第25話 クラン

『合成スキルが解放されました』


 なぬっ、ポーションの合成が出来て、ウハウハだと思ったのに。

 運営にアイデアをパクられたって言ってもいいだろう。

 Pythonパイソンスキルで作れば手間と魔力が要らないから、他より少し安くできるのが旨味だ。

 だけど、完全に狙い撃ちされている感がある。


 Pythonパイソンスキルでは武器の合成は出来ない。

 合成スキルが上位互換なんて許せない。

 だが、文句を言ったところで駄目だろうな。


「クラン作ろうよ」


 向日葵がそんなことを言ってきた。

 クランは、良いかもな。


 ええと、メンバーが5人いないと駄目だったんだったよな。


 俺と向日葵とローリンで3人だ。

 あと二人足りない。

 PKから助けたアイに話を持ち掛けるか。

 マクスダクトは駄目だろうな。

 でも一応声を掛けてみるか。


「よう、クランを作ろうと思うんだ」

「俺に声を掛けたってことは入ってほしいのか? いいぜ」

「えっ良いの?」

「このゲームクランの掛け持ちが許されている。知らなかったのか。でないと職人クランは素材が確保するのが難しい。大抵、生産と討伐の二つに入る」


 そうだよね。

 素材の売買って手もあるけど、価値の高い素材は自分で取らないと。


「じゃあ頼む」


 残すはアイだけだ。

 アイにはリトルスネークって名前を教えている。

 バーテックスの名前でメールを送ったら、拒否されるかも。


「で、アイってユーザーにクランに入るように、勧誘のメールを送ってくれ」

「いいわよ。露店で一回驕りね」


 向日葵に頼んだ。

 さて結果は?


「会って決めるって」


 俺はマクスダクトにメールを出した。

 ファストの街の喫茶店に集まって貰った。


「向日葵さんのクランてリトルスネークさんの所だったんですね」


 驚いた様子のアイ。


「実は言ってないことがある。俺のユーザー名はバーテックスだ」

「えっ、あのチートと呼ばれているバーテックスさんですか?」

「うんうん」


「こんな有名人の方のクランだなんて光栄です」

「じゃあ入ってくれる」

「はい。投擲士は人気がないんですよ。まだどこのクランにも入ってません」


 冒険者ギルドでクラン申請の手続きをする。

 用紙を差し出されたら、クランメンバーの入力名前欄が現れた。


 5人のメンバーの名前を入れる。

 クランの名前は何にするかな。


「クランの名前だけどどうする?」

「バーテックスがクランマスターなのよね。じゃあ好きに決めたら」

「任せる」

「俺はどうでも良い」

「エッチなのでなければ」


「分かった。クランの名前は『天辺』だ」


 クランの名前を入力する。


『クラン天辺に加入しますか?』


 確認メッセージが現れたので、はいを押す。


『クラン天辺が設立されました』


「クラン設立祝いのパーティをしましょう」


 向日葵に仕切られている。

 ここはクランマスターとしては。


「俺のホームをクランハウスに改造しよう。そこの視察も兼ねて、そこでパーティしよう」

「ホーム持っているの。お金持ちだぁ」

「家の値段からすると稼いだ額と釣り合わないな。俺以外と取引があるのか?」

「ないよ。ただだったんだ。まあ見てもらったら分かるけど」


 ホームにみんなを案内する。


「廃屋だね」

「さすがただだな」

「きゃ、ネズミ。ネズミ嫌い」

「回転斬りで壊したい」


「ここを直そうと思うんだ」

「まあそう言うのは職人冥利につきるな」

「面白そう」


 俺のホームで飲み食いが始まった。

 怪しい雰囲気のホームだが、リアルじゃないのでさほど怖くないのだろう。


「個室が欲しいわね」

「回転斬りできる修練場も」

「倉庫が欲しいぜ」

「わいわい騒げる食堂とかも欲しいです」


 出る意見をメモに取る。

 大体の間取りは決まったな。

 修練場は地下になりそうだが、家の大きさに当てはめてもなんとかなりそうだ。


 二階は個室にすることにした。

 地下室ありの二階建て。


 うんうん、いいんじゃないのかな。

 ええと、Pythonパイソンスキルじゃ家は建たない。

 どうすりゃいいんだ。

 現実に直面した気分だ。


「お前、このメンバーだけでなんとかしようと思ってないか」


 マクスダクトに見抜かれたようだ。


「俺だけでなんとかしようと思ってた」

「伝手ならある。商人の伝手を馬鹿にするなよ。まあ安く上げるには素材は取ってこないといけないが」

「分かった。大工の手配はマクスダクトに頼む。俺達は木を切ってくればいいんだな」

「その通りだ」


 それぐらいなら何とかなりそうだ。

 明日から、みんなで木こりにジョブチェンジだな。

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