第52話 首都ミラ道中ぶらり旅、ついでに本物の盗賊と出くわす
私たちは修道女の護衛を果たすため、馬車でサンキスティモールを出発。
町を出る時にはたくさんの人が見送りに来てくれた。町の人は馬車が見えなくなるまで手を振り、私たちは気持ちよく町を後にした。
「……さて、それでは護衛の任務を全うしましょうか」
「そうだな。では私は後方の警戒にあたる」
「よろしくお願いします!」
リブレイズの中で唯一、騎馬経験のあるフィオナが借りた馬を後方へ寄せていく。私は先頭を走る客車の上に座りながら、辺りへの警戒を始めた。
マチルダの話では近年、山賊や盗賊の
しかも修道女たちの乗る馬車は造りの良い馬車だ。それが四台も連なっていれば、盗賊たちに目をつけられてもおかしくない。そのため街道を移動する際に、護衛は欠かせないそうだ。
(そういえばゲームでも一応あったよね。フィールド移動中をしてると、魔物ではなく盗賊や山賊が出現することが)
ランクとしてはそこまで高い連中は現れない。SやAダンジョンを踏破してきた私たちの敵じゃないだろう。
スピカとレファーナは、馬車の中で待機中。二人にもコラプスロッドを渡してあるので、いざという時は戦力になってくれるはずだ。
ちなみに町を出る前、鉄仮面の一部は町長が買い取ってくれることになった。私たちが宣伝する殺虫レベリングの話を聞き、町に強い衛兵や冒険者が生まれるならと買い取った鉄仮面を無料で配るらしい。
その数1000個。すべて通常売却価格で買い取ってくれたので、500万クリルの稼ぎになった。……どうやら私たちのした多額の募金に、少しでもお返しをしたいと思ってくれたらしい。
(これで残りの鉄仮面は758個。後はミラに着くまでに寄った村や町で、鉄仮面の売却とチラシ配りを忘れずにしておこう。これで結構なお金になるはずだ!)
クランハウスや領地を構える話になれば、億単位のクリルが飛んでいく。それまではコツコツお金を溜めていくことにしよう。
――その時。先にある林の方で、鳥たちが不自然に羽ばたいていくのが見えた。
なにか変だ。そう考えた私は
十中八九、賊だろう。
名前:盗賊
ランク:D
ドロップ:盗賊のナイフ(E)
レアドロップ:マインゴーシュ(D)
盗めるアイテム:ターバン(E)
盗めるレアアイテム:煙玉
名前:魔物調教師
ボスランク:C
ドロップ:干し肉
レアドロップ:餌付け用ステーキ
盗めるアイテム:皮のムチ(E)
盗めるレアアイテム:鎮静剤
なんてこった、しっかりと『掌握眼』でアイテムまで確認できてしまった。つまり彼らはシステム的に魔物と同じ扱いをされている、盗賊に人権はないんですか?
気付けば道脇の林からも、男たちが次々と姿を現した。数は全部で――三十人ほどだろうか。
ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる盗賊たち。すると道を塞いでいた男の一人が、つかつかとこちらに歩み寄ってきた。
「おいおい、どうなってんだよこの馬車隊は? 女ばかりの護衛雇っちまって……これじゃあ襲ってくれと言ってるようなモンじゃねえか?」
男がおどけながら言うと、近くを囲んでいた盗賊たちも猿のように笑い始める。
「まぁ、悪いことは言わねえ。黙って俺たちについて来い、おとなしく従えば痛い目には合わさず――」
「――済ませてあげるので、道を開けてくれます?」
「…………え?」
私は男の背後に回り込み、首筋にグラディウスを押し当てながら言った。
ちなみに男が言い終えるまでの間に、私は
いまや道を塞ぐのは、羽交い絞めにした男だけだ。
「な、なっ……!? お前、何者だ?」
「私ですか? 盗賊ですけど」
「と、盗賊だと……?」
「はいっ! これが本職の、清く正しい盗賊の姿です!」
私は笑顔でお応えしてあげたのに、男は体を震わせてなにも言えなくなってしまった。
すると脇の林からパチパチと手を叩く音。動揺する盗賊たちの中から、マントをつけたキザったらしい男が姿を現した。
「素晴らしいぃ! 女性でありながら見事な身のこなし。少数精鋭でありながら馬車隊を任される、立派な護衛であるとお見受けした!」
「……あなた、誰ですか?」
私がそう訊ねると、男はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに目を輝かせる。うわ、めんどくさそう。
「ふっふっふっ、我こそは盗賊団のリーダー! インフェルノ・ゴッド・カリバーン様であるっ!」
男が偉そうに名乗り出ると、近くにいた盗賊たちが騒めきだす。
「おお、久しぶりにインフェルノ・ゴッド・カリバーン様が前に出られた!」
「第三才能まで解放された、盗賊団の当主!」
「冒険者時代にはBランクまで昇りつめた、エリート中のエリート!」
わかりやすいほどのヨイショをされ、機嫌を良くしたインフェルノ・ゴッド・カリバーン様がずずいと私の前に歩み出る。
「貴女たちもこれまで、立派に護衛を任された者たちとお見受けします。しかし残念です、このインフェルノ・ゴッド・カリバーン様と出会ったのが運の尽き。貴女たちには私たちの
そこまで言いかけた時、馬車の中からインフェルノ・ゴッド・カリバーン様のお声をさえぎるものが現れた。
「やあやあやあ、私はスピカ・ハルシオン! エレクシアでまあまあえらい、大聖女を任されるハチさんである!」
恐れ多くもインフェルノ・ゴッド・カリバーン様に対抗する形で、やたら声を張り上げたスピカが馬車の中から姿を現した。
するとインフェルノ・ゴッド・カリバーン様は瞳をギンと見開かれ、大変興奮された様子でお応えになられた。
「ほほぉう! これは大聖女様を送り迎えする馬車でございましたか!」
「さよう! スピカの道を塞ぐとは、なんと不届き千万なやからたち!」
「これは失敬、しかし
「はあはあ、本聖堂が損をするなら、それはスピカにも願ったりかなったり!」
「理解がよろしく大変結構! しかしてお身体に傷をつけるわけには参りません、ならばおとなしく我々とっ――」
「…………飽きた、
「あ~~~~れ~~~~!」
スピカがコラプスロッドで地面をつくと、インフェルノ・ゴッド・カリバーン様が大穴に吸い込まれて行った。周りの盗賊たちを巻き込む形で。
穴の中からはインフェルノ・ゴッド・カリバーン様と盗賊たちがぎゃあぎゃあ騒ぐ声が聞こえる。するとスピカは穴を覗き込み――
「うるさいからトドメ。
無慈悲にスピカがつぶやくと、破壊光線の雨が大穴に吸い込まれて行く。破壊の雨がやんだ頃には、大穴の中では物音ひとつしなくなっていた。
「……ふわぁ、スピカは疲れたから寝るねー」
そう言って気まぐれ少女は馬車の中に戻っていた。
茂みの中で様子を見ていた盗賊たちは腰を抜かし、すっかり戦意を失っていた。これは一気に盗賊団を片付けるチャンスだ。
「はーい、それじゃあみなさん! いまから手首を縛りますので、順番に並んでくださーい。痛い目に遭うのがイヤな人は逃げないでくださいねー?」
私が盗賊たちに呼びかけると、馬車から降りていたレファーナが極光のリングで空に威嚇射撃。
すると盗賊たちは黙って手首を縛られ、インフェルノ・ゴッド・カリバーン様の眠る穴へと自ら飛び込んでいった。
「ふう、これでいっちょあがり!」
「リオ。後方の盗賊たちもおとなしく縄に着いたぞ」
「ありがとうございます! では近くの町にいる衛兵たちに、彼らの確保はお願いすることにしましょう!」
こうして私たちは道すがら、インフェルノ・ゴッド・カリバーン様と愉快な仲間たちの捕縛に成功。二時間ほど走らせた先の町で、盗賊団壊滅の報酬を受け取ったのであった。
―――――
☆達成☆
討伐クエスト:盗賊団インフェルノ・ゴッド・カリバーンの壊滅
クエストランク:B
達成報酬:400万クリル
討伐クエスト:賞金首インフェルノ・ゴッド・カリバーンの捕縛
クエストランク:B
達成報酬:300万クリル
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