第141話 穏やかな休日……?

 作戦会議が終わった後、私たちはその場で解散した。


 エルスター辺境伯との面会まで、クランとしての活動は一旦お休み。クラメンには好きな休日を過ごしてもらうことにした。


 スピカとガーネットは外を遊び歩き、レファーナとキサナはアイテムや装備製作のためお買い物。


 フィオナとアリアンナは、庭で炎竜団と模擬戦をしているようだ。


 が、リーダーの私は……陽の出ている内からベッドでゴロゴロとしている。


 仰向けになりながらドラゴパシーを眺める姿は、休日にやることのない暇人そのものだ。


(ドラゴパシーもスマホの代替品ではあるけど、ゲームや動画サイトがあるわけじゃないしねぇ……)


 無線通信が出来ても、娯楽はまだ流通していない。


 ドラゴパシー自体が庶民の手に取れる価格にならない限り、娯楽が提供されるのもしばらく後になるだろう。


 ちなみに開発者であるエルドリッヂは、エレクシアにある自分のクランへ帰っている。


 その際、私たちに二台のドラゴパシーをプレゼントしてくれた。


 私たち戦闘種が持ち歩ける用の一台と、生活種のレファーナたち用で一台だ。


 これがあればダンジョンでも遠方でも気軽に連絡が取れる。今後の活動にも役立ってくれるだろう。


 ちなみに現在登録している連絡先は七つ。


 リブレイズ(生活種)、マイニューギア、錬金商社エルドリッヂ、聖火炎龍団、ネオ・あたたか牧場、マリオット商会、そして……エレクシア本聖堂だ。


 本聖堂の連絡先はエルドリッヂから教えてもらった。まだ購入者が少ないこともあって、双方が望めば連絡先の交換を仲介してくれるようになっている。


 そして連絡先を交換した後、教皇とマチルダにビデオ通話をセッティング。スピカとの顔合わせをセッティングしてあげた。しかし、これが良くなかった。


 なぜなら前回のダンジョン配信で、スピカは魔王の鉤爪を装備して大暴れ。公衆の面前で「はーっはっはっは! 死ね死ね、魔物どもー! スピカが成長するための血肉となるがいいっ!」とか言っていた。


 そのため大聖女の在り方についてマチルダのお説教が始まってしまい、スピカが中指を立てて強制終話という散々な結果に終わった。


 スピカの反抗期(?)が終わるのも、まだまだ先になりそうである。



 ――と、ここで時間もあることだし、久しぶりにお金勘定の数字を整理しておこう。


 前回はパルシャナのバザーでコラプスロッドの在庫を売り払い、飛竜タクシーの初期費用を完済した。


 ようやく飛竜タクシー運営の分配益もリブレイズに還元される。


 あの時点での所持金は5108万クリル。あれからの推移をドラゴパシーの電卓アプリで算出してみよう。



☆☆☆

 所持金:5108万クリル



 終末剣製作における、工場貸切費用 -100万クリル

 聖火炎竜団への護衛依頼 -500万クリル


 Sランクダンジョン・桜都踏破報酬 +3億クリル

 ルキウス逮捕による事件解決金 +1億クリル

 歯車組の残ったトライアンフの買収(支援)費用 -4億クリル

 ダンジョン配信における、ドラゴパシーの宣伝収入 +11億クリル


 リブレイズ・スタメンのお給料 -300万クリル×6人

 ノボリュの食費 -400万クリル

 レファーナの雇った従業員へのお給金 -600万クリル

 食費・宿泊費・雑費  -70万クリル


 飛竜タクシーの分配益(初) +2億クリル



 現在の所持金:13億1638万クリル

☆☆☆



 ドラゴパシーにこれまでと桁違いの数字が表示され、口元にニチャァという笑みが浮かぶ。


 ダンジョン配信のプロモーションで11億もらえるとは聞いてたが、飛竜タクシーの分配益で2億も入ってきたのは想定外だった。


 しかもこれは一回こっきりの数字じゃない。今後、毎月入ってくる収益だ。


 しかも飛竜タクシーはまだ発展途上の事業である。大陸全土に飛竜発着場が増えるほど、入るお金も右肩上がりに増えていくだろう。


(まさかゲームではただの移動手段だった飛竜タクシーが、こんな大金を生み出してくれるなんてねぇ……)


 レファーナが当初からこだわり続けてきたワケだ。お金の事だけを考えれば、私たちはもう働かなくても生きていける。このお金を見てレファーナが引退するとか言い出さなければいいんだけど……


 そんなことを考えていると、寝室の扉がトントンと叩かれる。――このノックの力加減は、きっとフィオナかな。


 一緒に過ごすうちに廊下を歩く音や、ノックの音でもそこに誰がいるかわかるようになってしまった。


 些細な気付きではあるけれど、こんな気付きこそが家族クランっぽいな、と感じてしまい胸がちょっぴりこそばゆい。


 私が「はーい」と返事をして入室を許可すると、入ってきたのは予想通りフィオナと……予想外のアリアンナが入ってきた。


「あれ、アリアンナも一緒だったんだ?」

「あ、ああ。実のところ用があったのは私ではなく、アリアンナ嬢の方で……」

「行くわよ、盗賊」

「行くって……どこに?」

「決まってるじゃない。Sランクダンジョン、奈落よ」

「ええ!? 今から?」

「そうよ。アンタもヒマそうだし、いいでしょ」

「別に悪くはないけど……何層まで潜るつもりなの?」

「行けるところまで」

「無計画すぎん!? それに今はスピちゃんも出かけてるし、キサナちゃんも錬金中で……」

「そんなの、私たちだけで行けばいいじゃない」

「で、でも私たち三人だと回復役ヒーラーがいないでしょ? なにかあった時に困るんじゃない?」

「大丈夫。家主の妹がついて来るから」

「家主の妹って……」

「は~い。家主の妹こと、賢者のアイシャで~す」


 アリアンナ達の後ろから顔を出したのは、炎竜団の回復役ヒーラーでルッツの妹。マイペース賢者のアイシャだった。


「実は私もリオさんたちと一回探索してみたかったのよね~。奈落も二十層より先まで潜ったことないし、たまには奈落で女子会もいいかな~って」

「じょ、女子会なら奈落でしなくてもいいのでは……?」

「でも同じ冒険者同士、共通の話題があったほうがお話も弾むでしょ? だったら奈落で親睦を深めるのが一番よ~」

「なるほど、わからん」

「ゴチャゴチャ言ってないで行くわよ。ほら早く常時ダッシュを起動しろっ!」

「起動しろ~!」

「ひええええええっ!?」


 こうして私たち四人は突如、アイシャ含めた四人で奈落へ潜ることになった。



―――――



☆☆☆


 名前:アイシャ

 第一才能:賢者(レベル:75)

 第二才能:呪術師(レベル:52) ※最近獲得


 冒険者ランク:A


【アイシャの装備品】

 聖霊石の杖(A+) 使用時「癒しの雨」発現可能

 イノセンス・ローブ(S) 聖魔法・回復魔法の効果20%効果上昇

 エンジェリックリボン(A) 全状態異常無効

 恵みのロザリオ(A) 魔力自動回復(中)、消費魔力軽減(小)


【習得スキル】

・回復魔法【LV:12】

・聖魔術【LV:10】

・弱体魔術【LV:8】


浄化クリア

霧散ディスペル


・弱体成功率【LV:6】

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