第36話 耳ふぅ
「ふぃー、何か疲れた。今日はこれで打ち止めで、当分こないつもり」
魔道具屋で俺はため息をついた。
「そうか、エアハンマーと、追い風と、竜巻を教える」
レベル1で使えるのはエアハンマー。
もっともレベル1じゃそよ風ぐらいにしかならないけど。
風は送風機みたいなのは作れる。
スカートめくり魔道具とか作ったら大流行するだろうな。
だけど、スカート穿いている女性プレイヤーは少ない。
鎧みたいなスカートもある。
あれはちょっとの風じゃめくられないな。
馬鹿なことを考えた。
真面目に考えよう。
扇風機程度の風は作れるが、ループさせると魔石の耐久値のネックがある。
軽い玉を風で浮かすタバコのパイプみたいな形状の魔道具はどうかな。
完全に玩具だな。
100個も売れれば良いところか。
耳に軽い風とかどうだろうか、対人戦の小技として重宝するかも。
【われは内包する、魔法規則。かの者は、目の前にいる者の耳。エアハンマー生成の命令をレベル1の風魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものをかの者に向かって吹かせよ。耳ふぅー】こんな魔法だ。
これ、物凄く売れた。
ジョークグッズとして受けたらしい。
街を歩いていると突然耳に風がふぅっとなる。
攻撃だからPKになるんだけど、耳ふぅでは死なない。
死なないとPKマーカーは固定されない。
しばらく時間が経つともとのマーカーに戻る。
だから、悪戯をするプレイヤーが続出。
耳敏感ランキングなる物もできた。
女性プレイヤーで耳ふぅで、悶えるリアクションが良い人が上位にいる。
「おい、売れたのはいいけど、俺は報復で四六時中、耳ふぅされるんだけど」
愚痴るマクスダクト。
「じゃあ耳ガードを売ればいい。魔道具じゃなくて防寒具の耳カバーみたいなのを作れるだろう」
「作れるな。なんでそれを考えなかったんだ」
「恰好悪いからだろ」
「そうだな。だが、四六時中やられることを考えたら、やむを得まい」
マクスダクトの所にはもっと強力な耳ふぅをとの声が寄せられたが、俺はレベル1しか作れない。
他の人に頼むんだな。
強力な耳ふぅはくすぐったくなかった。
でも一瞬耳を聞こえなくする効果は出た。
ごうっという音がするからな。
対人戦の小技としては使えるのでマニアは作ったみたいだ。
対人戦でもパーティ戦の声を使った連携は大事だからな。
マクスダクトは変態プレイヤーとして女性に嫌われた。
俺は知らん。
なんかお詫びのヒット作を持ってこいと言われた。
風魔法で他に考えつく事と言ったら。
小さい凧を作って風魔法を当てる。
飛び続ける凧のオブジェだ。
これは売れないな。
ああそうか。
ミニチュアのボートに風を出す魔道具を付けて、水を走らせる魔道具なんてどうだ。
でも水槽のふちに当たるとそこで止まってしまうんだよな。
方向転換を組み込めば良いか。
どうやって。
【われは内包する、魔法規則。かの者は、水槽のふち。ふちに接触してたら、エアハンマー生成の命令をレベル1の風魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものをかの者と90度回転した方向に向かって吹かせよ。方向転換】
こんな魔法を組み込めばいいのか。
うん、推進と組み合わせれば出来る。
微調整とか必要だったが。
無事、ボートの魔道具が完成。
水槽に魚を飼っている人とかが購入。
マニアには受けた。
「お詫びにヒット作を持ってこいって言ったよな」
「ボートは渾身の作だぞ」
「売り方が悪いのか。じゃあボートの魔道具が物に当たったら爆発に切り換えろ。水辺の攻撃魔道具だ」
まあ、出来るな。
玩具を武器転用するとは。
まあ水辺の戦闘は水上歩行スキルか、水魔法の水上歩行が必要だ。
魔道具で攻撃出来ればそれは良いかもな。
攻撃ボート魔道具は売れに売れた。
水辺フィールドで苦戦してた人が多かったらしい。
誘導も組み込んだし。
ほとんど100発100中だ。
ただ、使い捨てなのでお財布にはよろしくない。
俺は儲かってウハウハだったが。
着実にゲーム内通貨は貯まってる。
また、リアルマネーに換金できるだろう。
明日は、魔道具作りを休んで、討伐に行こう。
向日葵も寂しがっているに違いない。
ただ、俺が本気を出すと他のメンバーに経験値が入らないんだよな。
何かその対策も考えるか。
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