大当たり終了

「おおっと、今度は赤保留がキター。これはアツいでしょう」

 パチンコ台の前で男は興奮している。朝から打っているのになかなか当たりを引けずにいたが、お昼ご飯のカツ丼を食べ終えてから、ようやく調子が出てきたようだ。

「スーパーリーチで、セリフも赤だ。これで役物が落ちてきて、カットインが赤以上なら激熱なんだけどなあ」

 激熱表示が出た。役物が完成し、PUSHボタンが迫り出した。

「お、これは当たったでしょう」

 勢いよくボタンを叩くと、777揃いで確変の大当たりを引いた。

「うひょう、こいつは春から縁起がいいぜ。おーい、ホットコーヒー頼むよ、ホットコーヒー」

 男にホットコーヒーが供された。ただしレギュラーではなくて、インスタントの安ものだった。

「おいおい、インスタントじゃねえかよ。ちゃんとしたもの出せよなあ。ケチくせえぞ」

 大当たりは連続していた。派手なBGMが鳴り響き、パチンコ台の電飾がピカピカ光っている。

「やったー、二十連ちゃんだぜ。こんなに当たったのは初めてだ。もう死んでもいいな、へへへ」

 二十二回連続して大当たりを引いたところで終わってしまう。男の首に縄がかけられた。

「おいおい、まだSTが百回残ってるんだ。引き戻すんだから慌てんじゃねえ」

 大当たり後、百回転は持ち球が減らないスペシャルタイムだ。ここで当てられれば継続となる。

 刑務官の手が男の肩を叩いた。壁に設置された三つのボタンの前に、三人の刑務官がスタンバイする。

「あ、チクショウ。ST抜けやがった」

 スペシャルタイムが終了となった。刑務官たちの指がボタンに触れる。

「ちょちょちょちょ、待って待って。保留がまだ四つあるからさあ」

 男は顔面蒼白な状態だ。ハンドルを握る手がガタガタと震えて、失禁までしていた。

「け、権利なんだ。死刑囚は好きなことをやり終わるまで生きる権利があるんだぞ」

 刑法が改正されて、可能であれば死刑囚の最後の希望はかなえられる。男は大好きなパチンコで大当たりを体験したいと申し出て、許可された。

「ああ、くっそう、保留もダメか。あと二つ、あと一つ、ああーー、もうダメだあ」

 保留がすべて消化された瞬間、床が開いて男が落ちた。刑務官が高らかに宣言する。

「四十九番台さま、大当たり終了~、大当たり終了でございます」

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