限界って言う人の欠陥

「ねーまだー?」

「後3トキ程です」

「もう朝だよー?」

「まだ歩き始めて6トキ程しか歩いていません」

「めっちゃ歩いてるじゃん…私生まれてこの方歩き詰めだよー太ももぱんぱんになっちゃうよー」


あれから暗い森を抜けて街道に出て死ぬ程人通りのない道を歩いてやっと平原。

平原と言っても草木は少なくて殆ど荒野や山道と言って差し支えない様なそんな場所。さっき遠くに豆粒みたいな建物が見えたけどアレなのかな、とーいなー。


「て言うか寝なくて良いのー?あんたもそこそこ疲れ気味じゃないのー?」

「普段は活動する為の活力を抑えていた為、殆どが残っており、さらに完全食を摂取したため差し引きプラス寄りです」

「そんな合理的に生きてて楽しいか…あーお菓子食べたいなー楽しいことしたいなーなーんか来ないかなー」


こんな調子で5時間半歩いているといい加減私も疲れてくる。あと3時間って要するに9時間じゃんめっちゃおばか。私生まれてこの方歩く時間が24時間越えそうだよブラック企業だよ。

そういや、ここの時間は”トキ”と言うらしい。神様軽はずみに英語使う割にはこういう所は拘る。だってのに両腕を掲げた胡座のおっさんが何故か思い浮かぶ

分は”フーン”。こっち両手を広げて飛んでくる謎の生命体が思い浮かんだ。呪いだろもうこれ

秒は”ビヨ”。何となく踏襲されてるのだけは解る


「着くの何トキくらいー?」

「凡そ7トキ程でしょうか」

「今何トキー?」

「4トキ程です 」

「だよねー」


一生意味の無い会話を繰り広げながら、普通の剣に化けさせた聖剣を振り回して歩き続けた。

奴隷が乗ってる馬車が魔物に襲われてたりもせず。

飛竜が急に降ってくる訳でも無い。

こんなだだっ広い荒野に、あえて生き物が住居を作ることはそれなりにリスクの高い事なんだろうな。


「だからと言ってさー歩いてる中なんのイベントもないのー?ひーまーだーよー」

「あと2トキ55フーン程です。頑張ってください」

「ながーい」


^^^^^^^^


眼前に聳え立つのは数十mはあるであろう大きな城壁だった。城壁から顔を出すツンとした屋根は先程見た件のお城なんだろう。

あぁ、お天道様が眩しい、空明るい、目痛い。


「何時まで寝転がっているんですか?」

「ちょっとぐらい良いじゃん…どんだけ歩いたと思ってんの」


リムに引っ張られ、無理やり起き上がらせられる。

…こいつはなんで無事なんだよ


「門はこの先です。通行手形として身分証もしくは発行するまでの保証として金貨2枚を支払えばここを通れます」

「身分証か、そいやお姫様だもんね。顔パスで行けないの?」

「私と言う存在が最後に外に公表されてから8年程経ちました。意味はありません」

「じゃあやっぱ身分証…ん?持ってる?」

「いえ」

「金貨とやらは」

「持っていません」

「詰んでんじゃねぇか…」


その言葉を聞いて姫様は漸くはっとした顔を見せる。

今頃慌てたって遅いっつーのて言うかそんなプランで良くもまぁ


「しゃーないか…あんまり悪さしたくもないんだけど」

「?何お、っ!?」


私はそんなおっちょこちょい姫ちゃんを米俵の如く担ぎ上げ、検問へと向かう


「いけません、ここで対価を支払わなければノービス教本128pにおける不法入」

「さーてはまだあんまり私の事信用してないな?いいから黙っとけっけ」


そしてそのまま私は衛兵と荷馬車が屯する場所へと。

数居る御者の中から、明らかに城が絡んでそうな証書?らしきものを持ってる人を見つけ出した。こいつでいいや


「アザリアからの貿易商でございましゅ、こちら大司教様からの認可証でしゅ」

「ふむ、確かだな。よし通れ」

「ありがとうございましゅ、ふえっふえ」


はーいありがとうございまーす。


口を塞いだ姫様と一緒に貿易馬車の端に乗り、ガバい衛兵に手を振った。

そのまま門が見えなくなるまで馬車に揺られ、頃合の所で消滅を解いた。


「はーい不法入国完了ー!深夜の3時にカップ麺食べるような罪の味だ…」

「…何とかなりました…か。ですが…こん、な」

「いいかいリムちゃん。自分の我を通すには細かい事気にしてらんないの。法や罪なんてのを決めたのは人間なんだし、その枠組みで生きてちゃやりたい事なんて…あれ」


私の腕の中にはいつの間にか小さく寝息を立てるロリが居た。

やっぱ無理してんじゃんか。

しゃーねぇ、一旦休憩としますか。どっかに良い場所無いかな

道端で馬車から飛び降り、もう一度洗濯物でも干すようにリムを肩に掛け、世界から消えていった

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