第24話 フルーツ味ポーション

 まずは、『名前隠蔽.html』の中身から。


<HTML>

<BODY>

<!--#exec cmd="c:/User/バーテックス/Python.exe?com=名前隠蔽.py"-->

</BODY>

</HTML>


 なるほどね。

 俺の中にあるプログラムが使われて名前隠蔽が発動している。

 書き換えが可能なら他の人のスキルとかの魔道具を俺が作れる。

 ぶっちゃけいまのところ意味はない。


 『.exe』と『.bin』の中身を見ても仕方ない。

 数字の羅列だから、意味など分かりはしない。

 何ならできるのよ。


 とりあえず、名前隠蔽.htmlをこうしてみた。


<HTML>

<BODY>

<!--#exec cmd="c:/User/バーテックス/Python.exe?com=魔力無限回復.py"-->

</BODY>

</HTML>


 使ってみたところ、魔力無限回復の魔道具として使えた。

 書き換えは可能らしい。

 だが、『.exe』と『.bin』の中身を書き換えたら、運営から警告が来たりしてな。


 バグってこのゲームがフリーズするなんてことになったら、申し訳ない。

 考えられるのは、例えば、『短剣.exe』と『剣.exe』があったとする。

 『短剣.exe』に『剣.exe』の内容を上書きすれば、短剣が剣になる。


 安い短剣が高い剣に早変わりだ。

 名前も好きにリネームすれば良い。

 こんなのもプログラムなら思いのままだ。


 だが、こういうずるをやりまくったら、運営から修正もしくは警告が来るに違いない。

 書き換えであり、運営から文句を言われない方法か。

 合成はどうだ。

 ええと『.exe』を二つ結合させる。


 やってみた。

 結合させたら片方のファイルを消せば問題ないらしい。


 ところでやってみた結果は何にも変わらない。

 最初のファイルの武器そのままの性能で、うしろに結合された武器は無視された。

 これじゃ損するだけだ。


 えっと『.bin』はどうだ。

 下級回復ポーションを二つ結合させたら、2倍の回復効果があった。

 でもこれじゃ、あまり得にはならない。

 最上級を二つ結合させて、さらに上の性能とかはそれなりに売れるだろう。

 でも、課金アイテムの噂でよくあるのが、最上級より性能の良いポーションだ。

 こんなの無課金で作ったら、お咎めを食らうに違いない。


 あっ、そうだ味はどうなるんだ。

 俺は『オレンジジュース.bin』と『最下級回復ポーション.bin』を結合させた。


 飲んでみる。


「まんまオレンジジュースだ。フルーツ味のポーションが出来た。これなら運営も文句は言わないだろう」


import subprocess # 機能を追加

import os # 機能を追加

subprocess.run("copy /b オレンジジュース.bin + 最下級回復ポーション.bin オレンジジュース.bin",stdout=subprocess.PIPE,shell=True,encoding="shift-jis") # ファイルを結合

os.remove("最下級回復ポーション.bin") # ファイルを消す

os.rename("オレンジジュース.bin", "オレンジ味ポーション.bin")


 こういうプログラムだ。

 さっそく、向日葵とローリンに持っていく。


「フルーツ味のポーション出来たの。一体どうやって?」

「バーテックス天才」


「ローリン、声が大きい。俺はリトルスネークだ」

「ごめん」


「じゃあ飲んでみますか」


 二人がポーションを呷る。


「うん、とても良いよ」

「ぷはぁ。うんまい」


 二人とも気に入ってくれたようだ。

 プログラムなら合成が100個でも容易い。

 あっという間に1000個のオレンジ味ポーションが出来上がった。


 マクスダクトの所へ持っていく。


「あまり高く売れないが、需要のある物を作ったな」

「薄利多売、いいじゃないか」

「こっちは手間ばかりだ。まあまとめてクランに売り込むって手はあるが、クランだと値切られるから、更に薄利多売になる」

「高くて利幅が大きい商品なんてそうそうできない」

「それもそうだな。そんなのがあればうちのクランで作ってる」

「じゃあ、3万本ぐらい作りますか」

「それぐらい売らないと美味しくない」


 フルーツ味ポーションは受けたが、大した金にはならなかった。

 まあ、ゲームが楽しくなったのならよしとしますか。

 でもこのゲームの開発者は何を考えていたのかな。


 リアリティを出せばいいってもんじゃないだろう。

 不味い物は飲みたくないのが人情だ。

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