第14話 残念な魔法剣士

「あれは何だ。木人か」

「ウッドゴーレムよ」


 ウッドゴーレムの一団が大剣を持った女の子を囲んでいる。


「くっ、回転斬りが使えれば」

「手伝おうか?」


 俺は声を掛けた。

 横入りはマナー違反だからな。


「マナポーションがあったら頂戴。相場の二倍払うわ」

「魔力回復魔道具を渡す。投げるよ」


『魔道具をひとつ捨てますか?』


 承認と。


「やった。これで。【剣術、回転斬り】」


 女の子は独楽のようにくるっと回り、大剣は光の軌跡を残し、ウッドゴーレムを全て破壊した。


「あなたソロなの? ソロは危ないよ」


 向日葵が気軽に話掛けた。


「馬鹿にしないで、ぼっちじゃないんだから」


 いや、その反応がぼっちだから。


「お前、回転斬りジャンキーだな。某ゲームの回転斬りが好き過ぎて、回転斬りで倒さないと我慢できない。で味方を巻き込むから敬遠されたと」

「なんで知っているの。あなた何者?」


 こいつポンコツだな。


「バーテックスだ。やべっ、本当の名前を言っちまった」

「あなたがあの違法プレイヤーでチート野郎のバーテックス? リトルスネークって見えるけど」


 俺は隠蔽の魔道具を停止させた。


「どうだ」

「うそっ、有名人じゃない。サイン貰わないと。私はローリン。フレンド登録良い?」


『ローリンさんからフレンド申請が来ました。承認しますか?』


 承認っと。


「私も。仲間外れにしないで」


 向日葵もフレンド登録したらしい。


「ところで俺に対する忌避感とかないのか?」

「あんた良い人じゃない」

「まあ善人だとは思う」


「でしょ、ルールを破って罰するのはGMの役目よ。プレイヤーは関係ないわ。マナー的に問題ないのなら、良いんじゃないの」

「そう言って貰えると嬉しいよ」

「次の街まで行くんでしょ。私達でパーティを組んで次の街までやってみない」


「迷惑じゃない?」

「ぜんぜん、バーテックスもそうでしょ」

「ああ、一緒に行こう」


『パーティ申請がなされました。参加しますか?』


 承認と。

 何気に初パーティだな。

 このゲーム、パーティ組んでなくても一緒に戦える。

 パーティ組む利点はステータス情報を共有できることぐらい。

 その場合、スキルとか隠せる。

 普通、体力と魔力だけを公開する。


 ローリンはスキル情報も公開したな。

 どれどれ。


――――――――――――――――――――――――

名前:ローリン

レベル:16


体力:175/321

魔力:15/85


攻撃:138+24

知識:15

守備:122

器用:22

俊敏:21


スキル:

  火魔法 レベル1

  剣術 レベル30

  魔法剣 レベル2

――――――――――――――――――――――――


 なんというか残念な魔法剣士だな。

 火魔法と魔法剣が全然育ってない。

 他人の育成方向にケチをつけたいわけじゃない。

 感想は言わないでおこう。


 『+』表記は固有武器によるものだろう。

 ちょっとだけ羨ましいと思った。


 フォーアイウルフが現れた。

 狼の癖に4つ目だ。

 たぶん目が良いのだろうな。


「こいつうっとうしいのよね。【剣術、回転斬り】」


 フォーアイウルフはひらりと避けた。


「私が。【われは内包する、魔法規則。水弾百撃生成の命令をレベル20の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしもの分裂飛ばせ。百裂水弾】。ローリン、避けて」

「【剣術、回転斬り】」


 向日葵の魔法をローリンは避けないで、回転斬りをして魔法を反射した。

 魔法が色んな方向に飛び散る。

 俺の方にもいくつか飛んできた。


 これはいかんな。

 たしかにこれじゃパーティは組めない。


「【Pythonパイソン 火球10倍速.py】」


 俺はフォーアイウルフを仕留めた。


「ええと、ローリン。魔法、避けようよ」

「ええー、避けたじゃない」

「あれは避けたとは言わない」

「回転しながら移動したら」


 向日葵が打開策を提案した。


「そんなの回転斬りじゃない」

「回転斬りの進化だと思えばいい。新しい回転斬りだ」

「新しい回転斬りいいかも」


 こいつ本当にポンコツだな。


「モンスターが来たぞ。新しい技を見せてやれ」


「行くよ。【われは内包する、魔法規則。水弾百撃生成の命令をレベル20の水魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にありしもの分裂飛ばせ。百裂水弾】。ローリン、避けて」


 フォーアイウルフに向かって向日葵が魔法を放つ。


「【剣術、回転斬り】」


 ローリンが回転しながら移動する。

 うん、いいかも。

 そして、ローリンは回転しながら戻って来て、魔法を避けたフォーアイウルフ追尾して仕留めた。


 ローリン強いかもな。

 無敵攻撃じゃないか。

 回転している間は俺にもお手上げだ。

 弱点は思いついたけど、言わないでおこう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る