第33話 偽聖剣を本物だと思う勇者

――――【ケイン目線】


 なぜなんだ!


 ボクがエリーたんを助けるはずが、ノルドが彼女を助けてしまうなんて!


 田舎から王都のスラムに出てきて、初めてエリーたんに出逢ったとき、女神さまが本当にいるのかと思ったね。


 そんなボクだけのエリーたんをノルドはあろうことか、ボクを騙して奪い去っていってしまった。あいつは見るからに女の子からモテて、ボクの目をつけた女の子を横から奪い取る卑怯極まりない人間のクズだ!!!



 あああっ!!!



 ボクはマグダリア伯爵さまが推薦してくださり、特待生扱いで勇者学院に残れることになったけど、エリーたんは学費が払えなくて、まさかまさかノルドに買われてしまうなんて!!!


 くそう……ボクにエリーたんを買い戻すお金があれば、おパンツ見せてもらったり、おっぱい見せてもらったり、果てはヤらせてもらったりするのにぃぃぃぃーーーー!!!



 はぁ、はぁ……シコシコ、シコシコ……。



 いま頃、エリーたんはノルドに強制されて、服を脱がされたり、身体を舐められたり、果ては乙女の貞操まで奪われてしまっているに違いない!


 エリーたんはボクのモノだったのにぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!


 ノルドから奪い返したら、エリーたんが奴にされた酷いこと、ぜんぶ上書きしてやるっ!


 それになんだよ、あの測定器の故障に威力の不正は! どうせ、公爵家の金に物を言わせて、事前に壊れやすくしてたんだ。


 ああーーーっ!


 いま頃、エリーたんはノルドにあられもない姿にされて、「おほっ! おほっ! おほぉぉんっ!」って言わされちゃってるんだぁぁぁーーーー!!!


 勇者学院に入りさえすれば、ボクはエリーたんを正妻に迎え、他の女子生徒とヤリまくりの計画がぁぁぁーーーー!!!



 はぁ、はぁ……。



 しまった! 大枚叩いて描いてもらったエリーたんの肖像画にホワイトソースがかかってしまってるぅぅぅぅ!!!


 さ、最悪だ。


 紙で拭き取ったら、エリーたんが破れてしまった。


 ぜんぶノルドが悪いんだ!


 くそっ、こうなったらノルドから奪い返して、ホンモノのエリーたんにソースをぶっかけるしかないッ!


 ボクが最悪の賢者タイムを迎えているときだった。ドアの隙間から手紙が差し込まれていた。


 ――――おほぉぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!!


 急いでズボンを履こうとしたら、ズボンにつま先が引っかかり、転んで股間をテーブルに強打してしまう。


 地獄の苦しみからようやく解放されてドアの外を覗いたけど、すでに誰もいなかった。



 手紙を見ると……。


 マ、マジ!?


 ノルンちゃん!!!


 いますぐ未来の勇者のボクが逢いに行ってあげるからね~!!!

 


――――学院内の伝説の聖剣の下。


 入学当初と若干岩の形が変わったような気がするけど、相変わらず聖剣は抜かれないまま。ボクが必ず引き抜いて、ボクより弱いくせに偉そうにしている貴族たちを跪かせてやる。


 ボクは強打した股間のことなどすっかり忘れて、校庭にある聖剣エクスカリバーの刺さった岩のところまで来ていた。


 聖剣のまえには長く艶々の黒髪の女の子が立っていた。


 あれ、あんな子いたっけ?


 ボクに背を向けているので顔は分からないがスラリと伸びた長い手足に細くくびれた腰回り、後ろ姿からでももの凄くスタイルの良い子だと分かる。ボクは早く彼女の顔が見たくて堪らなくなって声をかけた。


「もしかして、キミがノルンちゃん?」

「あっ、ケインくん。本当に来てくれたんだぁ~、うれしい」


 かっわいい~!!!


 声をかけるとヒラリと短いスカートがたなびいて、健康的な太ももが覗く。ボクに告白してきたノルンちゃんの待望の顔が見えた! 切れ長の蒼い瞳に鼻筋の通った顔立ち、一見ツンとした印象を受けるのに口調はとてもフレンドリーだ。


 これは確実にヤれる!


 そう踏んだボクはノルンちゃんの手を取りながら、口説きにかかった。


「ねえ、いいでしょ! キミ、ボクのことが好きなんだよね? だったら、キスくらいしたっていいよね?」

「えっ!?」


 ノルンちゃんはボクの先制攻撃にびっくりした様子で驚いていたけど、図書室で読んだ『童貞でもヤれる! 女の子を口説き落とす100のテクニック』に書いてあったいわゆる吊り橋効果って奴だ。


「将来有望なボクの子種をキミにあげるんだから、いいよね! ね!」


 ノルンちゃんはう~んと唇に指を当て、少し悩まし気な表情を浮かべたあと、聖剣を指差して言った。


「分かりました。ケインくんが聖剣を抜けたら、えっちしてあげてもいいです」


 マジ!?


 本当にチョロインっているんだ!


 ノルドはボクに嘘ばかりついていたけど、それだけは仕方ないから信じてやってもいいかなって思った。


「ほんとに!? 抜く抜く! すぐ抜く! 一気に抜く!」


 ノルンちゃんが後ろから見守るなか、聖剣の柄を両手で掴み、力を思いきり込めた。



 タラララッラーーーーーーーーーーーーーーッ♪



 ボクはついに聖剣を手に入れたのだ!


「これでノルドに勝つる! あれ? あれ? ノルンちゃん? どこに行ったの? ねえ、隠れてないで出ておいでよ。ボクの本当の聖剣を見ていきなって~!」


 抜いた聖剣の切っ先を天高く掲げて、振り向くとさっきまで応援してくれていた彼女の姿が見当たらない。


―――――――――あとがき――――――――――

作者、TS化してニケにされるなら、テトラがいいです。オーナーがアレwでもテトラの娘たちは割と自由に生きてるっぽいし。い、いやだ、ミシリスだけはぁぁ勘弁してくれぇぇぇ~~~と思った読者さまはフォロー、ご評価だからお願い……(シュエンっぽくw)


作者、性懲りもなく冷やし中華みたいに新連載を始めました。


【ネトラレうれしい! 許婚のモラハラ幼馴染が寝取られたけど、間男の告白を蹴った美少女たちが、俺と幼馴染が別れた途端に恋心を露わにしてくるんだが。】


脳死しない笑えるNTRざまぁラブコメですので読んでいただけるとうれしいです!


表紙リンク↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330667920018002

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