第35話 売れる魔道具

 よし、頑張るぞ。

 今日3回目の魔道具屋。


「また来たな」


 若干NPCが引いている。


「あと1回来る予定です」

「そうか。じゃあ水弾と水壁と大瀑布を教えるぞ」


 レベル1で使えるのは水弾ね。

 レベル1水弾をループさせると小便小僧みたいだ。

 こんなの覚えても仕方ない。


 だが、先に進むには仕方ない。

 免許皆伝まで一歩ずつだ。


 水魔法で便利道具か。

 ええと霧吹きを作ってみよう。

 霧吹きは植物を成長させるのに必要な場合がある。

 薬師が薬草の栽培をやっているそうだから需要はあるはずだ。

 ただし俺しか作れないわけじゃない。


 【われは内包する、魔法規則。水滴生成の命令をレベル1の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを細かくせよ。噴霧】


 こういう魔法だ。

 水魔法が使えれば誰にでもこの魔道具は作れる。

 50個も作ればいいか。


 水生成をループしても仕方ないんだよな。


 【われは内包する、魔法規則。水滴生成の命令をレベル1の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを落とせ。雨粒】


 これをループして雨魔法。

 ループすると使い捨てになるな。

 畑の水やりにしては高額だ。


 念動で水を撒くとかできるが、それもまた違うな。

 一定時間置きに水滴を出す魔道具とかも作れるが、何に使うんだ。

 乾燥させたら駄目な物。

 そんな物はないというか思いつかない。


 植物の類だって定期的に水は要らない。


import time


i=0

while 1:

  time.sleep(60)

  print("【われは内包する、魔法規則。水滴生成の命令をレベル1の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを落とせ。雨粒】")

  i+=1

  if i>=60:

    print("【われは内包する、魔法規則。水滴生成の命令をレベル1の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを落とせ。雨粒】")

    i=0


 1分に一滴水を出す。

 1時間の場合は二滴出す。


 インテリアとしてこんなのを作ってみたが、こんな物を欲しい奴はいるかな。

 50個でも作り過ぎだな。

 10個も売れれば良い方か。


 マクスダクトに持っていったら。


「植物と組み合わせて売れ」


 うん、確かにインテリアにするなら植物と組み合わせるのが良いだろう。

 というわけで草を取りにきました。

 うん、インテリアになりそうな草はない。

 葉っぱの形が変わっているのがいいな。


 ゲームなんだから、はっちゃけろよと思う。

 ダルマ型とかトランプの図柄がひとつの草に同居してるとか。

 魚の形だとかなんかあるだろう。


 ファンタジー感がないぞ。

 頭きたから運営にメールしてやった。

 そしたら、エルフの頭型だとか、雪だるまだとか、骸骨とか、とにかく色々な草が生えた。

 運営もやるな。


『画期的な意見をありがとうございます。お礼として大金貨一枚を送付させて頂きました』


 おお、フットワーク軽いな。

 神運営だ。

 魔石の耐久値で糞運営とか思ってごめん。


 俺は草を採取して鉢に植えた。

 鉢に針金を差して、魔道具である魔石を取り付ける。

 1分立つと水滴が垂れる。


 うん、いまいち地味だな。

 でもインテリアはうるさ過ぎるのも嫌な人がいるだろうから良いのかもな。


 50鉢作ってマクスダクトに納品した。

 売れないかなと思ったら、売り切れた。

 買っていく女の子が多かったらしい。

 ああ、部屋に緑が欲しいとか言ってサボテンとか置いてたな。

 都会が特にそうらしい。

 ゲームでもそういうことを考える人がいるのか。


 意外な需要だな。


「鉢植えは意外に良いぞ。水やりしないでもいいのがさらに良い。で考えた。スライム育成セットを作れ」


 マクスダクトがそんなことを言った。

 定期的に水が欲しいのはスライムだと。

 ファンタジーらしくていいな。

 水槽にスライムを入れて水滴が出る魔道具を設置した。

 スライムはほとんど動かないが、水滴が垂れると反応した。

 おお、意外な魔道具の用途。


 インテリアとして良いな。

 スライムが水に反応するプログラムを組み込んでいるなんて運営やるな。

 運営の株は上がりっぱなしだ。


 水属性のモンスターはスライム以外にいないのかな。

 飼って面白いのはスライムぐらいしか思いつかない。

 大抵のモンスターは襲ってくるからな。


 スライムの育成セットはそれほど売れなかったが、マニアには評判になった。

 まあ、草の鉢植えが売れたからよしとするか。

 他の奴らは水滴の魔道具は作れない。

 俺だけの独占だ。

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