第16話 セカドの街

 セカドの街に入った。


「ポータル登録しましょ」


 向日葵の案内で街の広場に行く。

 そこにはクリスタルの6角柱が建っていて、周りをグルグルと光の玉が回っている。


 向日葵が6角柱にタッチしたので、俺もタッチする。


『ポータルにセカドの街が登録されました』


 あれっ、ファストの街でポータル登録してない。

 くそっ、そう言えば、ファストの街にも同じ物があったよな。

 また戻らないといけないようだ。

 だが、ホームからスタートできるから、楽勝だろう。


『パーティから向日葵さんが抜けました』


「じゃあ行くね」


『パーティからローリンさんが抜けました。パーティは消滅します』


「またパーティ組めたら嬉しいな」

「またな」


 手を振って二人と別れた。

 ファストの街に戻らないといけないが、その前にこの街を見て回ろう。


 むっ、物乞いがいるな。

 こういうのに恵んでやるとイベントが起こったりしてな。

 俺は木の皿に銅貨を落とした。


 銅貨は中に入っている銅貨と当たって、良い音色を立てた。


「あなた様は、古代魔法文明を受け継ぐお方。その道に希望があらんことを」


 俺って古代魔法文明の生き残りなの。

 いつの間にそんな設定が出来たんだ。

 Pythonパイソンがファンタジーとそぐわないから、古代魔法文明という設定にしたのに違いない。

 ご都合主義だな。


 ギルド酒場のテーブルに魔石を出した。


「【Pythonパイソン 魔道具化×100.py。無限魔力回復】


 魔力回復の魔道具はスライムの魔石で作ったけど、この道中で得た魔石はランクが少し高い。

 それで作ったら、無限回復の性能も上がっているんじゃないかなと思った。


s=input("魔道具にしたいプログラムを入力して下さい:")

for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  print("【魔道具化、Pythonパイソン "+s+".py】")


 ついでだから『魔道具化×100.py』も改良した。

 前のは魔道具にするプログラムを変えるのに、プログラムを弄らないといけなかったが、それじゃ不便だからな。

 カーソル対応にしろよという声が聞こえてきそうだ。


 それは後でやる。

 そう言えばファストの街もほとんど探求してないな。

 戻ったら出歩こう。

 この街の見所はどこだ。

 迷ったら人に聞く。


「この街の見所を教えてくれ」

「情報料として銅貨10枚頂きます」


 ちっ、冒険者ギルドはこんなことでも金を取るのか。


「分かった」

「大聖堂はもう行きましたか、あそこのステンドクラスとパイプオルガンは素晴らしいと評判です。スタンピード鎮圧の石碑は、デートスポットとして最善です。ポータルとは別のもうひとつの広場にある噴水は、魔石を入れると願いが叶うそうです」


 ふーん、まあいいや。

 そのうちに行こう。

 どれも趣味じゃない。

 というか俺って旅行嫌いだった。

 ゲームのチョイスを間違った。

 いや、格ゲーは運動神経がついていかない。


 シミュレーションとかも駄目だな。

 頭を使うのは得意じゃない。

 Pythonパイソンだって、すでに頭が限界だ。

 1週間でよくエディタもどきが作れたものだ。


 俺は商売に生きるのだ。

 そうしよう。

 さて、次の魔道具は何にしよう。

 火球10倍速なんか良いかもな。


for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  print("【われは内包する、魔法規則。火球生成の命令をレベル1の火魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを飛ばせ。火球】")

  for i in range(0,10,1): # 10回ループ

    print("【われは内包する、魔法規則。突風の命令をレベル1の風魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしものを実現せよ。風跳躍】")



 吸魔魔法を抜いて、作ってみた。


「依頼を出したい」

「はい、承ります」

「魔道具の性能テストだ。銅貨10枚でどうだろうか」

「よろしいかと、手数料として、銅貨2枚頂きます」


 そして、プレイヤーが俺の依頼を受けてくれた。


「魔道具のテストだって? そういうのは好きだな。俺はブロウ」

「俺は、スモールスネーク。この魔道具、火球10倍速を試験してもらいたい。よろしく」

「おお、マッドな香りがするね」


 ギルドの修練場を借りて、試験となった。

 一発目。

 一撃放っただけで壊れた。


 そんな気がしてたよ。

 ループが駄目なんだな。

 くそっ、ループが使えなきゃ威力が半減しちまう。


「すげえな。あんた天才だ。どうやったんだ?」

「火球を作って、風魔法を10回掛けて加速させた」

「合成魔法ってわけか」

「そうなるかもな」


『ブロウさんからフレンド申請が来ました。承認しますか?』


 非承認と、承認したら俺がバーテックスだとばれちまう。


「あれっ、フレンド登録不味かった?」

「ああ、彼女がヤキモチ焼きなんだ。男でも疑っちまう」

「なんというか。重たい女だな。だが惚れられているってことだろ羨ましい」


 くそう、彼女なんかいないさ。

 後味の悪い嘘をついちまった。

 しかし、何でこんなに上手くいかない。

 火球10倍速にかけてたのに使い捨てじゃしょうがない。


 せっかくだから、ブロウにはもう少し付き合って貰う。


for i in range(0,100,1): # 100回ループ

  print("【投擲、レベル1】")


 このプログラムで試験。

 結果は11回目で壊れた。

 どうやら、スライムの魔石だと1000回ほど『print』を使うと壊れるらしい。


 少し格上の魔石を使う。

 13回までは耐えた。

 魔石の格が上がれば良いらしい。


 それにしても使い捨てとはな。

 いや、普通に魔道具を作っても耐久値は設定されているのだろう。


「ありがとう助かったよ」

「ヤキモチ焼きの彼女にもよろしくな」


 そう言ってブロウと別れた。

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