第4話 悪役転生【ざまぁ】

――――エリーゼがノルドに寝取られてから三年の月日が経った。


 エリーゼへの想いが断ち切れないケインは打倒ノルドを目指し、ついに勇者として覚醒していた。


「うう……あと一太刀浴びせられれば、ノルドを倒し……エリーゼを取り戻せ……」

「詰めが甘いな……だからおまえは……」


 死力を尽くして戦った二人はお互いに大地に倒れて、動けないでいた。


 仰向けに倒れたノルドのまえにメイド服に身を包んだ女が現れる。メイドはノルドの髪を愛おしそうに撫で、微笑みかける。


「ノルドさま、ご無事でしたか」

「おお、ちょうど良いところに来た。俺にヒールをかけろ。すぐさまその腐れ勇者を屠って……エリーゼ、おまえ……なにを考えているっ!?」


 微笑んだはずのエリーゼはスカートのなかの太ももにつけたホルダーからナイフを取り出すと逆手に持って大きく振り上げた。


「やっと……やっと……この日が巡ってきました。あなたに辱められて以来、どんなに待ち望んだことか。さあ、あなたのような人間のごみは地獄の業火に焼かれ、浄化されるべきなのです」


 白刃に陽の光が当たり眩しさを覚えたそのとき、 勢いよくノルドの腹めがけて下がる。


「や……やめろ……ぐあぁぁぁ」


 エリーゼの顔が真っ赤に染まり、ノルドが叫び声を上げていた。


「や、やめてくれ……エリーゼ……おまえは俺を愛して……」


 ブシュッ、ブシュッ、ブシュッ!


「馬鹿なひと……私があなたの命令に従い喘いだら、感じてるとか思っちゃうとか。そんなわけないじゃないですか……ぜんぶ演技ですよ。もう二度とお会いすることもないでしょう、さようなら……ノルド」


 エリーゼは妖しく微笑んだあと、なんの躊躇もなく、ノルドの心臓に止めの一撃を放っていた。


 だらしなく顎が上がり口が開いたままのノルド、瞳孔は完全に開いて無様に死体を晒すその横で、ケインとエリーゼはしあわせそうにお互いを見つめ合っていた。



(ざまぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!!)



 こりゃ死んで当然だわ……。


 やっとラスボスになってしまったノルドが死んでくれて、すっきりした。しかもエリたんにられて!


 グビッ、グビッ! プハァァァーーーーーーッ!


 二人の復縁の祝杯を煽った。


「なにが車を壊して、売り上げ上げろだ。ふざけんな!」


 パワハラクソ上司にいびられ続けた社畜の悲しさっていったら、ない、マジでない。忙しさの余り、外に出る気力もなく一ヶ月ぶりの休日はエロゲをやって過ごすなんて……。


 それはまあいい。


 マジですっきりしたから。


 いやあっちの方も……。


 酒を煽って気が大きくなった俺。


 プルルルルルルルル♪ プルルルルルルルル♪


 ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪ ピコン♪


 スマホに鬼電、鬼ラインが着てるが無視だ!


 俺がケインに転生したら上手く立ち回って、ぜったいにノルドにエリーゼを寝取られないように頑張るんだけどなぁ。


 詳しくは語られていないけど、ノルドとケインのレベル差はかなりあった。はっきり言ってノルドのほうが強かったのに、エリーゼはわざとノルドに抱かれることによりノルドの精力を吸い取り、ケインの勝利に貢献していたっぽい。


 たとえ処女をノルドに奪われようとも身を挺して、ずっとケインを想い続けたエリーゼの献身に心打たれたプレーヤーは多かったようだ。


 カラン。


 俺の手から空になったストロング缶が滑り落ちた。


「いっひ、にぃ、すわん、ひぃ、ぐお、にゃにゃ……りょく」


 おっといけね、いま何本目だったか?


 机の下に転がった500mlの空き缶の数がまともに数えられない。ゼロ系ストロングは飲みやすいから、ついつい酒が進んでしまう。


 あれ? 地震か? んん? 脳が震える……いや身体も震える。ぜんぶ震えてるんだけど――――。


 くぅ……頭痛え……。


 あー、なんだか意識が遠くなってきた。電源落としてないけど、今日は寝落ちするか……。


         ・


         ・


         ・


「……さま、……さま起床のお時間にございます」


 なんだろう、頭が痛くて起きたくないな。


 ん? さま?


 社畜の俺をそんな風に呼ぶ奴なんていたか?


 いやいない!


 つか誰か起こしに来てくれたのか?


 いやそんな奴もいない!


「なんだこの頭痛は! こんな寝覚めの悪い朝はしらんぞ!」


 俺は重いまぶたを開けて、身体を起こしたかと思うと変な口調でしゃべっていた。


 目の前には白と黒のツートンのメイド服に身を包んだ美しき女性の姿。


「おはようございます、ノルドさま」


 メイドさんは俺の口調に動ずることなく笑顔であいさつする。彼女の顔には見覚えがあった。亜麻色の髪と優しげな垂れ目が特徴の女性で、ノルドの乳母ナニーメイドを務めたメイナ!


「は? ノルド……さまだと?」

「はい、ノルド・ヴィランスさま」


 彼女は俺に微笑みながら、はっきりと答えた。


 おいおいおい! どういうことなんだ!?


 きょろきょろと周囲を見渡すと天井は天蓋つきのベッドで、その柱は白く塗られ悪趣味とも思えるほど金銀で装飾されていて、まぶしさを覚えた。見知らぬ部屋の壁や調度品もベッドの柱同様、豪華な仕様だ。


 まさか俺はヘイトを一身に集めて、ざまぁされるノルドになってしまったというのかよ!?


(メイナさん、鏡はどこにありますか?)


「メイナ、鏡を持って来い! いますぐにだっ!」

「はい、かしこまりました」


 俺は自分を落ち着かせ丁寧に伝えたつもりだったのだが、なぜか強い口調で彼女に言っていた。


 この尊大な喋り方はやっぱり……。


 いや、まだ決まったわけじゃない。


「ノルドさま、お持ちいたしました」


 あわわわわ……。


 鏡には切れ長の碧眼にサラサラの黒髪、悪役のくせに目鼻立ちはすこぶる良く、イケメンすぎる顔が写っていた。


 ぽとり……。


 俺が鏡を力なくふわふわの羽毛布団の上に落とすとメイナさんが表情を変え、心配していた。


「ノルドさま!? いかがなさいました? またご尊顔のあまりうっとりされたのですか?」


 こいつはどんだけナルシストなんだよ!!!


 思わずメイナさんに突っ込みそうになったが口を噤んだ。ただ俺の知ってるノルドより幼いように思えた。


 たぶん学院に入学前なのかもしれない。


 だけど俺、このまま学院に入学すればエリーゼに殺されて、ざまぁされちゃうじゃん……。


 確実に来るであろう破滅に不安を覚え額を押さえて、うなだれているとメイナさんは不安げに呼びかけてきた。


「ノルドさま……お目覚めのおっぱいは飲まれますか?」


 は?


「飲むに決まっているだろう! 早く脱げ」


 なに言ってんの、俺ぇぇぇぇーーー!


―――――――――あとがき――――――――――

読者の皆さまはおっぱい好きですかー?

作者は大好きです!

最近ですね、おっぱいおしり論争に第三勢力が現れました。


その名も……、


_人人人人人人_

> ふともも!<

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


ということでライザが好きな方はフォローを、宝多六花が好きな方はご評価を入れていただけるとうれしいです。おっぱいどこいった?

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