽物だが、それを手にしたケインは恥ずかしげもなくクラスメートたちにドヤ顔でイキリまくっていた。
実情を知る俺からすれば実に滑稽で微笑ましい光景だったが……、
「ノルド! ボクはキミと対戦を希望する。今日こそ、キミを倒してこの手にエリーゼを取り戻す!」
「ククク……笑わせてくれる。聖剣を手に入れて勘違いでもしたか? よかろう、このノルド・ヴィランス、おまえに負けた暁には勇者学院を去ってやる」
おお! 最高にいいぞ、この流れ。
聖剣を手に入れたケインにわざと無様に敗北して、俺は辺境で人目を避け、隠れ住むようにスローライフを送るんだ。
だが俺の目論見は対戦当日、脆くも崩れ去ってしまった……。
もちろん、そうなった原因は目の前の
俺は額に人差し指を当てて、ケインを挑発する。
「くやしかったら、その手に持った聖剣とやらで俺を撃ち抜いてみろよ。ここだ、ここ! よく狙えよ、三下」
【聖剣技! グランド・ケイン・アタック!!!】
必殺技に自分の名前を入れるなよ! つか、ちょ、おま、どこ狙ってんだーーーーーーーっ!!!
碌に聖剣を扱えないまま、俺に勝負を挑んだケインは、わざわざ俺が闘技場の中央と必殺技を当てやすいところにいるのにも拘らず、盛大に外してしまった。
ケインの必殺技の余波は俺から逸れて、観客席にいたエリーゼに向かってしまう。
【
俺はエリーゼのまえに壁を築いて、彼女に攻撃が当たらないようにした。
ケインの弱々メンタルだとエリーゼを傷つけたとかで自分から闇落ちしてしまいそうだったから。
――――テメーこの野郎! 貴族が憎いからって、闘技にかこつけて殺しに来るとかふざけんな!
――――そうよ、そうよ! おまけにエリーゼさままで傷つけようとか、マジ信じらんない!
――――ケイン、サイテー!!!
――――サイテー、ケイン!!!
俺とケインの闘技を見ていた生徒たちから凄まじいブーイングとゴミなどの物が飛んでいたが……。
「みなさん、ご静粛に!」
さすが聖女候補筆頭と言うべきか。エリーゼは立ち上がると生徒たちは闘技場が地鳴りするほど、酷いブーイングがピタリと収まった。
「みなさんの仰る通りです」
おお、ここでケインを擁護する発言が出るんだな! そうだ、エリーゼ、早く言ってやれ。そして俺をけなすんだ。
「仰る通りケインはサイテーです」
「は?」
「ノルドさまと正々堂々戦うことなく、観客席に攻撃を打ち込み、その隙にノルドさまを狙うと言う卑劣極まりないことを平然とやってのける……魔族いえ、魔獣以下の者です! 先生! 即刻、彼を反則負けにしてください」
「エリー!!! ボクはただキミを無理やりメイドにしたノルドが許せなくて……」
「酷い! ノルドさまは私の名誉を思い、メイドになったなどふれ回ることはなかったのに、あなたがみんなのまえで私に恥をかかせるなんて……」
「あ、いや、あれはケインが目測を誤っただけで、そんなつもりはなかったと思う。それにエリーゼが俺に雇われていることはみんな知ってた」
あまりにもケインが不憫すぎて、俺は彼を擁護してしまっていた。
「ケイン! これがあなたとノルドさまの格の違いです。ノルドさまは私はおろか、あなたまで庇ってくださったのですよ。ああ……なんて素晴らしいお方なんでしょうか」
――――あおおおおおーーー!
――――エリーゼさまの言う通りだぁぁ!
――――わたし……うるっときちゃった……。
――――ノルドさまとエリーゼさまの信頼と実績の証しだよね。
って、みんなその程度で泣くこたぁねえだろ!
きょろきょろと辺りを見回したドアンは俺の意向など汲むことなく……、
「観客を巻き込んだケインを失格とする!」
「「は?」」
勝手に決着がついてしまったことに俺とケインは呆然としてしまっていた。
はあ……なんてことだ。
平然を装い、俺は闘技台から降りたが観客から歓声が飛んでしまう。
――――ノルドさまは観客に危険が及んだことで悲しまれている……。
――――なんて慈悲深いお方なんだ……。
違うよ、ただスローライフが送れないことが悲しいだけだから。
しかし意外なことが起こった。
闘技が終わって舞台から降りて行ったあと、エリーゼは俺ではなく、ケインの下へ駆けていく。
ああ、口では厳しいことを言って、ケインに貴族社会を分からせ精神的に鍛えようとしていたんだな。
俺はひと安心して、俺に向けられるスタンディングオベーションに応えることなく闘技場を立ち去ろうとしていたときだった。
パッシーーーーーーーーーーーーン!!!
「ケイン……私は心底あなたを見損ないました。エリー、エリーとしつこく迫りながら、他の女の子に無理やり口づけをしようとするなんて! おまけに口に出せないようなことを宣うとか……。あなたは本当に最低の勇者候補です! ノルドさまの紳士かつ禁欲さを見習ってください!」
えっ!?
あれ……俺が女の子に変身して、ケインに嘘告したとこエリーゼにばっちり見られてたじゃん……。
―――――――――あとがき――――――――――
エリーゼ一筋かと思いきや、ヤれそうな子を見つけると迫る最低な勇者……。エロゲの主人公ですから、許してやってくださいw
いやケイン許せねえ! という読者さまはフォロー、ご評価クレメンス。
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