第62話 Aダンジョン竜峰と、ライデンのレベル上げ

 竜峰りゅうほうは山のダンジョンだ。


 普通のダンジョンとは違って、深層へは下りていくのではなく登っていく必要がある。


 また普通の山登りと違ってここはダンジョンだ、足を踏み入れると同時に大広間のようなフロアが目の前に展開。


 だが私とキサナ以外、これに驚く人はいない。自然とダンジョンを受け入れてしまえるのが、この世界の価値観だ。


 足を踏み外して滑落するということもないようだ。だがこれまでのダンジョンと大きく違う点が、私たちを大いに苦しめた。


 それは次の階層へ行くためには、長い階段を必要がある。


 つまり、めっちゃ疲れる。



「疲れたぁ~! リオ、おんぶして~!」

「私だって疲れたよ……もう少し、がんばれない?」

「やだ、無理ぃ~! キサナおんぶ~~!」

「は、はいぃぃぃ!!! ただいま!」


 キサナはこの中で最も(肉体的に)年長だが、リブレイズでは先輩のスピカに逆らえない。あっさりとわがままを受け入れ、肩車をしてしまう。


「キサナもあんまり甘やかしちゃダメだよ~?」

「で、でもっ、スピカ様は大聖女だし先輩だし、ボクは聖堂から逃げたはぐれ牧師ですし……」

「いまはもう私たちの仲間なんだし、もうちょっと自信持ちなよ~? スピちゃんもあんまりキサナいじめないでね?」

「いじめてなんてないよ? ……ね、キサナぁ?」

「は、はいぃぃぃぃ! ボクとスピカ様は仲良しですぅぅぅぅ!!!」


 キサナが涙目になりながらブンブンと首を縦に振っている。そういうとこだぜ……


 苦笑いでキサナたちを眺めていると、竜騎士ライデンも笑いながら会話に参加してくる。


「はっはっは! アンタ、いい大人なのにすっかり大聖女様にやられちまってるなぁ?」

「い、いえ。これはボクがビビりすぎるだけですし……」

「でっけぇ体してんだから胸張って行こうぜ? 男は俺たちだけだ、短い間だけどよろしく頼むぜ?」


 そう言ってライデンがキサナの肩に手を乗せる。すると……


「ぴゃあぁぁぁぁっ!!!???」


 顔を真っ赤にし、キサナが大きな叫び声をあげる。


「お、おぉっ!? なんだビックリしたな……!?」

「肩っ、男の人に肩触られ――ッ!?」


 目をグルグルに回し、キサナが最高にテンパっている。見た目は大男だが、中身はシャイガールだ。男同士のラフな触れ合いに耐性がないのだろう。


「触られんのイヤだったか? なんか悪いな……?」

「イ、イヤと言うわけではありませんがっ。むしろボクなんかが唯一の男ですいませんっ!」


 なぜキサナを動揺させてしまったのかわからず、ライデンも困惑顔だ。スピカは真っ赤になった坊主頭を楽しそうに撫でまわしている。


 ……ともあれ。これまでとは少し変わったメンバーで、私たちは竜峰を登っていくのだった。





 十層ボスはBランクのコモドドラゴン。高い攻撃力と合わせ、猛毒の状態異常に注意が必要だ。だが……


聖光瀑布ほーりーほーるっ!」


 今更Bランクボスなんて目ではない、鉢合わせと同時にスピカが消し炭にしてしまった。


 初めてスピカの力を見たライデンとキサナは、驚きに目を見開いている。


「これが大侵攻を食い止めた大聖女の力か、凄まじいな……」

聖光瀑布ホーリー・フォールが初期習得できるなんて壊れてますよぉっ! ……ハッ、もしスピカ様に嫌われたらこの攻撃がボクに!?」


 とりあえずなんにでもビビるキサナをなだめ、ドロップ品を回収。確定枠のウロコ落としの鞭(C)と、猛毒草を獲得した。



 続けて二十層ボスはAランクのギュスターヴ、巨大なワニの魔物だ。


 こちらも物理攻撃が高いが、私の挑発と回避があれば被弾は避けられる。弱点は氷属性なので、フィオナの吹雪剣を数発打ち込んで討伐することが出来た。


「むーーーっ、スピカの聖光瀑布ほーりーほーる一発じゃたおせなかった!」

「ボスは体力の高い魔物も多いし、そういうこともあるよ」


 ハム野郎の着ぐるみを着たスピカをなだめ、ドロップ品を回収。


 ここでは確定枠のドラゴンアックス(B)のみ獲得。ここは竜の魔物が多いこともあり、竜種に特攻ダメージを持つ武器があえて確定枠に設定されている。


 もちろん私たちが今更持ち替えるようなものはないけどね。




 二十層ボスの討伐を終え、少し進んだあたりでライデンがおもむろに聞いてきた。


「しかし……リオさんたちはホントにすげぇなぁ。強いだけでなく移動中もこんな楽できるとは思わなかったぜ」

「ふふん。エンカウントなし、便利でしょ?」

「ああ、あんなに強そうな魔物がスルー出来るなんて信じられねえぜ……」

「そんな慎重に歩かなくても大丈夫ですよ。こちらから攻撃を仕掛けない限り、絶対戦闘にはなりませんから」


 二十層も超えればAダンジョンも佳境だ、大型魔物がその辺をウヨウヨ歩いている。



 名前:ドラゴンゾンビ

 魔物ランク:A

 ドロップ:聖水

 レアドロップ:アンデッドの核

 盗めるアイテム:竜骨

 盗めるレアアイテム:アンデッドメイル(B)




 名前:グリーンドラゴン

 魔物ランク:A

 ドロップ:トカゲのしっぽ

 レアドロップ:風来帽(A)

 盗めるアイテム:竜のキバ

 盗めるレアアイテム:風のリング(A)



 

「まだレベル27の俺には到底かなわない魔物ばかりだ。そもそも竜峰の一層でさえ、手こずっちまうくらいだしな」

「そのレベルなら仕方ないですよ。なんならちょっとレベル上げしていきましょうか?」

「……いいのか?」

「もちろん。飛竜に乗せてもらうお礼の前払いです! みんなも構いませんか?」


 リブレイズのみんなに聞くも、反対意見はナシ。ということでエンカウントをアリにして、魔物を蹴散らしながら進むことにした。



 初撃はライデンが一撃を入れ、私が挑発で注意を逸らす。その後はローテーションを組むような形で、リブレイズのみんなが攻撃を入れていく。


 ドラゴンゾンビはアンデッド。そのためキサナの習得しているレクイエムで大ダメージ、取りこぼし分は炎のリングで十分に倒せる。


 グリーンドラゴンには氷弱点がある。フィオナの攻撃でも十分に倒せるが、スピカが飽きるのでタイミングで聖光瀑布ホーリー・フォール。できるだけライデンの攻撃回数を増やし、経験値が増えるように調整。


 私はその間、挑発をかけながらひたすら『盗む』を連打。


 最近はスティールアンドアウェイも出来ていなかったので、ここぞとばかりにレアを狙いに行く。


 そして三十層に着くまでの二日間。以下のアイテムを回収した。



 聖水×4

 アンデッドの核×2

 竜骨×11

 アンデッドメイル(B)×3

 トカゲのしっぽ×2

 風来帽(A)×2

 竜のキバ×17

 風のリング(A)×3



 移動しながらの戦闘なので試行回数は少なめだが、実のあるアイテムが回収できた。


 後はせっかくライデンのレベルも上げたので、不要な装備品をライデンにプレゼントしてより強化を図ることにした。


「いやいや! さすがにこんないいモンもらっちまったら、バチが当たるって!」

「いいんですよ! それに人がモリモリ強化されるのを見るのは楽しいですから!」

「そ、そうかぁ……?」

「はいっ!」


 私のクランにはもう超速レベリングできるようなメンバーはいない。だったら手近な人を強化してニヤニヤするに限る。


 ということで、ライデンは以下のように改造して差し上げた。



☆☆☆

 名前:ライデン・ドラコボルト

 所属クラン:飛竜の里

 第一才能:農夫(レベル:13)

 第二才能:竜騎士(レベル:27→51)

 冒険者ランク:C

 残りスキルポイント:16→88


【装備品】

 ドラゴンアックス(A) 竜種にダメージ+50%、クリティカル率+20%

 風来坊(A) 風属性吸収、回避率+10%

 竜騎士の胸当て(A) 炎・氷耐性+20%

 風のリング(A) 風属性・使用時「風刃波ウィンドカッター」発現可能



【習得スキル】

 ・斧術ふじゅつ【LV:5】


 ・騎竜きりゅうの心得


 ・狂戦士化

 ・薙ぎ払い

 ・かぶと割り


☆☆☆



「もうリブレイズに移籍しないと申し訳ないくらいなんだが……」

「入ってくれるなら嬉しいですけど、引き抜きする気まではありませんよ? これでライデンさんは飛竜の里の最高戦力になったと思いますし」

「だろうなぁ。いつの間にかグリーンドラゴンとも、タイマンで戦えるようになってるし……」


 装備もAの中では割と強めのものを進呈した。


 ちょっともったいないような気もしたが、どうせ着飾るならと徹底的にやってしまった。


 それに以前、レファーナも言っていた。領地経営もするつもりなら、横のつながりを大事にしろと。


 ライデンは里長の息子と聞いているし、きっと次の里長にも選ばれる。


 だったらこれくらいのサービスはしても問題ないだろう。飛竜タクシーが始まったら、より関係も強固になるはずだからね!



 さて、いよいよ三十層も目前だ。


 来たる昇竜王との面会を前に、私たちはキャンプを張りながら翌日の打ち合わせを進めるのであった。



―――――


 カクヨムコンテスト期間中の最終更新です!

 ここまで読み進めていただき、本当にありがとうございます!


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