クソみてぇな繁華

@saida0001

第1話

 - クソみてぇな繁華 -

「さっさとおきろやクソボケ」

「うざい」

「ぶち殺すぞニートのくせに怠けてんな、遅刻すんな、生きてる価値ないクズですって頭下げて謝罪しろカス」

「口と品の悪さ全一かテメェは」


 髪留めで適当に持ち上げられたぐしゃぐしゃ髪の女がいる、こいつはどこにでもいるそこそこのカスだ。何かできるだけの能力もなけりゃ、顔もそこまで良くないくせに自己愛多めのナルシストである。

 横で適当にひっくり返っているのはシャフである、こいつはこいつでクズだ周りからの評価にビビり倒しバイトに遅刻すればトブ。あまりにも世間から逃げ出しすぎて、周囲の人間はこいつが今カニ漁船のってると本気で思っている。

 まぁお互いに何者にもなれないよくいる奴なのだ、途方もなく果てしなく。生きてるだけで金が欲しい自堕落に暮らしたい、てか働いたら負けだろ?など言いつつ社会から逃げるだけの力もやる気もない。とんだ根性なしである。


「なぁああああヤニくれ〜〜〜酒買いに行こうよぉおおお」

「1人で行けってば」

「お金ない」

「しねアル中」

「学生様頑張ってやってやってんだろご褒美くれや」

 クリスマス時期に袋詰めされてる○リキュアのコップに注いだウイスキーを飲みながら、わめき散らしている女がなんとも痛々しいものだ。

 おきろってば!!!!怒号を浴びせながら腹を蹴り飛ばすカスは駄々っ子のよう。酒が欲しい、酔いたいんだとおぎゃおぎゃ泣き喚くわりに手に持っているのはボトル瓶。叫ぶ前に手元のそれを飲み干せよオメェは、そんな苛立ちが溢れたシャフは近くに転がる瓶でノールックアタックを決める。大体コップに注いだのを飲みながらもっとよこせと言っている時点で十分に酔っているのだ。

 ゴッっとガラスが骨にぶつかる音が響く。


「だあおおあおおあお何してくれてんだクソ野郎!!!!!いった!!胃あだ名dfっwq!?!?!?」

「みず」


 どす黒く変色した脛を撫でてカスはひんひん泣く、痛いのは大っ嫌いなのだ。こいつ殺してやる!と怒りで満ち溢れた心で呑気に水分をとるシャフに近づく。南山!!せめて来世では社会適合者になれるといいな!!!の祝詞付きでトリスを振りかぶったが、カスは遅くまで酒を飲みセルフ嘔吐噴水型をきめていた為、とんでもなく生命活動能力が低下していた。上にあげたトリスでバランス崩してこける程度にはバカだったのだ。

 ぜひこれからの国を担う若者たちは、こんな生き物にはならないよう日々青春を謳歌して物事の良し悪しを学んでほしいところである。


「んみっ!!!いだぁい!!!」


 それはさておき、しっかりを打ちつけたお尻を撫でて目だけはしっかりと憎いこの女を見つめたカスは声高らかに叫んだ。


「お前嫌いだ!!!」

「どうみても自業自得じゃんばーーーーーーーか!!!」

「うるさいうるさい!!!そもそも昨日は梅ちゃんといちゃいちゃセックスの予定だったのに!お前が家にいたせいでお流れになっちまったんじゃないかぁ!」


 こんな酷いことはない、久々に巡ってきたかわちい女の子とのお誘いだったのに。おっぱいの大きなマシュマロちゃんを逃した罪はとんでもなくでかいのだ。ほっぺたのまぁるいふっくらレディとの逢瀬が木っ端微塵斬りにされてしまった、寝坊したからもういいやとお布団にくるりと巻かれ単発バイトを飛んだシャフのせいでおじゃんになってしまった。こやつを許しておくべきか、殴れないのなら刺し殺してやろうと赤ちゃんのようにシンクへ近づく。

 元を辿れば開き直ったシャフの歌声にベタ惚れして約束に遅刻したカスが全面的に悪い。だがそれはそれなのだ、なぜならカスは精神年齢が幼稚園児なので。しかも毎回ベロベロに酔わされお姉さんのお供に放り捨てられてることを偉そうに語るのだから、全くもって世話ない。


「もうやだ、しのう酒で死ぬ。お前道連れな」

「やめろやボケ1人でいけ」

「ふーーんそんなこと言うんだ、せっかく今日社会さんくるから連れ出してあげようとしたのに」

「心の友よどこにいきたい?うまい酒飲み行こうぜ!私の奢りな!」


 手からコップが滑り落ちプラスチックの軽い音がなる。そのままの勢いで着の身着のまま転がるように部屋から逃げようと動く。右手には財布、左手には適当に引っ掴んだごつめの上着を握り締め包丁を丁寧に洗うカスを蹴り飛ばす。


「え!?!?ま??!いく〜〜〜〜〜!!!お酒だぁいすき!!」

「急げ急げ!!部屋出ろ!!あいついつ来るっていってたんだ!?」

「なんか昼過ぎだって〜〜」

「役所の昼休憩きたら来るやつじゃねぁか!!もう着くじゃん!!無理無理むり!!!!私社会アレルギーなんだよ!!」


 目にいっぱい水を溜めてカスの手を握り締めて玄関まで走る。シャフは社会さんがとてつもなく嫌いなのである、あのレールから外れたものを見る目がとんでもなく恐ろしいのだ。ちなみにシャフが社会さんと初めて会ったのは、カスが玄関で楽しげに話し込んでるのを聞いてしまった時である。

 カスがトイレに行った瞬間顎を思いっきり掴まれ「誰だお前」と言われた。シャフももう成人した女ではあったがちょっぴり漏らした、とんでもなく怖かったから。呆れ果ててどうしようもない奴らだがシャフもカスも外面だけはいいのだ、だからこそこの人類的ゴミ共がなんとか生活できている。なのにいきなり予備動作もなしにツラのいい女に真顔で凄まれた。これ以降シャフは社会さんにだけは出くわさないよう頑張っている。ただし一度見つかったせいで目をつけられ時折押しかけられる事が多発している、そして何故かカスはタイミングを知っているためこういう時に情報をくれるのだ。それに対して礼がないと、とんでもない目に合わされるからそこだけはちゃんとしていた。

 なんせ前科があるので。


「ねぇ〜〜カラオケ行きたいンゴ」

「好きなだけいっていいから逃げんぞ!!」


 ちなみにカスとしては学生生活しっかり送ってる上に奨学金をぶんどってるので、社会さんは全く怖くない。むしろ学校頑張ってますねぇと良い子良い子してもらえるから社会おねぇ様が好きなのだ。一番は梅ちゃんだが。少し前にシャフから、いかにやつが恐ろしく残酷なのかを良い聞かされたがドMのカスにはいまいち伝わっていない。それどころか「えっろいネェちゃんに顎掴んでもらっただと???!かぁあああ!!!ご褒美だろんなもん!!!」などと言われていた。哀れシャフ、相手が悪かったのだ。


「忘れ物ない?」

「命さえありゃどうにかなんだよ!あくしろ!!!」


 勢いよく開いた扉から風が襲いかかってきて、すこしだけ苛立つ。せっかちなんだよなぁ、なんて呟いて鍵をかけたらガチャンとシリンダーが回った。


「んね!!シャフ!!なんかこれおもろいな!?」

「頭とち狂ってんのか!!!だっぁて走れやボケ!!」


 ゴミか酔って倒れてるおっさんしかいない路地を爆笑しながら走る。毒煙でボロボロになった肺胞からプチプチ音がしてハァハァ息を上げてシャフとカスは平日昼間を爆速で走った。今日は祭日であるからして酒飲むやつ、忘れ草に逃げるやつがゴロゴロコンクリートの上に落っこちている。所詮世の中なんぞそんなものなのだ。


 これは実家に寄生し甘い蜜を吸う元ガリ勉系クソニート社不ことルーナと、ポンコツをどうにか誤魔化しながら人に媚びることを第1主義としたカスことリファの備忘録である。

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