第55話 クラン戦、先鋒

「僕達から逃げなかったのは褒めてやるよ」

「逃げるもんか」


 †翔†の煽りにローリンが反応した。

 戦いの舞台は、冒険者ギルドの地下修練場。

 クラン戦のために貸しきりにした。

 俺達4人と敵の3人以外の人はいない。


「御託はいいクラン戦を始めようぜ」

「僕に指図するな。だけど、始めようか。みんなうずうずしてる」


 俺が戦いに入るように言うと†翔†も同意した。


 『クラン天辺とクランショーケースのクラン戦を始めます。戦いは3対3の団体戦になります。プレイヤーを選択して下さい』そうメッセージが出た。


 4人で集まる。


「先に行かせてくれ」


 ローリンが一番手を希望か。

 向日葵とアイからは意見が出ない。

 こういうののセオリーは弱い順。

 となると、ローリン、向日葵、アイだな。

 ローリンは攻撃特化で強そうだが、戦い方に隙があり過ぎる。

 向日葵は半分生産職だからな。

 アイが一番強いだろう。


 先鋒、ローリン。

 中堅、向日葵。

 大将、アイで決まった。


『クラン戦を行います。ルールは何でもありの死亡が決着となります。賭ける物は天辺が、向日葵、ローリン、アイの移籍。ショーケースが†翔†、ドクロ、みるふぃーゆの固有武器。これでよろしいですか?』


 承諾した。

 ローリンが進み出る。

 俺達は観客席に引き上げた。


 初戦の相手は†翔†だった。

 意外だな。

 こいつが大将だと思ってた。

 分かってる†翔†は魔法使い。

 何の魔法かと言えば毒魔法。

 たぶん状態異常攻撃だな。


『用意は良いですか。始め!』


「【剣術、回転斬り】」


 ローリンが突っ込む。


「【われは内包する、魔法規則。風盾生成の命令をレベル30の風魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを盾とせよ。風盾】」


 †翔†は風盾を発動。

 ローリンの回転斬りは風によって押しとどめられた。


「【われは内包する、魔法規則。毒霧生成の命令をレベル30の毒魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしもので満たせ。毒霧魔法】」


 †翔†が毒魔法を使った。

 毒霧は風盾と合わさった。

 毒魔法と風魔法の相性は良いな。


「【剣術、回転斬り】ダブル」


 あちゃー、ローリンの悪い癖が出たな。

 しゃにむに突っ込むなよ。

 こういう時は一度引いて考えるものだ。


「ローリン、頑張って」

「ローリン、ファイト」


 ローリンは風盾を突破したのは良いのだが、毒状態になってしまった。

 相手は2本の短剣を抜いた。


「【短剣術、いなし】」


 †翔†のスキル構成は毒魔法、風魔法、短剣術。

 ローリンの回転斬りを†翔†が短剣でいなしていく。

 火花が飛び散りまくった。

 ローリンの攻撃のいくつかは当たった。

 双方のHPはローリンの方が少ない。


 相打ちだがローリンに分が悪い。


「【魔法剣、火炎剣】【剣術、回転斬り】ダブル」

「【われは内包する、魔法規則。かの者は短剣。毒生成の命令をレベル30の毒魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものでかの者を包め。毒刃】。【短剣術、狂い咲き】」


 ローリンの回転斬りと†翔†の短剣が目まぐるしく動き当たり火花を散らす。

 ローリンの毒の度合いはますます増えて行く。


「一度引いて、解毒ポーション飲めよ!」


 ローリンの耳には入らなかったようだ。

 斬り合いになった。

 ただ剣と短剣の切り合いならローリンに分があったろう。

 だが、ローリンは毒にやられている。


「【魔法剣、火炎剣】【剣術、回転斬り】ダブル」

「【われは内包する、魔法規則。かの者は短剣。毒生成の命令をレベル30の毒魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものでかの者を包め。毒刃】。【短剣術、狂い咲き】」


「だから、一度引けって言ってるだろ!」


 この展開が続き、そしてローリンのヒットポイントは無くなった。


『†翔†の勝利』


「あー」

「そんな」


 向日葵とアイががっくりしてる。

 復活したローリンが頬を掻いてすまなそうにしていた。


「くそう、負けちった」

「ドンマイ、仇なら私がとるから」

「そうよ、任せて」


「これでそっちは後がなくなったね。降参するならして良いよ」


 †翔†がイヤミったらしく言った。

 向日葵頼むぞ。

 勝って1勝1敗の5分に戻してくれ。

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