第35話 夏休み

――――【ノルド目線】


 試験が終わり学院の掲示板に張り出された成績順に、俺はチベットスナギツネみたいな虚無感にあふれた目をしていたに違いない……。


―――――――――――――――――――――――

初等部 総合成績発表


超最優秀 ノルド・ヴィランス


優秀 エリーゼ・マグダリア


優等 グレン・エンジョー


   ・

   ・

   ・


劣等 ケイン・スォープ

―――――――――――――――――――――――


 どうしてこうなった?


 俺は低過ぎず、高過ぎず、という普通の成績で良いと思ったのに、ほとんどケインのやらかしとエリーゼの勘違いで春期の成績がヤバいことになってる。


「ウォォォォーーーーー! おれが優等なんて奇跡だぁぁぁーーーー! ああっ、ノルドさまとエリーゼさまの真下の成績とか熱すぎるぅぅぅーーー!」


 俺が頭を抱えてうなだれる横でグレンの奴が松岡○造ばりに暑苦しくて、俺の脳は溶けそうだ。


「ああ……ノルドさまは100年に一人という超最優秀に成られても、まったく満足されていらっしゃないのですね。なんと向上心の固まりのようなお方なのでしょう!」


 ちがうよ、キミたち二人が俺の思った通りにくっついてくれないから、頭痛が痛いんだ……。


 甲斐甲斐しく俺の部屋に通い詰め世話を焼き、同級生たちからは「もう通い妻でいいんじゃね?」などと言われると頬を赤らめ、はにかむようになったエリーゼがまた盛大に勘違いを起こした。


 少なくとも、いつもべったり俺にひっついて、いつ勉強しているのか分からないエリーゼのほうが実はすごいと思うのだが……。


「ふん、見くびってもらっては困るな。俺の実力はまだまだ先にある! いずれ、おまえらに俺の真の実力をみせてやるからな」

「はい!」


 修正力が働いて、俺は腰に手を当て周囲に威張り散らしてしまっていた……にも拘らず、エリーゼは俺の話にきちん耳を傾けて感心している。



 なんて素直なんだろう!



 はっ!? 俺がエリーゼに絆されようしていたときに気づいた。


 もしかして、エリーゼは俺を調子に乗らせて、自滅するのを狙っているのか! 


 危うく天使のような笑顔に騙されてしまうところだった。だが俺は前世において思わせ振り女子の行動をすべて、


 一体いつから――――俺に気があると錯覚していた?


 により防いできた。


 まったくエリーゼのような美少女が掛け値なしに惚れてくれるはずがないんだよ。


「貴様らぁぁーーー! 夏休みだからといって、家に戻って羽目を外しすぎるなよ! とくに勇者学院で学んだ者は比べものにならん力を有していることを忘れるな!」


 俺たちが掲示板のまえで騒いでいるとドアンが夏休みまえの先生らしいことを宣う。


 おまえもな!


 といった具合にドアンを睨むと奴はぶるるっと震え、意図的にこちらから視線を外している。そうかと思う俺とエリーゼ以外の生徒たちに早く講堂へ向かうよう威圧していた。



 講堂に集められ、リリアンはクラーク博士の銅像のような指差しポーズを取りながら、言い放った。

 

「夏を制する者が勇者とならん! 以上だ」


 なんかホットリミットスーツを着せたくなるような訓辞だったな……。


 やたら早く締めたところをみるとこのあと、舞踏会かお茶会でもあるんだろう。


 終業式をつつがなく終え、俺はゆっくり夏休みを迎えるはずだったのだが、事件がおこった。


「俺はヴィランス家に帰る」

「はい」


 部屋で旅支度をしようとすると、エリーゼは隣で両手を胸元に置いて、不安げな表情を浮かべていた。エリーゼは制服からメイド服に着替えたかと思ったら旅行かばんひとつ持って、立っている。


「そうか済まない。気が回らなかった。金ならくれてやる。とっとと伯爵家へ戻って親孝行でもしてやれ」


 1万枚の金貨が入った袋を彼女へ渡そうとすると全力で首を振る。


「ふん、足りないと言うか……強欲な奴め。なら2万ならどうだ?」

「違います! お金じゃありません!」

「なら宝石か? アクセサリーか? 待ってろ、道中にある適当な店で買い与えてやる」


 彼女はぶんぶんとまた強く首を振った。


「ノルドさまとごいっしょしたいのです」

「なんだそんなことか」


 って!? なに言ってんの、エリーゼ?



――――【エリーゼ目線】


 ああっ! ノルドさまのお屋敷へゆくのは二度目……。


 あのときとはまったく違い、いまの私はノルドさまに飼われているようなもの。


 いつでもノルドさまに求められても良いように勝負下着というのでしょうか、リンが童貞を殺す下着なるものを教えてくれたのですが、ノルドさまは私を犯すどころか、強い言葉をときおり仰るものの、その態度は淑女に接する紳士そのものです。


 過去に大罪でも犯したかのように露悪的に振る舞うノルドさま……私に彼の背負う過去は推し量ることは到底できませんが、彼に寄り添い少しでもその罪を知り、共に背負うことができないか、そのように思うようになりました。


 お辛いと思うのにそのことはひとことも吐露されることはありません……。これはまだまだ私とノルドさまの距離が遠いから。



 もっとノルドさまのことを知りたい。



 二人でひとつに溶け合うくらいに……。


―――――――――あとがき――――――――――

おや? エリーゼが股間を抑えているようですよ。

エリーゼの「やっとモーターのコイルが温まってきたところだぜ」(by金田)が炸裂しそうです。

二人の汗だくえっなシーンをご期待の読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

お子ちゃまの頃はアキラが怖くて見れなかった作者より。


作者、性懲りもなく冷やし中華みたいに新連載を始めました。


【ネトラレうれしい! 許婚のモラハラ幼馴染が寝取られたけど、間男の告白を蹴った美少女たちが、俺と幼馴染が別れた途端に恋心を露わにしてくるんだが。】


脳死しない笑えるNTRざまぁラブコメですので読んでいただけるとうれしいです!


表紙リンク↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330667920018002

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