主犯確定

「本日の朝礼はおしまいです。確実ノービス様の教えを破らぬように」


机の前に立つ大司教ルダーは、会衆席に座る使徒達への命令を終え、裏方へと回った。


「キール。手筈は済みましたか?」

「…はい。各国への貿易や友好関係の政策。大司教様が求めていた物も本日中には届く手筈です」


そう言って、キールと呼ばれた司祭は貿易履歴と各国からの伝書を大司教へと渡す


「順調ですね、リムニアル王女の行方は」

「殿下が暗い森へ向かわせてから詳細不明です…もうこの世には居ないでしょう」

「ふむ。貴方はよく働いてくれますね。ノービス様は見ていられますよ」

「……大司教、本当に、本当に貴方のしている事はこの国の為なのですか…っ」

「勿論ですよ。いつまでも暮れた様な者が上に立っていては国は成長しません」


資料を読み終えた大司教は外套を身に纏う


「これが終わればこの契約も終了、貴方の家族も喜ぶことでしょう」

「……大司教…っ、僕は!」

「キール。ここまでやって来たのです。今、迷った所で意味はありますか?」

「ッ……」

「貴方には期待しているのですよ、キール」


ルダーはキールの肩をぽんと叩き、教会を出ていった


「……僕は、どうしたら良いんだ」


ぽつりと呟かれた言葉は部屋に反響して消え失せる。

その言の葉を汲み取れた者は何処にも居ない。


まぁ私達以外?


「けっこーきなくさい事になってますねぇリムちゃん」

「……妻が生きていた時は表裏問わず穏やかな人だったと言うのに」


口元を手で隠しながら小声で担いだ詳細不明と会話する


「ともかく一度彼を追いましょう。キールは…一度無視で」

「はいはーい。今日も元気にタクシーだ」


城で一晩明かして、ついでに城の食べ物くすねて(自分の家だから大丈夫らしい)色々作戦会議した後、取り敢えず主犯を尾行してみることにした。


つったかつったか小走りの主犯を追い掛ける。

向かっていったのは結構遠くの…遠く……遠っ、何処まで行く気だよ

ずーっと歩いてたら郊外のゴーストタウンみたいな所までやって来た。全体的に寂れてて、窓割れてるわシャッター閉まってるわ落書き多いわで、人の気配が微塵も感じない。

なんだったら来たことあるな、リムちゃんが寝てた時にお散歩ついででこんな所に。

あの肩で挨拶してきた人元気か……な……?

あれ?そいつ主犯じゃね?黒ローブであんなぐらいの身長であんな声で。どっかで見覚えあると思ったんだよあいつ


そんなあいつは道端の小洒落た教会に入っていった。

なんでここだけ整備されてるんだ


「…?」


リムがそこを見詰めて目を擦る。


「ゴミでも入った?そりゃあこんな埃っぽいところにいりゃそうよね」

「いや…なんでしょうかあれ」

「あれ?」

「あの教会です。二重に重なって見えるというか」

「そうなの?私にはいい感じに綺麗な教会にしか見えない…てあれ、主犯どこ行った?」

「そこに居るはず……警戒はしつつ中に入りましょう」

「はーい」


ずかずかといつも通りにふてぶてしく入っていく。

中は教会と言うより図書館や実験室に近いようになっていて、真正面に聳え立つ欠けた女神の像がやけに目立つ


「消えたなぁ主犯…」

「いえ、像の前に…?何をしているのでしょう」

「んー?居ないよー?」


なんて言った途端、急にパッとそれが現れる。まるてさっきからいましたよと言わんばかりに


「あ、居た」

「…何かおかしいような」


彼は此方へと振り返ると、驚いたような形相で言葉を投げかけた


「誰だ貴様ら…!!どうやってここへ入ってきた!?」


……?

後ろを振り返りましょう


「早く逃げて下さい!!」

「うおう待てよ、せめて誰が来たか確認するだけでも」

「違います!!彼は私達に言っているんですッ!!」


よく見ると、彼の血走った目は確実に私達を見据えていた


「っ……スゥ-……」


ゆっくりと後退る。幸い扉に鍵は掛かっておらず、体重を乗せるだけで簡単に開いた。


「すみませんでしたぁぁぁあああ!!!!!」


あぁ…本当に最近走ってばっかりだな私……

りたーんとぅほーむ。一度昨日居た宿へ一直線に戻るとしま

「念の為回り道を多用して下さい!前回とは違う宿へ!!」

……(  ・᷄-・᷅ )

はーいわかりましたー

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