第75話 奈落三十層ボス、人工災厄・ラグナレク
二十九層でレベリングを始めて三日。
毎日八時間ほどの鍛錬をかさね、私たちのレベルは以下のように成長した。
☆☆☆
名前:リオ
第一才能:盗賊(レベル:100)
第二才能:竜騎士(レベル:50)
第三才能:忍者(レベル:1→91)
残りスキルポイント:517→787
☆☆☆
名前:スピカ・ハルシオン
第一才能:大聖女(レベル:21→29)
残りスキルポイント:0→24
☆☆☆
名前:フィオナ・リビングストン
第一才能:魔法剣士(レベル:80→98)
第二才能:氷魔術師(レベル:80)
第三才能:風魔術師(レベル:76→80)
残りスキルポイント:93→159
☆☆☆
名前:キサナ
第一才能:僧兵(レベル:75→90)
第二才能:錬金術師(レベル:70)
第三才能:魔道弓兵(レベル:1→58)
残りスキルポイント:1835→2051
☆☆☆
軽く注釈を入れておくと、私とスピカの二人パーティはキサナたちよりたくさんの経験値を獲得している。理由はレベリング環境が違いすぎるせいだ。
私にはアサシンダガーの即死があり、またエレクシア法衣を着た
一方キサナたちのパーティは、真っ向からのレベリングだ。抜け道的な手法もなく、経験値もジェラルドと三分割。バラつきが出ているのはこのためだとお伝えしておこう。
……で、今回のレベリングで意識した点などについて!
まずフィオナとキサナには、メイン才能レベルを中心に上げてもらった。理由は来たる三十層ボスに向け、ステータスの最高値を少しでも底上げするためだ。
おかげで二人ともレベル100は目前だ。私の盗賊レベルも長いこと止まっているし、そろそろ本気でレベル上限の解放を急がないと。
ちなみに私が竜騎士より忍者を優先して上げたのは、マスタースキルが一刻も早く欲しかったからだ。忍者のマスタースキルがあるかないかで、今後の盗む効率もだいぶ変わってくる。
そしてスピカは念願の新スキル――
具体的には敵全体に攻撃・防御30%ダウン、幸運値激減(回避率低下・被クリティカル率上昇)そして混乱+猛毒+魅了+麻痺の状態異常を付与。
おまけにかけられたターンの攻撃は、回避不可の確定クリティカル。これでもかという、イヤがらせの全部盛りだ。
ちなみに正規ルートで獲得するためには、聖女レベル110か
ボス相手に状態異常はほとんど入らないが、攻守ダウン・幸運値激減が入れば戦闘は有利に進められる。終盤のボスには必須級の補助スキルだ。
「こっちが先かぁー。スピカ、破壊の方が先に欲しかったなぁー」
「ごめんね? 三十層を越えた後のレベル上げで、ちゃんと破壊も取らせてあげるから!」
「約束だよ、リオちん?」
「まかせろスピちん!」
そんな軽いやりとりをしつつ、私たちはボスと戦うときの作戦を練る。
なぜなら三十層ボスは、鬼強いからだ。
なにせ
スピカに『天罰』から取ってもらったのもそのため。高すぎるステータスを少しでも落とすため、早めに弱体を入れる必要がある。
また今回のレベル上げでスキルポイントも増えたので、強化もしっかりとやっておく。
☆☆☆
リオ
・素早さ上昇【LV:8】(新規獲得)80pt消費
フィオナ
・攻撃力上昇【LV:10→12】40pt消費
キサナ
・回復魔法【LV:1→12】(新規獲得)150pt消費
・攻撃力上昇【LV:10→12】40pt消費
☆☆☆
「キサナちゃん、ごめんねー。せっかくプールしてたポイント、回復にまわしてもらっちゃって……」
「気にしなくていいよぉ。このままじゃさすがに回復手段が手薄だからね。それにボクは性格的にもサポート向きだし」
ということで、キサナには回復魔法のスキルを獲得してもらった。僧兵は『戦闘も出来る僧侶』なので、回復魔法も覚えられる。
スピカも回復魔法は持っているが、継続で小回復を入れる『癒しの雨』と『回復魔法【LV:2】』と心許ない。
これから強い全体攻撃を使う相手も増えるので、素早い立て直しをするためにも大回復持ちが欲しかった。キサナほどのプレーヤーなら、回復タイミングを誤ることもないだろう。
これで準備はカンペキ。強化と作戦も固まったところで……私たちはボス部屋の扉を押し開ける。
ボス部屋は二十九層までと変わらず、
――が。部屋の中央には、場違いなモノがたたずんでいた。
それは四足歩行のロボットだった。機械で出来た体にはわずかに
瞬間。ロボットがキュインと小さな音を立て、青く光らせたセンサーをこちらに向けてくる。するとセンサーは青から赤に色を変え……戦闘モードへ移行。
機体のいたる場所から無数の砲門が開き、開口した一部の穴からは関節付きのアームが飛び出した。伸びたアームの先には剣やチェーンソー、斧やトゲ棍棒などの武器が握られており、侵入者を殺すという絶対的な意志が感じられる。
そして嵐の前の静けさを挟み――私たちは殺戮マシンとの戦闘を開始した。
名前:
ボスランク:S+
ドロップ:オートボウガン(A)
レアドロップ:ギャラルホルン(S)
盗めるアイテム:鉄鉱石
盗めるレアアイテム:オリハルコン
私が『挑発』で注意を引き付けると、赤のセンサーがこちらを向く気配。息をつく間もなく灼熱の
体をひねって交わすことはできたが、ラグナレクは続けて三つの追尾ミサイルを発射。ミサイルは宙で軌道を変え、まっすぐにこちら目がけて突っ込んでくる。
(っ、手数が早いなっ!)
私は投げる予定だった忍具を「
電気の弾幕で二つのミサイルは撃墜できたものの、残ったミサイルの追尾が止まらない。私は二つ目の雷迅を投げようとポーチに手を突っ込んだが……その肩に次の熱線が直撃。
「―――ぁつっ!?」
あまりの激痛に声にならない声が口から出る。
が、被弾にうめいている時間もない。この瞬間にもミサイルは迫っている。しかも遠くではラグナレクが更に三本の追尾ミサイルを発射している。
想定より遥かに早いラグナレクに焦りを覚え始める。素早さ上昇LV8では足りなかっただろうか……って、後悔してる余裕なんかない!
私は焼かれてない方の手をポーチに突っ込み、次の雷迅に手を伸ばす。
しかしミサイルの着弾の方が早い。私はミサイルの直撃に備え、目をつむって歯を食いしばる。が――
「リオをいじめるなっ、
スピカの声と共に、空から無数の破壊光線が降り注ぐ。
直撃コースのミサイルは光に焼かれて誘爆。新しく打ち出されたミサイルも、離れた位置で撃墜されていった。
「一人で気負うなっ! 俺に任せろ!!」
炎竜団の助っ人、ジェラルドが代わって挑発を打ち込んだ。
すると殺戮マシンは標的を替え、大盾持ちのジェラルドに熱線を発射。高熱によるダメージは受けているものの、熱線は大盾を貫通することなく最低限のダメージで済んでいるようだ。
私はその間にブーストポーションで被弾した肩を回復。続けて挑発後に投げる予定だった忍具、『トリモチ』をラグナレクに
強力な粘着物質を浴びたラグナレクの動きが、少しばかり鈍くなる。
続けて吸収覚悟でフィオナが
――これでラグナレクは、二段階の素早さ減少。
私が避けている間にスピカも『天罰』を付与していたらしく、攻守ダウンの弱体効果も入っていたようだ。……これでようやく、ラグナレクと戦える状態にまで落ち着いた。
(……今回ばかりは、本気でヤバかったな)
スピカとジェラルドの支援がなければ、もっと手ひどいダメージを負っていたかもしれない。
慢心したつもりはなかったが、現実で見るとラグナレクの早さは想像以上だった。次に戦う時は初手挑発ではなく、トリモチ投げを優先しようと心に誓う。
――これがラグナレクの恐ろしさだ。生半可な攻撃は通らないほど硬く、回避値も高い。しかも全属性攻撃を吸収回復。
スピカの使ってくれた
そのため今回は無属性や通常攻撃で攻めなければいけない。スピカには一切の攻撃手段がないため、回復魔法と『天罰』での補助にまわってもらっている。
フィオナも聖属性武器のホーリーブレイド(A+)ではなく、出会った時に装備していたプラチナムキャリバー(A)に戻してもらっている。もちろん魔法剣も使えないので素殴りを打ち込んでいくしかない。
一番のダメージソースはキサナの鉄球攻撃だ。スキル『かぶと割』で追加の防御ダウンも入れれば、魔法剣を使えないフィオナでもいくらかダメージを通せるようになる。
こうして弱体を重ね掛けすることで、ようやく戦えるレベルに落ち着けられる。四十層ボスより楽な点がおおよそ見つからない。
回復を終えた私はようやく戦線に復帰。気付けばジェラルドは接近戦に持ち込まれており、大盾に三本のチェーンソーを振り下ろされている。……地獄のような光景だ。
あんなのを相手するのは恐ろしいけど……今度は私が盾を変わらないと。素早さ弱体が入った以上、先ほどよりはうまく立ち回れるハズっ!
「ジェラルドさん、代わりますっ!」
私は挑発でふたたび殺戮マシンの注意を引き付け、後半戦へと突入するのであった。
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