第89話 久しぶりのノボリュ君と、砂漠のバザー

 鍛冶工場にアダマンタイトを預けた後、私はノボリュの待つニコル発着場へ向かった。


 ノボリュは近くの飛竜たちと雑談していたが、私を見つけるとすぐさま話を切り上げた。そして私を背中へ乗せると、大急ぎで空へと飛び立った。


 そして飛竜たちの姿が遠くなったことを確認すると、まくし立てるように話し始める。


「聞いてくれ、リオ! 最近は桃竜とうりゅうが、よく笑ってくれるようになったのだ!」

「本当にっ? じゃあデートも大成功ですか?」

「デートの成功、がどのようなものかはわからないが……悪くはなかったように思う」

「えー、詳しく教えてくださいよぉ」


 自分のことを話したがるなんてかわいいな、と思いながらノボリュの話に耳を傾ける。


 奈落の長期探索でしばらく話が出来なかったため、今日は移動がてらノボリュとたくさん話す時間を用意した。


 ちなみに移動先はエレクシア南東に隣接する、パルシャナという砂漠国家である。この国のバザーでしか手に入らない素材があるため、それを買うためひとっ飛びしてもらうことにした。


 ノボリュと桃竜の話に耳を傾け、軽い感想を交えて談笑する。ノボリュには少し抜けているところもあるせいか、桃竜はそこにかわいさを見出しているようだ。


 やはり共生という選択をしたことで、つがいになるフラグは立っているようだ。しかもゲーム上では詳しく語られなかった小話が、ノボリュ本人の口から語られるのは聞いていて面白い。


 そうして話を一通り聞き終えると、今度はノボリュがこんなことを聞いてきた。


「しかし冒険者というものは意外と忙しいのだな。ダンジョンから帰ってきたばかりなのに、また次のダンジョンへと潜るのか?」

「こんなに連続でもぐるのは稀ですけどね、ちょっと人間同士のしがらみもありまして……」


 意外にもノボリュは私の話を聞きたがったので、トライアンフ関連のことを軽く話してあげた。すると大きなため息をひとつ。


「は、呆れたものだな。まともに戦って勝てないから、弱ったところを襲撃しようとは。戦士の風上にもおけない愚かさだ」

「ねー? だからその状況で返り討ちにしようと思ってるんです」

「ハハハ! 奇襲した相手に負かされるほど、屈辱的なこともないであろうな。……しかし人間社会は面倒だな。そのような卑劣な集団でさえ、真っ向から潰すことができないとは」

「人が多い分だけ、色々とルールがあるんですよ」

「しかしそのためにリオたちは、わざわざ奇襲を待たねばならないのであろう? なんとも不可解なルールだ」

「……まあ、そうですね。でも奇襲程度じゃ私たちは負けませんよ?」

「当然だな。我の攻撃をしのいで見せたリオたちが、たかが奇襲程度で負けるはずがない」


 刃を交えた経験があるからか、ノボリュは私たちの力を認めてくれているらしい。 


 負けるはずがないとまで断言してもらえると、少しばかりあった不安が吹き飛んでいくようだ。


(でも勝率を0.01%でも上げられる努力は、しっかりしておかないとね!)


 私はパルシャナの発着場でノボリュから降りると、一目散にバザーへと向かった。


 そこでいくつかの素材を購入し、奈落で集めたアイテムも売却することにした。ちなみに奈落で回収していたアイテムは以下の通り。



☆☆☆


・二十九層レベリングにて回収

毒消し草 ×47

カプサイシン ×15

猛毒草 ×41

エンジェリック・リボン(A) ×11

回帰の針 ×44

エメラルド ×8

石つぶて ×39

マーブルブレード(C) ×8

地熱の杖(C) ×38

ブレイズブレイド(A+) ×10

火遁 ×48

炎ダンジョンのタネ ×7


・三十六層レベリングにて回収

銅の錠前 ×35

鉄のインゴッド ×2

砂金 ×45

ミリオン・データ ×17

皮のムチ(E) ×40

デモンズシールド(A) ×11

サタンマスク(A) ×44

深淵のリング(A) ×8

炎のリング(B) ×37

ブレイズブレイド(A+) ×11

炎進化の結晶 ×43

煉獄外套(S) ×10


・ボス戦

オートボウガン(A) ×40

ギャラルホルン(S) ×12

鉄鉱石 × 47

オリハルコン ×19

光の石 ×27

闇の石 ×3

魔王のタキシード(S) ×1

悪魔のしっぽ ×5

人喰らう鉤爪(S) ×1


☆☆☆



 この中でも以下の希少な錬金素材や、レア装備などのいくつかは残しておく。



☆☆☆


・残したアイテム

火遁 ×48

炎ダンジョンのタネ ×7

銅の錠前 ×35

鉄のインゴッド ×2

デモンズシールド(A) ×1

深淵のリング(A) ×3

炎進化の結晶 ×43

煉獄外套(S) ×3

ギャラルホルン(S) ×12

鉄鉱石 × 47

オリハルコン ×19

光の石 ×27

闇の石 ×3

魔王のタキシード(S) ×1

悪魔のしっぽ ×5

人喰らう鉤爪(S) ×1


☆☆☆



 上記以外の物はすべて売り払った。


 もちろんまとめて売ると売却値が下がるので、パルシャナを出た後にも各地の買取屋で分散している。


 だがその過程を説明してもまどろっこしいので、最終的にいくらになったかだけ先に記しておこう。


 今回の探索で得た収入、その合計……6294万クリル!


 手持ち金は7734万クリルだったので、これで1億4028万クリルの手持ちとなった。


 これまでとは桁違いの稼ぎだ。


 特にAランク装備をたくさん回収できたのが大きい。Aランク装備は平均、20万クリル前後の売却値がつく。今回売り払ったA以上の装備は131個なので、ざっくり計算しても2620万クリルになったはずだ。


 おまけに売却用アイテム、ミリオンデータは17個拾えているので+1700万。これまでにない回収額にホクホクだ。



 また散歩ついでにバザーをぶらぶらしていると――私のクラジャンセンサーが、ビビッと反応。ターバンを巻いた商人が、見慣れない武器を売っているのが目に入る。


「ハイ、みなさん! こちらはとあるダンジョンから回収した、世にも珍しい短剣です」


 陳列された短剣を目にした私は……まさかと思い、その場で『掌握眼しょうあくがん』を発動。それがであることが確定すると、興奮のあまり声が出る。


「やばーーーっ! 未実装レアじゃん!?」


 物の価値に気付いた客が来たと、商人がキラリと目を光らせた。

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