Vanity Banny‼
榑樹那津
1. 高飛車兎はなんと鳴く
回る車輪を眺めているよりも、たまに車輪をいじるのが好きだ。止めてみたり、撫でて速めたり。水面をかき乱すことが大好きだ。
街は静寂に包まれ欠けた月だけが世界を照らしていた。
『こちらフロッグ。バニー聞こえる?』
「あいあい、こちらバニー。動いた?」
『ああ、こっちは追跡中。護衛なし、余裕綽々といったところか。仕事の確認をするよ。ターゲットは我が高校の理事長の可愛い可愛いお孫さんだ。花を生けるように丁重に救い出したまえ』
廃ビルの屋上でダガーを宙に投げて私は遊んでいた。ずっと待ちぼうけをくらったせいで、あっためておいた体も冷めてしまったというものだ。
「そろそろポイントだ。たのんだよ、
「あーいよ!」
駆け出し手すりを飛び越える。宙を舞う体を制御し、真下を通り過ぎようとする黒い車のボンネットに着地する。
着地の衝撃で車は蛇行しガードレールに衝突し、急停止。そして私は腰に刺した2本のダガーを抜く。
「おんどりゃあ!」
ドアから這い出てくる黒服の男たち。腰に手を回し、ズボンに挟んでいた銃をとりだそうとする。助手席にいた小太りの男合わせて敵はふたり。
運転席側の男がトリガーに指をかけた瞬間私はボンネットを強く踏んづけ一気に距離を詰める。そして引き金を引かれる前に腕を真上に蹴り上げる。そして回転を利用しダガーを男の太もも目掛け放つ。
「きまった!次ィ!」
落ちてくる拳銃を空いた手でつかみもう一人の敵のほうを見る。すでに戦闘態勢をとってはいるが、私の華麗なる舞姿に恐れおののいていた。肩透かしを食らったからか自然にため息が出てしまう。拳銃を構え太もも目掛け一発放つ。
「——フロッグ。終わった」
『見てたよ。ったく、丁重にと言っただろう』
「あれ、そんなこと言ってたっけ?楽しすぎて忘れたわ」
『まったく、車を回すから早く帰ってきな。』
「はーい。さてさて、救いに来ましたよーおっ姫っ様!」
携帯を取り出して連絡をしようとする男の手を蹴りながら後部座席の方のドアを勢いよく開ける。
そこには怯えた子猫のように蹲った少女がいた。
「ごめんねぇ驚かせちゃった?そだ、飴ちゃん食べる?」
少女はわたしたちが通う高校のセーラ服だった。濡羽色のショートボブと、
「ったく、せっかく助けに来てあげたんだから怯えないでほしいんですけど」
「血が……」
「血ぃ?」
服に染みついた血を見てようやく少女が怯えている理由を理解する。しかし先ほどまで拉致にあっていたのに返り血ごときで怯えるとは。
玉のように育てられてきたのには間違いないらしい。
「とりあえず移動しよ。そーいえば名前は?」
「御統——真香」
「私は
Vanity Banny‼ 榑樹那津 @NatukiSeiiti
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