第10話 ステータスオープン!

 寝起きからメイドさんのおっぱい吸ったり、妹の股間を舐めたり……転生初っ端から飛ばし過ぎだろ!


「ノルドさま、お着替えしましょう」

「ああ頼む」


 メイナさんが選んだ服を持ってきてくれたので俺は寝間着から着替えていた。マリィは飽きることなく俺の部屋にいて、スツールにちょこんと座り、脚をぱたぱた振って俺たちを見ている。


 姿見を見ると、フリル袖のシャツ、ジャボタイというふりふりしたネクタイに短パンと近世イギリス貴族の令息が着ているような出で立ち。


 まるで、勘違いし過ぎた七五三の衣装って感じで恥ずかしさがこみ上げてくる。


「ああっ! ノルドさま……」

「お兄しゃま……」


 メイナさんは頬に手を当て、ため息を漏らし、マリィはスツールからとんと飛び下りた。


 よほど服が似合ってなかったんだろう。


「なんと神々しいお姿! このメイナ……ノルドさまにときめいてしまいます」

「まりぃ、かっこいいお兄しゃまと結婚しゅる!」

「くくく、二人ともあまり俺を誉めるな。ただの取るに足らない事実だからなぁ~!」


 はぁ……ノルドは謙遜とか自重という言葉を知らないんだろうか? ため息を吐いて、姿見に映る自分の顔を見たら、確かに相当なイケメンであることは認めざるを得ないけど……。



 着替え終え、俺たちは朝食を取るためメイナさんが先導し場所を移したのだが、だだっ広い食堂ダイニングルームには両親の姿はなく、家族は俺とマリィだけ。


 元いた世界ならノルドは小学生、マリィは幼稚園児、まだまだ親が恋しいのに食事すら別々とはなぁ。


 まあ俺は中身がおっさんだから、寂しくはない。むしろ元いた世界のほうが独り身で寂しかった。


 メイナさんが椅子を引くとマリィは小さいながらも淑女といった気品ある所作で席につく。が、周りの様子を見て、がっかりしたのかうつむいていた。


 マリィを存分にかわいがってやろうと思う。


「マリィよ、顔を上げろ。一緒に食事すら取ろうともせぬ、父上母上などより俺を敬うのだ」

「あい! お兄しゃま! まりぃはお兄しゃまをいつもお慕い申しておりましゅ」


 全肯定妹がかわい過ぎる!!!


 こんなかわいい子を放っておける親の顔が見てえよ。


 衣食住さえ与えてやれば、問題ないと考える異世界での両親の精神的ネグレクトに憤慨しているとメイナさんがマリィの下へ寄るとマリィはメイナさんに抱きついた。


「マリアンヌさま、私でよろしければいくらでも甘えてくださって構いません」

「うん、メイナに抱っこされるとお胸がぽかぽかするの。メイナもまりぃって呼んでいいよぉ」

「ありがとうございます、マリィさま……」


 聖母が赤ん坊のころの聖人を抱くシーンよりも俺には尊い光景に思え、二人を見ていると仲むつまじい本当の家族のよう。


「メイナよ、一緒に朝食を取るぞ!」

「えっ!? ですが私はただのメイド……」


 端に控える執事と他のメイドたちの目を気にして、着席することを固辞しようとするが……、


「異論がある者はいるか? ある者は直に俺に言え! ないな、まあ当然か」


 俺は立ち上がり、シルクのようにキラキラした光沢のあるクロスの敷かれたダイニングテーブルに手をつきながら、召使いたちの目をひとりひとり見て回る。


 弛緩していた者は背筋をピンと伸ばし、また気圧される者、冷や汗をかく者など反応はさまざま。やはりというか意を唱える者は誰ひとりいなかった。

 

「というわけだ。座るがいい」

「ノルドさま、マリィさま……お心づかいありがとうございます……」


 まぶたにキラリと光る滴をハンカチで拭ったメイナさんは俺たちに一礼したのち、席に座ってくれたので右手のひらを上にして手を叩いた。


 俺の想いはノルドの傲岸不遜な言葉に変換されたものの、概ね一致していたことに彼が単なる悪役でないことが分かり、ほっとする。


 間もなく次々と運ばれてくる朝食に目を見張った。


 高級ホテルの朝食用クロワッサンのようなパリッとした生地のパンとスクランブルエッグとベーコンのような燻製肉を炙ったものと添え物の温野菜の二皿が出てくる。白磁と思われるお皿には金縁と美しい花柄があしらわれていた。


 そのあとに鍋を持った給仕のメイドからスープ皿に黄色くとろみのついたスープが注がれている。


 俺が手をつけようとするとメイナさんとマリィは手を組み祈りを捧げているうだったので俺もそれを真似た。


 うまいうまい!


 朝食だけにことさら豪華とまでは言えないがケインの家庭のスチルを見る限り、庶民とは雲泥の差だった。ケインはやたらとパンがパサついて不味いと連呼していたし。


 なにより時間を優雅に使い、ゆっくり食事できるのがうれしい。


 俺は美味しい食事を作ってくれた料理人に感謝の言葉を伝えたくて、近くにいた執事さんに声をかけた。


「おい料理長を呼べ! 奴に俺は言ってやりたいことがある」

「かっ、かしこまりました! すぐに」


 彼は俺に一礼してスタスタとした足取りで食堂を出る。そのあと廊下を物凄い勢いで駆けてゆく足音が聞こえた。


 そんなに慌てる必要はないのに。


「はっ、はっ、はっ……なんでございましょう、ノルドさまっ。お食事がお口の召さなかったのでしょうか?」


 それから一分も経たないうちに白いコックコートを着て四十代と思しき小太りの男性が小脇にコック帽を抱えて俺の前に跪く。走ってきて滝汗をかき血行が良くなっているはずなのに彼の顔は青ざめている。

 

「おまえはこんな食事を俺に出してどういう申し開きをするつもりだ。答えてみろ!」

「ひいっ! 申し訳ございません、ノルドさま! すぐさま作り直しを……」

「違う! 美味すぎるのだ!」


 俺はただ作ってくれた人にお礼したかったのだが、どうしても物言いが大げさになる。


「は?」


 料理長の目は点になり、なにを言われたのか意味が分かってなさそうだった。しばらくして、俺の言葉の意味がじわってきたのか目に彼は涙を浮かべる。


「ノルドさまより幼きころよりヴィランス家にお仕えして、数十年。初めてお褒めいただくことができました。このメタボル、ノルドさまに生涯美味い食事をお出しすることを誓います」


 感極まって大粒の涙を流すメタボル。


 執事やメイドたちが彼を囲み、「よかったな」などと声をかけていた。感動的なシーンなんだろうけど、俺はただ食事が美味いと言っただけ……。


 あれかな? エヴァの最終回の『おめでとう』みたいな大げさな雰囲気。

 


 ぼふっ。


 朝食を終え、ベッドに倒れた。


 さすが王国筆頭の公爵家といったところか。あのあとメタボルが張り切りすぎて朝から胃もたれしそうなくらいの豪華な食事が振る舞われたのだから。


 ノルドの女癖の悪さとその原因については、なんとなく分かった。ノルドの家庭環境イコールこのエロゲ世界の標準なのかまではもうちょっとくわしく調べてみないと分からないけど。


 メイナとマリィ……どちらもかわいいのだが、10歳の男子にあの二人はけしからんすぎる。


 頭の後ろで手を組んで考えに耽っていた。


 ノルドがエリーゼ欲しさだけで、マグダリア伯爵家をつぶしたわけじゃない。伯爵家が没落したのは貴族同士の政争の煽りを食ったからだ。


 俺がノルドとして話そうとすると彼の言葉に置き換わってしまう。いわゆる修正力って奴なのかもしれない。


 まずは家族関係の再構築と俺自身の強化!


 王立勇者学院に入学し、俺にナイフを突き立て止めを差すエリーゼとケインと出会い、クラスメートになるまで、残り4年余り。


 なら現状を確認しておこうか。


「ステータスオープン!」


 俺が異世界あるあるを試すと部屋のチェストがぶるぶると震えていた。ベッドから起き、震えている引き出しを開けるとギルドの登録証なのだろうか? カードから文字が浮き出て光っていた。


―――――――――あとがき――――――――――

ノルドカードはクロウカードとさくらカードと併用できます! ウソです。

ところで知世ちゃんはかわロリだから許されてるけど友だちをずっと撮ってたら、ヤバい娘だよね、と思った大きなお友だちはフォロー、ご評価お願いレリーズ!!! プリーズだったわ( ´艸`)

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