第71話 炎竜ハウスでの合宿、第三才能の獲得に向けて!

 冒険者ギルドでガーネットの勧誘をした後。私たちはノボリュの背に乗って、聖火炎竜団の屋敷へと向かっていた。


 まだガーネットから返事は聞けていない。グレイグの許可が出るとも限らないし、ガーネット自身にも考える時間が必要だと思ったからだ。


「リオにしてはめずらしく、おとなしく引き下がったのう?」

「さすがに急過ぎましたからね。それにあまり説得にかける時間もないですし」

「それでもリオはしつこく食い下がると思うたぞ。アチシの時にも言うたじゃろ。そんな簡単にあきらめたりできない、とな」


 言った。


 あっさり引き下がったら、誰でもいいから誘ったみたい。簡単にあきらめたら逆に失礼――そんな考えの元に勧誘した。


「ガーネットさんのこともあきらめたくはありませんよ? でもニコルに滞在できるのは一ヶ月です。既に出来た居場所リブレイズを守るための行動も、疎かにできませんからね」

「……じゃな。一ヶ月という時間で出来ることは少ない、その間にやれることはすべてやっておかんとのう」


 トライアンフとの約束は一ヶ月。


 私たちはその間に鍛錬を重ね、トライアンフとの戦闘で必ず勝てる強さをつけなければならない。今回はそのために帰ってきたのだから。




 ノボリュが炎竜ハウスに降り立つと、屋敷の主たちが私たちを出迎えてくれた。


 だいぶ健康そうな顔色に戻った炎竜団四人と、メイドたちだ。


「みなさん、お久しぶりです!」

「久しぶりだな、リオさん。ちょっと合わないあいだに、ずいぶんと有名になったみたいじゃないか?」


 私は炎竜団のリーダー、ルッツと握手を交わして微笑み合う。


「飛竜の王を仲間に加え、才能継承の方法まで発見。もうニコルの英雄じゃなくて、世界の英雄になっちまったな」

「英雄なんて言うほどのことはしてませんよ。ただみんなにチャンスが配られたらいいな、と思っただけです」

「素晴らしい心がけだと思う。おかげで俺たちも弟子の指導で大忙しだ」


 炎竜団の体調はだいぶ快復してきたため、リハビリがてら師弟契約の継承で生計を立てているらしい。


 Sランクパーティの彼らはかなり人気が高く、既に二か月先まで継承予約が入っているとか。


「いまも弟子たちを少し待たせている。悪いが積もる話は夜でもよかったかな?」

「はいっ! お忙しいところ出迎えてもらってすみません」

「リオさんは命の恩人だ、最低限の礼儀だよ」


 そう言ってルッツたちとはそこで別れ、私たちは炎竜団ハウスに荷物を置かせてもらうことにした。


 メイドたちの案内の元、私たちリブレイズには三つの部屋を貸してもらえた。


 ひとつは唯一の男性メンバー、キサナの部屋。自分一人のためにこんな大部屋を貸してもらえるなんて、恐縮して震えあがっていた。


 もう一部屋は私とフィオナとスピカの部屋。そして最後はレファーナの一人部屋だ。レファーナだけなぜ一人部屋かというと……


「アチシはこれからニコルの発着場に出ずっぱりになる。帰らない日もあるかもしれん、であれば三人一部屋のほうが楽しかろう」


 とのことだった。


 レファーナは飛竜タクシーの内部をよく知る重役だ。しかもニコルはレファーナにとっても縁のある土地だ、であればしっかりと整備を手伝ってやりたいとの事らしい。


「あまり無理はされないでくださいね?」

「ああ、リオこそレベル上げの途中でぽっくり死んだりせぬようにな?」


 そう言ってレファーナはメイドの一人をお供につけて、発着場予定地に向かって歩いて行った。



 ――こうして私たちリブレイズは、一ヶ月の”合宿”を開始した。


 合宿を開始する前に、今後の予定についておさらいしておこう。



 まず一週目。この期間で私とキサナは、師弟契約で第三才能まで習得する予定だ。


 私は既に第二才能として『竜騎士』を獲得させてもらっている。


 これはレベル50まで育ったライデンを師匠に、ノボリュで各国を移動しながらの『下働き』で習得した。


 また移動中に立ち寄ったダンジョンで、細々とソロレベリングをして竜騎士もレベル50まで上げきっている。これで第三才能を獲得する準備はOK。


 ちなみに獲得予定の才能も決まっている。キサナは『魔道弓兵』で、私は『忍者』だ。


『魔道弓兵』は炎竜団のシャーリーが取得しているので、これを師匠に師弟契約の予約を入れさせてもらった。


 取得理由は弓兵の持つスキル『命中率上昇LV』を獲得するため。これはキサナの持つ武器、マスターキー(S)と呼ばれる鉄球装備の命中率を上げるためだ。


 鉄球は複数体に攻撃ができて高い攻撃力を持つ、が命中率に難がある。この命中率を上げてもらおうと考えたからだ。


 必然的にキサナは今後、鉄球の超破壊力で活躍してもらうことになる。魔道弓兵として別のスキルを取るかは検討中。必要なければポイントはさらにプールさせる予定だ。


 ……ちなみにキサナも攻撃に回ることで、パーティーがアタッカーばかりになっている。この問題については今後対策をする予定だ。



 そして私が『忍者』を取得する理由は、『忍具』というスキルを獲得するためだ。


 忍具は獲得することで「手裏剣しゅりけん」や「火遁かとん」などの特殊アイテムが使用できるようになる。


 だが忍具の攻撃アイテムは使い捨てだ。頼ってばかりいると結構な費用がかさむ。


 しかし逆に考えればお金しか使わない。


『魔法剣【LV】』や『盗む成功率上昇【LV】』などの習熟LVを上げなくても強いので、スキルポイント効率に優れている。


 MMORPGはやりこむにつれてお金はあまり始める。であれば別の才能にポイントを突っ込む可能性を考え、多めにプールできる忍者を選択することにしたのだ。


 ちなみに私の師匠になってくれる、忍者の先生は――




「リオ様、お待たせしました」


 私が部屋でくつろいでいると、軽いノックと共に抑揚のない声がお伺いを立ててくる。


「どうぞー」


 すると以前も炎竜ハウスでお世話になった、無表情のメイドが一礼と共に名乗り出る。


「ご無沙汰しております、リオ様。わたくしはメイドのメイトラ。ルッツ様の命により、今日より忍者の才能継承をお手伝いさせていただきます」

「はいっ、よろしくお願いします!」


 こうして私は女忍者――くノ一としての人生も、歩み始めたのだってばよ!




―――――



 しばらくダンジョン探索がヌルゲーだったので、これからレベル上げやステータスのお話をガッツリやる予定です!


 また今回より更新頻度を三日に一度へ変更します、なにとぞご了承ください……!

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