第3話

 終わりは突然やって来ました。


 家に帰ったらニアちゃんが冷たくなっていました。口から泡を吹いていました。飲酒とオーバードーズのせいでしょう。チューハイの缶も転がっていました。汚い話ですがうんこも漏らしていました。畳にハエが飛んできました。


 僕は警察に通報できないので、どうしようか迷いました。

 結局、庭にある古井戸に捨てました。もう枯れていますので、皆さんが想像するような、水中にドボンという感じではありません。下に落としましたが、硬直しているので、斜めに立った状態のままでした。


 僕は数日後に、砂利をたくさん買ってきて、井戸の中に落としました。土も持って来て、できるだけ上まで埋めました。


 ニアちゃんのスマホは不燃ごみに捨てました。洋服なんかも全部燃えるゴミに出しました。何もなくなってすっきりしましたが、まだ、ニアちゃんは過去にはなりません。


***


「お兄ちゃん」


 そう言って、夜中、ニアちゃんが布団に入って来ます。


「頭が痛いの。頭に石が刺さっていて…」


 僕の布団が砂だらけになります。


「ごめんよ。腐って変な臭いがするといけないと思ってさ」


 風が吹くと家の中まで腐った臭いがしました。でも、この辺では畑に堆肥を使うのは珍しくないのです。おかげで苦情は来ませんでした。運がよかったと思います。


***


 それからしばらくして、姉が家を売りたいと言うので、僕は姉に一千万円払いました。家が人手に渡ると、井戸にある遺体が発見されてしまうかもしれないからです。こうして、僕が持っている貯金はすべて姉に渡してしまったことになります。お金があっても使い道がありません。だから、別にいいと思っています。


***


 今も時々、家に帰ると、ニアちゃんが酒を飲んで床に寝転がっています。


 僕はニアちゃんにあげるために今も酒を買います。

 捨てるのがもったいなくて、自分で飲んでしまいます。

 

「寒くない?」僕は決まりきったことを言います。


 ニアちゃんに触るととても固いです。

 やっぱり死体なので、生きている時のような柔らかさはありません。


 僕は隣に添い寝をしますが、とても臭いです。

 カビのような変な匂いがします。


 それに、今も僕のスマホには電話がかかって来ます。

 取っても、相手は何も言いません。

 でも、それがニアちゃんだってことを僕は知っています。


 それを切らずに放置して一日が終わります。

 ずっとつなぎっぱなしです。

 切ったことはありません。


 切ると何かしらの報復がある気がするからです。

 もしかしたら、その通話は僕があっちの世界に行くまで続くのかもしれません。


 僕は今も怯えています。

 ニアちゃんの存在に。


***


 僕は警察に自首しました。


 スマホを持っていなくても、ずっと電話が鳴り続けています。


 僕は通話を始めます。

 もう、スマホがなくても相手に通じます。


「今、警察だから電話しないでくれる?怒られるよ」


 誰と喋ってるんだと、刑務官に叱られます。


「ほら、怒られちゃった。すみませんでした」


 僕は謝りました。

 そんなやり取りが珍しくありません。

 僕が刑務所に入ったのは気休めです。

 罪を償うことなんてできません。


 そもそも、僕の罪は何でしょうか。

 ニアちゃんを家に連れて帰ったことでしょうか。

 不適切な関係?

 または、井戸に捨てたことでしょうか。


***


 僕は刑期が明けて家に帰って来ました。

 もう、親戚からは縁を切られています。

 仕事もありません。

 

 だから、誰にも言えなかった話をこうしてネットに書いています。 

 

 でも、ここに事件の本当のことを書くと、僕の素性がわかってしまうので、色々な子の話を繋げました。


 つまり、僕が殺害したのは一人ではありません。


 ニアちゃんだけは、家の井戸に捨てました。

 体が大きかったからです。

 それが失敗でした。

 

 他の子のことはどうしたかもう覚えていません。 

 その都度、いろいろな場所に置いて来たと思います。

 

 

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秘密2 連喜 @toushikibu

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