第36話 凱旋帰宅

「なぜ二人ともこっちに座る」


 屋敷への帰り道、馬車の座席にエリーゼとマリィは俺の両隣に座ってくっついてくる。


 ぷにっ、ぷるん♪


 二人並んで座るぐらいなら余裕だが三人だと肌が密着してしまい……俺の腕に当たる美少女二人のたわわ。


「マリィはお兄しゃま成分を補給しないといけないのら」

「馬車は揺れますので、こちらのほうが良いかと思いまして」


 いや揺れてるのは二人のおっぱいだよ……。


 身体は大人、心はロリなマリィが甘えたがりなのは仕方ないにしても、エリーゼが恥じらいながら密着してくるのはいつまで経っても緊張してしまう。


 どこがとはいわないが……。


 二人にズボンが膨らんでいるのを悟られないよう慎重に歩き向かいの席に座るとマリィはたったっと駆け寄り、俺の隣に席を確保してしまう。


「きゃっ!」


 エリーゼもマリィの真似をしようとしたのだが、偶然馬車の車輪が小石を踏んだのかガタンとゆれてエリーゼの身体が俺に向かって倒れてきた。


「ノ……ノルドさま、こ、これは……」


 とっさにエリーゼの身体を受け止めたのだが、彼女を抱えたまま後ろに倒れてしまう。俺の膨らんだ股間をすっぽり覆うエリーゼの母性の象徴。着衣のうえからでもはっきりと分かるその柔らかさにあそこはより硬く、脳は蕩けそうになっていた。


「もう大丈夫だろう。いつまでも俺に被さるな」


 あまりの気持ち良さに口角からよだれが垂れそうになるのをこらえながら、言葉を絞りだした。


 言葉よりも俺の欲情がエリーゼにより絞りだされそうになっているのは内緒だ!


「申し訳ございません。ノルドさまにこんなはしたないところを」


 だが俺の股間に覆いかぶさったままのエリーゼのたわわと馬車の揺れという合わせ技により、互いに着衣だと言うのに昇天しそうなくらいぎもぢいい!


 はあ……はあ……。


 つ、強い……。ウブな顔して、なんというエロ聖女!!!


 アオオオオオオッ!


 もうひとこすりといったところで馬車が急停車してしまう。


 なんという恐ろしいOPIおぱいだ……。助かったのか、残念だったのか判断に迷うところであるが。


 あのままエリーゼからゆさゆさされていたら、俺のキリマンジャロが白い噴煙をあげていたところだ。


 馬車のなかにまで声が響いてくる。


「オレたちのシマを素通りしようとか舐めてんのか? ちゃんと通行料を支払ってもらわねえとなぁ!」


 停車した理由は簡単、俺たちの乗る馬車の周囲をいかにもヒャッハー! とか言って手荒く歓迎してくれそうな盗賊どもが取り囲んでいたのだ。


 俺が客車の前の窓から周囲を覗く。御者を務めるモランが俺の手を煩わせたくなかったのか慌てて伝えてきた。


「ノルドさまっ! ここは私が……」

「モラン、おまえはマリィの側にいてくれ。俺は野人どもと話してやろうと思う」


 モランは俺の言葉に頷き、御者席の護身用の剣を手に取る。


「お兄しゃま!」

「ノルドさま!」


 心配する二人に「なにがあっても客車から出るな、身を低くしていろ」と伝えると俺は外に出た。


「いつから街道がおまえらのシマになったんだ? 俺は知らんな」


「今日からだ! お楽しみのところ悪いが貴族さんよ。その美人二人と身包みぜんぶ置いて、立ち去ってくんね? そしたら、あんたの命だけは助けてやんよ」


 エリーゼとマリィがそーっと窓から外を覗いているのが見える。


「あれれ? 変な人たちがいないのれす」

「ええ……どうしたということなのでしょう?」


 突然エリーゼとマリィのまえから姿を消した盗賊たち。エリーゼとマリィはきょろきょろと辺りを見渡し、なにが起こったのか分からないといった様子だった。


「面白いことを言う。もうすでにおまえらは、ここにはいないというのに……」

「なにを馬鹿なことを……っ!?」

「いま気づいたか」


 盗賊が蛮刀を抜いて俺に切りかかろうとすると、彼らはなにもないところで頭や足をぶつけてしまう。


 向こう側からは俺の姿が見えるが、俺以外の者は元のままの景色が見えているだけだからな。


 俺の家族を奪おうとしたその罪は重い。


 俺の暗黒魔導【断界】により、盗賊100人を封じ込めた。


「せ、狭いぃぃぃーーー!!!」

「大丈夫だ。直に馴れる。100年ほど入っていれば、魔導が解けるしな」

「それじゃ、死んじまう!」

「それより食料はっ?」


「あるじゃないか、おまえらという食べ物が……」


 【断界】は100人入っても大丈夫!!!



「お兄しゃま、頭悪そうな奴らはどこなのら?」

「ノルドさま、さっき襲ってきた人たちはどこへ……?」


「なんてことはない。さっきのは俺の作った幻影だ。勇者学院の生徒たる者、いつでも備えが必要だからな。気を抜くな……という意味だ、はははは」


 ちなみに俺はエリーゼから精を抜かれそうになっていたけど……。


 あんな人間のクズどもをエリーゼはともかく、マリィに見せ続けるのは忍びなくて、お茶を濁しておいた。


 なに巨悪が小悪党を呑み込んだにすぎないのだから。



 俺たちの乗る馬車はヴィランス公爵領へ入ると状況が一転した。


「モラン、俺の歓迎など不要と伝えておいたはずだが?」

「申し訳ございません、ノルドさま……領民たちが勇者学院で好成績を上げられたノルドさまを是非歓迎したいと……」


 まるでマラソン選手が走っているかのように沿道には領民たちがぎゅうぎゅうに押し寄せていた。


 わざわざ出迎える必要なんてないし、ゆっくり休んでてもらおうと俺は領民たちに声をかけようとした。


「愚民ども、よく聞け! 俺の出迎えなどしている暇があれば馬車馬のように働け! そして、ヴィランス家にもっと税を納めろ! 分かったら、つまらぬ集まりをすぐに解散しろ」


 ひいっ!?


 ノルド語に変換され、声をかけるというより邪魔者扱いしたうえにさらに働けなどと煽ってしまう。


 ど、とうしよう……。


 彼らが怒って俺たちを襲ってきたら。


 盗賊たちとは違って、彼らは俺を歓迎しにきてくれたのだから……。


「うぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!」

「ノルドさまが我らに直にお声がけしてくださったぞ!」


「歴代の領主さまは我々のことなど奴隷……いやそれ以下の虫けらだとしか思われてなく、声など一度もかけられなかったのに!」


 へ?


「おまけにおれたちに頑張るように、と励ましてくださるなんて……」

「ワルドさまには悪いが、早くノルドさまに代替わりしてくんねえかな~」

「しっ、声がデカいって」


 結局俺たちはマラソンのランナーのように沿道に詰めかけ、旗を振って応援してくれる観客みたいに連なった領民たちから歓迎され、屋敷に戻った。


「ああっ、まるでノルドさまと結婚式を果たしたかのような歓迎ぶりですぅ」


 エリーゼが頬に手を当て、よろこんでいるようだったが、聞かなかったことにしておく。

 


 俺は父親で現当主のワルドより人気者になってしまい、困ったことになったと思っていた。屋敷に到着するなり、ワルドに呼び出され指示を受けてしまう。


「ノルドよ、私に代わりメタミン村の徴税を行え!」


 俺は思い出す、ノルドが行った悪行とその顛末を……。


―――――――――あとがき――――――――――

せっかく死亡フラグを回避してきたというのにノルドは悪役にされて、最悪な結末を迎えてしまうのか!? 胸糞展開になるんじゃねえぞ! という読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

死ぬならエリーゼの巨乳で圧死もしくは窒息死♡

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