第50話 未実装レア装備、コラプスロッド
二十層ボスの討伐を終えた私は、十九層に戻って目当ての魔物を探し始めた。
フィオナは眠ったスピカと一緒に、キャンプを張って休んでいる。そのため私は単独行動中だ。
「ところでリオは
「そうですねぇ。まずは全員分四本に、保存用が一本と属性変更用に六本。あと私の知らない未実装レアを持ってる人と交換できるよう、別で五本はストックしたいかな。すると……全部で十六本ですね!」
「……本気で言っているのか?」
「もちろん! だって足りなくなった時、またここまで来る方が面倒じゃないですか?」
「十六本で足りなくなる未来の方が見えないのだが……」
フィオナは急にどっと疲れが出た顔をして、キャンプにへたり込んでいた。まあボス戦の後だし、疲れるのも無理はないよね。
そうして私は一人、孤独に蟲毒のジャングルを歩き回る。
(あっ、そうだ。観察眼も掌握眼にレベルアップさせたことだし、大型魔物のドロップ枠も再チェックしておこう)
近くで見つけた魔物に照準を合わせ、手持ち品をリサーチ。
名前:キングワーム
魔物ランク:A+
ドロップ:聖水
レアドロップ:シルクの生地
盗めるアイテム:毒針(D)
盗めるレアアイテム:スネークウィップ(B)
名前:サタンモスク
ランク:A+
ドロップ:万能粉
レアドロップ:闇進化の結晶
盗めるアイテム:鉄仮面(D)
盗めるレアアイテム:☆コラプスロッド(A+)
さすがにドロップ枠にまで未実装は設定されてないようだ。
特注ダンジョンひとつに未実装二つが見つかるのはレア中のレアだ。人様のダンジョンに求めるようなものではない。一本発掘してくれるだけでも十分だ。
(では、そろそろ。お久しぶりのスティールアンドアウェイ、始めさせていただきますかっ!)
そうして私は木に止まったサタンモスクに狙いを定め、素手でのスティールアンドアウェイを開始。
私にとって脳死作業はまったくの苦痛ではない。
……が、そうでもない人もいると思う。だからここは結果だけお伝えすることにする。
結果、私はまるまる四日かけて、予定していた十六本のコラプスロッドを回収。
スピカは翌朝のうちに、脱出ゲートを使って先に牧場へ帰還。望みの品が集まり次第帰ると、レファーナへの伝言をお願いした。
私が盗み続ける間、フィオナは当初の宣言通りずっとそばにいてくれた。
……と言っても、黙って横で見ていたわけではない。
その時間を使って鍛錬をすると言い残し、近くにいたキングワームたちを蹴散らしてレベルアップを図っていた。
おかげさまでフィオナのステータスは以下のように変化。
☆☆☆
名前:フィオナ・リビングストン
第一才能:魔法剣士(レベル:74→80)
第二才能:氷魔術師(レベル:68→80)
第三才能:風魔術師(レベル:66→76)
残りスキルポイント:9→93
☆☆☆
ソロのレベル上げということもあり、かなりの成長をしてくれていた。
ゲームとは違ってパーティーで別行動を取れるのは大きなメリットだ。才能レベルも平均的に上げてくれるので、リーダーとしては大助かり。
「これでもっとリオの役に立てるだろうか?」
「もう最高ですよっ! フィオナさん大好きですっ!」
「……主君からそのような言葉をいただけるとは。私は幸せ者だな」
と言って少し照れていた、フィオにゃん可愛すぎか。
ちなみにコラプスロッドは十六本獲得したと言ったが、もちろん副産物もたくさん拾えている。
サタンモスクは木で休んでいた三匹を見つけたので、その三匹で盗むローテーションを組んだ。
警戒時間は約四分。その間に3回の盗むローテが組めたので、一時間で45回の盗むが可能。
一日に約十時間スティールアンドアウェイをしたので、おおよそ一日の試行回数は450回。四日だったら1800回。
その結果、ハズレ枠の鉄仮面(D)が1758個手に入った。
「せん、ななひゃく…………」
「いやぁ、マジックポーチがあって本当に助かりますよ! こんな重い仮面、リアルに持ち歩いたら十個が限界ですからね!」
「……そうだな。リオよりマジックポーチを上手く使える人は、この世界に二人として存在しないだろう」
ということで私は取りこぼしなく、
ゲームでは確か売れば5000クリルほどだったが、まとめて売ればきっと
だが4000クリルで売れたとしても、全部で700万クリルほどの稼ぎになる。副収入としては美味しすぎるくらいだ。
「で、お目当てのコラプスロッドのほうだが。リオの目に敵うほどの品だったのか?」
「はいっ! 思ってた以上の性能でしたよ!」
コラプスロッド(A+)は土属性の杖だった、硬さもあるので単純な物理攻撃力もまあまあ高い。
そして名前から予想はしていたのだが、戦闘中に使用すると土魔法:
土魔法を使える仲間がいなかったので相性的にも嬉しい。しかも杖なら非力なスピカとレファーナでも装備できる。
まさに私たちの隙を埋めることのできる、都合のいい装備品だった。
目標の十六本も集め終えた私もホクホク。しばらく放置していた脱出ゲートを使い、私たちはようやく牧場へ帰還したのだった。
「あーーーっ、リオたちようやく帰ってきたー!」
テラスの近くで駆けまわっていたスピカが、こちらを指差しながら大声で叫ぶ。
「もー! 遅いよー!」
「ごめんねぇ、スピちゃん元気してた?」
「ヒマしてた!」
「うわ、もっともっとゴメン」
頬を膨らませながら「おこ」を主張する幼女が可愛い。
対してもう一人の幼女……に見えるレファーナも、こちらに気付いてヒラヒラと手を振ってくる。
「ただいまです、レファーナさん!」
「ようやく帰ってきたか、この時間泥棒娘が。もうアチシとクランを組んだことなど忘れたかと思ったぞ」
「そんなワケないじゃないですかぁ~! レファーナさんのことは一日たりとも忘れたことがありませんよぉ~」
「それはそれで気持ち悪いの……」
「で、今日はどうしちゃったんですか? メガネなんてかけて?」
今日のレファーナはメガネをかけていた。しかもテラスの机にはたくさんの書類が置かれている。
「ダンジョンに向かう前に話したじゃろう、この牧場を発展させる計画を立てると」
「こんな本格的にやってくれてたんですか!?」
「当然じゃ。そしてリオよ、この話がうまく行けば……アチシらも結構なおこぼれに預かれそうじゃぞ?」
レファーナは目を細め、キシシと悪どい笑みを見せるのだった。
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