第26話 ムカつく先輩との決闘
――――数週間後。
「ドアン! 詠唱が遅いぞ、何度言ったら分かるんだ、こののろま!」
「はひぃぃぃ!」
俺は注意がてら、走りながらドアンの耳元に【
リリアンの耳に影の近衛騎士団という噂が入ってしまい、俺はドアンの代わりに初等科の教授をやる羽目になっていた……。
「さらば我がスローライフ」
俺の計画がどんどん遠のいてゆく……。
「ノルド先生、なに言ってんだ?」
「さあ?」
「おまえら! 休んでるんじゃない! 次の実戦を行うぞ!」
俺はドアンのように教授を引きずり下ろしもらいたくて、前世の社畜職場よろしくクソ上司の真似をしてパワハラ、モラハラ授業を敢行していた。
ちゅどーーーーーーーーーーん!!!
「おまえらに告げる! いまから俺の放つ暗黒魔導の波状攻撃から1分耐えてみろ! いや耐えられなければ死しかないんだがなぁ、はははは!」
「ノルド!!! 言うまえから、魔導を放つのは反則だよぉぉぉーーー!!!」
俺がなにも告げずにクラスメートたちに振り向きざまに放った【
「うるさい! 戦場は常に理不尽だ!」
俺の前世のブラック職場のように……。
30人いたクラスメートの大半が戦闘不能となってしまい、残ったのはケイン、グレン、ハリーの3人となってしまう。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!! 魔族の狡猾さはこんなものではないぞ! 常に警戒を厳に! おまえの隣にいる仲間すら、すでに魔に魅入られているかもしれないんだからなぁ!」
「ノルドは勇者じゃなくて、魔王だ……」
まったく笑えない冗談だ。
俺が魔王になったら、確実に死んでしまうのだから……。
――――教授レビューの日。
『成勇』の勇者学院の特徴として、各教授に生徒はレビューをつけられる。
授業がつまらない、セクハラが酷い、口が臭い、なにを言ってるか分からないなど、レビュー内容はさまざまだ。作中、ドアンは生徒を買収し、成績をよくする代わりに教授レビューをよく書くように精度と取引していた。
ククク……俺はそんなことを一切しちゃいない。これで教授などという堅苦しい立場からおさらばだ!
俺は酷評され、教授はおろか生徒としても不適格で勇者学院を追放されるはず!
ええっと……。
渡されたレビュー内容を与えられた教授室で読むと、
―――――――――――――――――――――――
ノルド先生の授業は他の先生には真似できません。弱い先生にはぜったいにできない実戦という心構えを教えていただきました。
―――――――――――――――――――――――
は?
いやいや、これはなにかの間違いだ! 次だ、次ぃぃぃぃ!!
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厳しさのなかに優しさがある先生です。倒れていると【
―――――――――――――――――――――――
ドMくん?
あれ……回復じゃねえんだよ。生命力を前借りしてるだけだから……。
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先生は尊大にも見えるけど、実は謙虚。遅れてきたことなんてなくて、おれたちより先に野外演習に来て準備してくれてる。
―――――――――――――――――――――――
いや、それおまえらを罠にかけるための準備してるだけだから!
う~む、あんなパワハラ、モラハラ授業がいいとかみんなドMなのか?
おっ! これは俺に対するアンチコメだな。
―――――――――――――――――――――――
ノルド先生は博識なのに質問してもちっとも答えてくれない。何度訊いても「痴れ者がぁぁ! その程度、己で調べるんだな」と酷く叱責され、凹んでしまう。
酷い先生だと思ってしまった。
でもよくよく考えたら周りに仲間は居らず、ひとりになることがある。たぶん自分で調べて考えろ、と自主性を重んじてくれてるんだと思う。いままで両親から与えられるだけだった私にそのことを教えてくれたノルド先生は最高の師です。
―――――――――――――――――――――――
……。
おい、落としておいてあとで誉めるの、ヤメレ!
ふう……これが最後か。
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ク●ノルド!!! ボクはおまえの生徒にはならないぞ! あんな授業、ぜったいに認めない! おまえなんか█████████████!
███████████████████████████████████████████!!!
【人格否定の表現が多数見られ、学院長権限により内容を修正、レビューを認めないことにした】
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どっからどう見てもケインだな。リリアンから黒塗りにされてるとか草しか生えない。
って、俺……教授から降りられないじゃねえか……。
リリアンの奴、ぜったいに面白がって俺に教授なんてやらせてるだろ!
高評価レビューばかりなのに頭を悩ませているとエリーゼが入室してくる。招かれざる客なんだが、科が違えど一応生徒なので拒否できないのが悲しい。
「ああ……今日のノルドさまは一段と格好良かったです。あの多人数を相手に一歩も退くことなく、立ち回られるなんて!」
「……」
どうして、この娘にはそう見えるんだろう?
市街戦、攻城戦を想定し、みんなを袋小路に追い込んで、
俺たちが話していると教授室のノックもせずに土足で踏み込んでくる輩。いや土足でいいのか……。 海からワカメを頭に乗せて上がってきたような髪型の男は俺に向かって言い放つ。
「おまえがノルドか! ふん、まだずいぶんと子どもっぽいんだなぁ」
「誰だ、おまえは? 俺はエリーゼを分からすので手いっぱいだ。用件があるならあとにしろ」
「貴様ぁぁ!!! このお方をどなたと心得る。このお方はなぁ――――」
「知らんな、おまえウザいからしゃべるな」
「んぐっ!? うー、うー、うー」
ワカメの腰巾着みたいな坊主頭の男がうるさいので魔導で即座に黙らせた。
しかし……。
誰だ? こんな奴いたっけ?
「学院入りたての青二才が……調子に乗るなよ。このすべてにおいて最高である私が貴様に教育的指導を与えてやる」
お、そうだそうだ思い出した、このムカつくしゃべり方。ヴィランス公爵家を中心とする貴族派閥ゲゼルシャフトの一員で初等科の生徒には厳しく当たるが、ワルドには媚びへつらう中等科の小物先輩だ。
忙しいし、次の授業も控えてるし……面倒くさいな。
「おい、やる気のある無能のハンス! 俺は忙しい。用件はひとことでまとめろ」
ひっ!? 俺の思ってることそのまんま口に出しちゃうとかマズいって!
「なんだと! このバウンダリン侯爵令息ハンスに向かって、そんな口の聞き方をしたことを思い知らせてやるっ!」
ハンスは俺の足下に白いグローブを投げつけた。
「拾え」
「ああ? 教授の俺がなぜおまえの手垢のついたグローブを拾わねばならないのだ? 違うだろ、手合わせしたくば、ノルド先生お願いしますと告げて、土下座だろ?」
「き、貴様ぁぁ! 上等生に向かって、そんな口の聞き……うー、うー、うー」
「きゃんきゃん吠える奴ほど弱いと言うが、こんな低級魔導にすら抵抗力がないとは、呆れてものが言えん。家に戻って、いちからやり直せ」
―――――――――あとがき――――――――――
エリたんに白い靴下を投げつけられたら、おみ足を舐めていい合図ですwww
たくさんのフォロー、ご評価ありがとうございます! まだお済みでない読者さまのフォロー、ご評価もだしだしお待ちしておりますので、よろしくお願い申し上げます。
たくさんの応援コメントをいただいているにも拘らず、ご返信が遅れてしまって申し訳ありません。実は新作書けない病を発症しておりまして、困っておりました。一応、危機を脱したので順次お返しいたしますので、しばらくお時間くださいませ。
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