第19話 PK

 あー、チート映像配信は、100再生ちょっといった。

 まあ、最初だから。

 ゼロでないだけましなんだろうな。


 画期的な魔道具の考えはまだできてない。

 とりあえずファストの街に歩いて戻ろう。

 別に歩いて帰る必要はない。

 ホームからスタートすればいいんだからな。

 でも、中ボスマラソンしたかったんだ。

 質のいい魔石は耐久値も高いと思う。


 俺は来た道を戻った。

 普通の人は戻るなんてことはしないから、なにかイベントが起こるかなという打算もある。


「チート野郎、バーテックスの配信始めるよ。今日はライブ配信だ。【Pythonパイソン 火球100倍速.py】」


 今日もレーザー火球が心地いい。


『許さん、チートの癖にのうのうと』

『俺はこの配信好きだけどな』

『チート見てても面白くない』

『GMは何してるんだ』

『通報しますた』

『じゃあ俺も』


 コメントの9割がアンチだ。

 それにしてもチャンネル登録者数増えたな。

 もう100を超えるんじゃないか。


 討伐はサクサク進む。


 あれっ、プレイヤーの一団がいる。

 俺はアイコンを見た。

 げっ、赤ということはPKじゃないか。


 あれっ、真ん中に青のアイコンがある。

 PKの中に青。

 これは大変だ。


 青のアイコンの人をモザイクにして。


「【Pythonパイソン 火球100倍速.py】」

「ぐわっ」

「敵か。あそこだ」


『チート対PKか。相打ちになってどっちも滅べ』

『チートが勝つに1億ソル』

『そんなの賭けにならない』

『頑張れPK』


 魔法の撃ちあいになった。

 100倍速とは手数が違う。

 瞬く間にPKはいなくなった。

 後に残されたのは装備などのアイテム。


「大変だったな」

「怖かったです」


 音声を一時止めた。


「俺はリトルスネーク、魔道具職人。よろしくな」

「アイです。投擲士やってます」


 投擲士かニッチだな。

 まあ俺も投擲士だけど。


「セカドの街まで送ってやりたいが、生憎と逆方向なんだ」

「そこまでしてもらう必要はないですよ。PKさえいなければ、ひとりで行けます。フレンド登録良いですか?」

「ああ、それな。ヤキモチ焼きの彼女がいてそういうのを嫌がる」

「そうですか。じゃあ、次に会うまでに彼女さんを説得しておいて下さい」

「そうするよ。お詫びにPKからドロップしたアイテムを全部やるよ」

「ふふふっ、あいつらの固有武器を捨ててやります」

「じゃあ、消えていくところを配信しよう」


 ええと、固有武器の説明には、誰が作り出したかと、PKの持ち物かどうかの説明がある。

 PKが他人から奪ったのは、後で持ち主に返すとして。

 PKの固有武器を山に積み上げる。


 音声を戻して。


「PKの固有武器消えますよ。点滅し始めたな。3、2、1、はい消えた」


『ああああ』

『うわぁ、なんてことするんだ』

『くそっ、許さん』


「この配信によく辿り着けたな」


『掲示板でお祭り騒ぎになってる』

『ふふふっ、恐れ慄け。お前がPKKしたのはジェノサイドだ』

『なにをいまさら。ジェノサイドはバーテックスをPKしたがってた』


「PK許せん。掛かって来い」


 俺は中ボスの所まで行ってジェノサイドを待つことにした。

 待つ間に中ボスマラソンをする。


 投擲のレベルは15を超えた。

 中ボスマラソンで30まで上がるだろう。


『あのマシンガン投擲。無敵じゃね。なんでチートじゃないんだ』

『ループスキル持っているって言っている』

『ループスキルか。それは強いな』

『騙されるな。あれはチートだ』

『ずるすぎるだろ。経験値上げがあっという間なんだぞ』

『俺、恐ろしいことに気づいた。吸魔魔法を組み込んでいるんじゃないか』

『じゃあ、魔力関係なしに無限に撃てるってこと?』


「よく気づいたな」


『そんなの勝てるわけないじゃん』

『物量には物量だよ。100人も集めりゃ勝てるだろう』


「どうやらジェノサイドは来ないようだ」


『中ボスが最下級のザコ並みにやられて行くのを見れば来ない』

『作戦が必要だな』

『首を洗って待ってろ』


「ああ、待ってる」


 ビクビクしているのは言わない約束だ。


『おお、宣戦布告か。これで退いたらジェノサイドは玉無しだな』

『やってやるよ』

『どっちも負けろ』


 再生数を確認したら、10万を超えてた。

 ええ、何で。

 掲示板見ると、ジェノサイドのクランメンバーと思われる奴らが怒り狂ってた。

 バーテックスVSジェノサイド事件なるスレッドも建っている。

 うん、こんなはずじゃなかった。

 もっと違う感じで目立ちたかったのに。

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