第20話 入学前の童貞卒業

 他人であるのに俺にまるで実の子のように無償の愛を注いでくれたメイナさんが目を閉じ、俺を待っている。


 メイナさんは自身が年増だと強調していたが、全然そんなことない! あくまで転生した俺と比べての話で転生前の俺より一回り以上若いのだ。


 手を伸ばし、メイナさんの頬に触れると弾けるような瑞々しさと俺の指に吸いつくような柔らかさが同居していた。


「ノルドさま……ご遠慮は入りません。このメイナをお好きなようにお扱いください」


 精神年齢が大人でも初めては緊張してしまう。


 俺の指の動きから動揺を悟られたのか、声をかけられていた。


 前世じゃアラサー童貞魔法使いだった俺が暗黒騎士という魔導にも秀でたキャラに転生したのはそんな繋がりもあるんじゃないかと、なんとなく思えてくる。


 結局ノルドは自身で持て余すほどの強さを持ちながら誰もしあわせにすることもできなかった。


 俺はほん小さな枠組みだけでもしあわせになりたい、メイナさんとマリィという本当の家族だけでも構わないから……。


 その決意表明として……、


 ゆっくりと思わず触れたくなるようなあかみを帯びた唇へと口づけする。


 いままで育ての母のような存在のメイナさんに初めてキスしたことで、罪悪感よりも背徳感が勝り、前世からでもこれほど興奮を覚えたことはなかった。


 ゆっくりとまぶたを開くとメイナさんと目が合う。


 彼女は顔を紅潮させ、うれし恥ずかしといった表情を浮かべていたが、たぶん俺も同じように顔を赤くしていると思う。


「ノルドさま、うれしいです。こんな私に熱い口づけしてくださるなんて」

「メイナ、卑下することはない。おまえは俺にとって魅力的すぎる。もう一度キスしてもいいか?」

「私の唇を好いていただけて、うれしいです」


 チュッ、チュッ、チュッ、チュッ、チュチュッ。


 俺は親が小さな子どもの頬へちゅ~するようにメイナさんの唇に何度もキスを落とした。


 んんっ!?


 するとメイナさんはふふっと微笑み、俺の後頭部を抱え、まるで童貞の俺にお手本を見せるかのように唇同士が触れ合ったまま、口を開き、舌を入れてくる。


 彼女の舌に愛撫され、脳みそまで蕩けそう。


 キスしながら、二人いっしょにベッドに倒れ込んだが、さすが公爵家のベッドだけあり、俺たちの身体をふわふわと包み込んでくれていた。


「ノルドさま……気負ってはいけませんよ。最初はじゃれ合うような感じでよいのです」

「あ、ああ……」



 彼女の言葉で思い出されるのが寒い冬の夜のことだった。


『メイナ! 俺といっしょに寝ろ』

『はい、ノルドさま』


 生意気にも命令口調だったのにメイナさんは嫌な顔をいっさいせずに笑顔で答えてくれた。ノルドになって、まだいまよりずっと幼かったかったときにメイナさんは同衾してくれて俺を温めてくれたのだ。



 そのときと同じように彼女の足に俺の足を絡めていた。違うのはお互いに感じやすいところをこすり合わせていることだろう。


 いつも俺が汗を拭くときにメイナさんたちにされているようにメイナさんの首筋を舐めると、


「ノ、ノルドさまぁぁぁんっ! くすぐったい♡」


 甘い吐息が漏れ出て、豆腐屋のオヤジじゃないが俺の胸の高鳴りは1万1000回転まできっちり回ってしまっていた。


 髪とうなじから漂うメイナさんの良い香りと彼女の喘ぐ声は、俺をただのから雄へと変えさせる。


 たわわに実ったまさに乳袋と呼ぶに相応しいメイナさんのメイド服を震える手で強引にずり下げるとぽろんと袋からメロンが弾けるように出てきてしまう。



 おっぱいがいっぱい……。



 二つしかない乳房だったが、興奮しすぎて頭が猿以下の思考力となってしまっていた。はちきれんばかりの胸元から直搾りを始めた俺。


―――――――――自主規制―――――――――


 おっぱい飲んで、おねんねしま~す!


―――――――――自主規制―――――――――


「メ、メイナ、いくぞ」

「はい……いつでもいらしてください」


 メイナさんは俺を求めるように下から両腕を伸ばして、迎えいれてくれる。



 俺とメイナさんはひとつになった。



 目を覚ますと俺の隣にはしあわせそうにして眠るメイナさんの横顔があった。


 俺にかぶさっていた寝具を払い、メイナさんを起こさないようベッドからそろりと出ると全裸だった。


 バルコニーの窓からはゆっくりと陽の光が照らし、真っ暗だった世界は赤みを帯びながら明るくなってゆく。



 俺は勇者学院に入学をまえに卒業を迎えてしまった……。



 前世でも叶わなかった女の子とのえっち!

 

 全裸で昇ってくる朝陽を浴びながら、じわじわとこみ上げてくる感動に打ち振るえていると、メイナさんが目を覚ましたようで、寝具にくるまったまま俺に呼びかけてきていた。


「ああ……ノルドさまに抱かれ、メイナは本当に幸せ者です。こんなにも愛しい人から愛されるのが気持ちいいだなんて、知りませんでした。ノルドさまと婚約されるご令嬢にちょっと嫉妬しちゃいます」


 ふふっ、と笑みを漏らす姿は十代の美少女となんら変わらない。


 俺は朝陽をバックにして、メイナさんに言い放つ。


「俺が入学するまでメイナを何度も愛してやる。感謝しろ」

「ありがとうございます」

「あとは止めろ」

「は、はい?」


「俺とメイナは今夜は恋人同士。名前で呼び合うほうがもっと気持ちよくなれる」

「はいっ!」


 彼女にキスを落とすと二人とも火が着いて、人妻だったメイナさんの肌をむさぼっていた。


「ら、らめぇぇ……」


 メイナさんの嬌声を聞くだけでレッドゾーンまで回したエンジンが萎えたはずなのに、また激しくピストン運動ができる準備が整ってしまう。


 このあといっぱいえっちした!


 途中メイナさんにSっ気の強いメイドになってもらったりして楽しんだのだが、彼女に疲れの色が見えたので、休憩を取る。


 俺の腕枕で横になっているメイナさんはお願いをしてきた。


「ノルドさま、もう勇者学院へ入学しないなんて、わがまま仰りませんよね?」

「あ、ああ……」


 俺を横から愛おしそうに抱きしめ、彼女の全身全力の愛のまえに絆されてしまう……。


 その言葉に安心したのか、すーっすーっと穏やかな寝息を立てメイナさんは眠ってしまう。しあわせそうに眠るメイナさんを見て、俺は簡単にエリーゼやケインに殺されるわけにはいかなくなった。



 俺はワルドからの命令は突っぱねるつもりだったが、乳母であるメイナさんから頼まれると断ることができずに渋々勇者学院の入学試験へと出発していた。


―――――――――あとがき――――――――――

勇しぶ……もう10年も前になるんですね。ホント時間が経つのは早い!

章立てしてませんが明日から勇者学院編が恥まります。否、始まります。

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