第21話 【悲報】俺の好感度が下がらない!
「ノルドさま、到着いたしました」
「ああ」
馬車で最高位貴族専用の校門から入り、執事に促され降車し俺の新たな学び舎の廊下を歩いていると、
「ノルドさま、申し訳ありません。当学院は裏口入学対策のため、仮面を着用しての試験はお断りさせていただいております」
はぁ……。
ため息しか出ねえ。
エリーゼに身バレしないよう鉄仮面をかぶったまま入学しようとしたら、グリーンの髪色で癖っ毛の女性から呼び止められた。
「リリアンじゃないか、久しいな」
呼び止めたのは勇者学院の学院長リリアンで、俺の肩を後ろからしっかりと掴んでいる。
「そもそもちゃんと俺だと分かってるじゃないか。では別室で受けさせろ」
「それもご遠慮させていただいております。当学院は公明正大をモットーとしておりますので」
アラサーの元女勇者のリリアンはキリッと澄ました顔で言ってのけるが、現役の頃は男漁りが過ぎて、勇者学院の学院長などというお堅い現場に押し込まれた形だ。
「もっとガバガバかと思ったら、変にしっかりしてやがる……」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いやなにも」
まあいい。
たとえ身バレしても、そのためにグラハムという保険を用意しておいたのだから、大丈夫だろう。俺の予想ではエリーゼとケインはよろしくやってるはずだ!
作中では自分に甘く、他人に厳しいリリアン……。
そんなことを思っているとノルドは融通の利かないリリアンに釘を差してしまう。
「そうだ、ひとこと言っておいてやろう。リリアン、昔に比べて小言が増えたな」
「なっ!?」
俺の指摘にリリアンは口を開けて、あ然としたかと思えば、眉間に皺を寄せながら言い返してくる。
「だ、誰がBBAになったですって!?」
「俺は小言が増えたと言っただけだ。もしかして、その自覚でもあるのかな?」
「あなたがヴィランス公爵の令息じゃなきゃ、退学させてやるんだから!」
「是非ともそうしてもらいたいものだ!」
「えっ!?」
俺から思ってもみない言葉が出たことにリリアンは驚いていたが、さらに彼女を驚かせてみた。
ほいっ。
俺は鉄仮面に施した封呪を解除し、外した鉄仮面をリリアンにボールを投げるように渡した。
「お、重いぃぃぃーーーーーーーーーーーーっ!」
「ヴィランス家の宝具だ。丁重に扱えよ、リリアン学院長。外せと言ったのはおまえだからな、くくく」
「お、覚えてなさいよ、ノルドォォォ!」
リリアンは四股を踏むまえのような姿勢で鉄仮面を抱えて、必死になっていた。短期的にだが俺の教育係も務めていた彼女と別れて、エリーゼたちを探す。
いたっ!
【
しかし様子がおかしい……。
ケインは御者と共に外の御者席に座っていたのだ。ゲーム内でエリーゼとケインは、
「エリーゼさま、到着いたしました」
ん? どういうことだ!?
ケインが降りて客車のドアを開き、エリーゼをエスコートしようとしたのだが、
「ごめんなさい、お手は必要ありません」
彼女はケインの差し出した手を取らずに馬車を降りてしまう。仲の良かった恋人が長く付き合い、倦怠期を迎えたような距離の取り方をしている。
い、いや、まだ決めつけるのは早い。たまたま直前に喧嘩してしまったという線もあり得るからな。
俺が訝しみながら、二人を見ていると馬車のステップを踏んだエリーゼと目が合ってしまう。
いや気配を遮断しているから、問題ないと思った瞬間のことだった。
エリーゼはケインが呆気に取られてしまうほど、勢いよく俺の下へ走り寄ってきて、抱きついてしまう。
「お、おい!」
「こちらにいらっしゃるということはやはりあなたさまがホンモノのケインさまだったのですね。もう二度とお会いできないかと思っておりました」
「俺はケインなどという名ではない!」
「いいえ、あなたさまはケインさまです。私の心がそう伝えてきます。あえて悪ぶっているような口ぶり……隠そうとしても溢れ出る気品、優男なのに自信に満ち溢れた強さ……ああ……、愛しのホンモノのケインさまぁ……」
「何度も言わせるな。俺はケインなどではない! ノルド・ヴィランスだ」
ホンモノのケインは俺たちのやり取りを見てしまい、白目を剥いてもうひと押しすれば、魂が肉体から抜け出てしまいそう。そんなケインに一瞥もくれず、エリーゼはマイペースで俺に言い寄ってきていた。
「では……やはりノルドさまが私の恩人さまで間違いなかったのですね。お屋敷を訪れた際、鉄仮面をかぶることで恩着せがましい真似をされたくなかったのですね。よ~く分かります、そのお優しくて気高いお気持ち」
いや全っ然分かってねえよ!!!
単におめーにバレたくなかったんだよ、俺は。
俺がエリーゼに突っ込もうとしたそのときだった。彼女はキッとケインを睨みつけるとケインは肩をびくつかせ、たじろいだ。まるで『ザクとは違うのだよ、ザクとは』と言いたげなケインを蔑んだ視線だ。
グフもあんまり変わんないと思うぞ、エリーゼ。俺はせめてヅダでありたいと思う。
どうでもいいことを思っていると、彼女はさっきよりもより強く俺に抱きつきながら、気持ちを打ち明けてきていた。
「もうお会いすることができないかと諦めそうになったときもありました。でもあの優しい眼差しがどうしても忘れられなかったのです」
―――――――――あとがき――――――――――
『IGLOO』に出てくるMSとやらは基本ポンコ……欠陥兵器という扱いなんですが、割と無双してるんですよね。なかなか悲劇的な結末を迎えるエピソードが多いですが、今度ネトフリ独占の『復讐のレクイエム』はどうなるんでしょう?
とりあえず、作者は陸戦強襲型ガンタンクが出て欲しい……作者と志を同じくする読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。
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