第24話 俺は何かやってしまったみたいだ

「ま、まあ……魔力量が高いからと言って、実戦における魔導が強いとは限らん! 次は実技だ!」


 ドアンはだらだらと汗をかきながら、口を開いた。さすがにあれだけ大口を叩いておいて、生徒に負けてるんだから、ざまぁとしか言いようがない。


「あー、えーっと古の世界を焼き尽くした……誰だったけ? そうだ、アグニだ! アグニよ……」


 長い……。マジで長い。


 俺があれだけ詠唱したら、大陸ごと焼け野原にできそうな気がする……。つかちゃんとスペル覚えとけよな!


 ドアンはお経のように長ったらしく詠唱したあと、攻性魔導を放ったが俺から見たら、大したことない上にどこに実戦性があるのか良く分からなかった。


 リリアンにドアンは教師に向いてないと提案しておこう。


 これが悪い手本の典型例をたっぷり見せられてしまったあと、ドアンは次の者を指名した。


「ケイン・スォープ! やってみろ!」

「は、はいぃぃぃっ!」


 ケインの奴……完全にお登りさん状態じゃねえか、マジで大丈夫なんだろうな。


「焔の精霊よ、我は汝らの力を欲する。我の願いに応えてくれるならば約束しよう、汝らを生涯奉……」


 俺の心配を余所にケインはドアンのようにスペルを間違うことなく詠唱し終えようとするとドアンはすかさず邪魔を入れる。


「おいおい、ケイン……それでは実戦では役に立たんぞぉ。もっと早く詠唱せんとなぁ! やはり平民では無理なのかぁ?」


 おまいう!?


「あ、はいぃぃ、い、いますぐにやりますからっ」


 ここで一発どでかいのをぶちかまして、エリーゼを惚れ直させろ!


 俺はすでにケイン応援ニキとなり、固唾を飲んで彼の魔導を見守っていた。


 ゲームじゃ、ここでケインが魔力暴走気味のファイアボールを放って、みんなを驚かすんだよな。


 ケインの手のひらに集まってきた眩いばかりの閃光がついに的に向かって放たれる!



【ファイアボール!!!】



 ピョッ……。



 あろうことかケインの放った初歩の初歩たる魔導は、まるで化学の実験でやる試験管に溜めた水素のように一瞬だけ辺りを照らしたのみ。


 その場にいた一堂があ然としたあと、平民のお手並み拝見といった期待は一気に嘲笑へ変わってしまった。


 ――――なんだ、ありゃ……。


 ――――屁にも劣るぜ!


 ――――さすが平民!


 ――――雑魚さが知れる!


 盛大に失敗してしまったケインに心ないヤジが飛んでくるが、エリーゼの優しい性格ならケインを擁護してくれるはずだ!


「……」


 エリーゼはケインを見ておらず、俺にだけ熱い視線を送っていた……。


 期待した俺がバカだったのか?


 俺の両親は来てはいないが、温室育ちの子どもを心配性の親がギャラリーとして見守っている中に混じり、俺の執事であるグラハムがいる。


 俺はケインの傍らにいたグラハムにことの次第を問い質していた。


「グ、グラハムよ。これは一体どういうことだ? 俺はケインを鍛えろ、と命じたはずだ」


 グラハムは深く頷くと自信満々の顔で俺の問いに答えた。


「はい、ノルドさまがいたぶりやすいよう、体力のみを増強し、アンデット並みのいたぶり甲斐があるよう調教しております」


 ぬぁんだってぇぇぇーーーーーーーーーーっ!?


 マジ要らぬ忖度ぅぅぅぅ。


 グラハムの忖度に驚いた俺は詠唱中の暗黒魔導のスペルを間違えてしまい……、



禍々しき闇の物質Xダークマター



「しまったぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!」



 シュッ……!!!



 荒野の空間にギリ視認できるか、できないかぐらいの極小の黒い点が現れたかと思うと、周囲のありとあらゆる物質が球状に抉られ、瞬く間に蒸発する。


 俺は目標物どころか、射撃場におけるバックストップ代わりの防御壁と山脈を消し去ってしまったのだ。


 加減しようと思ったのになんてこった……。


 そーっと、そーっと。


 俺はケインを嘲笑することに沸いている訓練場から、何事もなかったかのように忍び足で立ち去ろうとしていた。


「さすがノルドさまっ! やはり実力を隠しておられたのですね。私はノルドさまとならば、この大陸……いいえ世界の救済すら成し遂げられるような気がいたします」


 うん……救済するなら、まずケインを先にしてあげて!


 俺からいっさい目を離さず注目していたエリーゼが、賞賛したことでみんなの目が俺へ一斉に注がれてしまう。かわいいくせして、俺にとってエリーゼは聖女どころかとんだ疫病神になってしまった。


 ――――さすがヴィランス家の御曹司!


 ――――家柄に驕ることなく、努力されるとは!


 ――――おれはノルドさまの腰巾着になる!


 ――――なにを! おれは取り巻きだ!!!


 ゲーム通り、ノルドの圧倒的な力のまえに不良仲間というか、取り巻きができてしまう。一応俺が努力してしまったために、パワーは段違いなのだが……。 


「加減したはずだが、あの程度で崩れてしまうとは……何万、何十万とかけてできた山脈であるのに人の営みのまえには無力だな!」


 俺の想いはノルド語に変換されて、周囲にマンウント取りまくってしまっていた。


 いじめ良くない、ゼッタイ!


 とりあえず取り巻きたちにはケインをいじめないように釘を刺しておかないと……。彼らが変にいじめて、ケインに覚醒でもされたら俺の生命が危うくなるからな。


 とにかく俺の作戦はやることなすこと、裏目に出てしまっていた。


 ぼっち学生を目指そうとした俺が注目を浴びて、目立たせようとしたケインがぼっちになってる……。


 俺がみんなに賞賛されながら囲まれてると髪をなびかせた美少女が通り過ぎた。


 ん?


 マリィに似てる……んがしかし……。


 あんなにおっぱいばいんばいんに成長しているわけがないしなぁ。マリィは10歳だし、ヒンヌーだし、そもそも入学資格がないのだから……。


―――――――――あとがき――――――――――

1/144です、通してください。


ついにデンドロビウムが我が家に届く!


届く!


届く!


届い……た(絶句)


宅配業者さんから受け取った瞬間に作者から言葉が消えた代わりに数々の疑問が噴出。


プラモですよね、あなた?


メチャクチャデカいですよ?


言うてもたかだか1/144っすよ~と届く前まで舐めプしてた自分を猛省させたい。ちなみにFRSのスペシャルウィークを15箱を余裕で格納できるくらいデカい。


そしてプラスチックとは思えないくらい重いんですが? 量ったら外箱込みですが、8.2kgもありやがりましたよ。もはやプラスチックの重さじゃない。


それじゃあ、積んでおきますか……(ちょ待て)


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