第13話 投擲スキル

 レイドボスのいたエリアに入った。


『中ボス戦を開始します』


 現れた敵は、エルダートレント。


「俺に任せて」

「任せた」

「【Pythonパイソン 火球10000改.py】」


 2メートルを超える大火球は、エルダートレントの前でかき消えた。

 えっ、魔法無効化。


 エルダートレントから葉っぱの竜巻が撃ち出される。

 俺は慌てて避けた。


「魔法食らうと、吸収して反撃するのよ。どう、降参する? 向日葵様お願いって言ったら私が討伐してあげる」


 俺は考えを巡らせた。

 魔法が利かないとなると俺の手札はない。

 投擲を馬鹿にしてたが、投擲が欲しい所だ。

 俺は小石を拾い集めた。

 そしてエルダートレントに向かって投げ始めた。


 100を超えただろうか。


『投擲スキルを覚えました』


 やった。

 こうなりゃ俺の勝ちだ。


while 1: # 無限ループ

  print("【投擲】")

  for i in range(0,1000,1): # 1000回ループ

    print("【われは内包する、魔法規則。かの者は自分。魔力吸収の命令をレベル1の吸魔魔法に受け渡し、魔法情報を受け取れ。魔法情報にかの者の名前を渡せ。極小吸魔】")


「【Pythonパイソン 無限投擲.py】」


 マシンガンの如く小石が投げられていく。


『投げる物がありません』


 小石集めるより投げる方が早い。

 俺は小石を集めるのに忙しくなった。


 やがて、小石はエルダートレントをえぐるようになって、貫通するようになり、最後にエルダートレントは真ん中から折れた。

 そして、光になって消えていく。


 魔道具化と投擲で60レベルが埋まりそうだな。

 でも投擲は良いスキルだ。

 小石さえあれば、ほぼ無敵。


「ステータスオープン」


――――――――――――――――――――――――

名前:スモールスネーク(バーテックス)

レベル:27


体力:64/64

魔力:284/284


攻撃:31

知識:158

守備:31

器用:48

俊敏:31


スキル:

  全属性魔法

  Python

  魔道具化 レベル21

  投擲 レベル10

――――――――――――――――――――――――


 投擲が良い具合に育ってる。


「ちぇ、私の華麗な杖術さばきを見せたかったのに」


 向日葵がすねた。


「これからは一緒に討伐して進んでいこう。俺には向日葵がついてないと」

「そうでしょ、私がついてないとね」


「ドロップ品がだいぶ溜まったな。スライムの核は全部、向日葵にやるよ。その代わりに魔石をくれ」

「トレードしましょ」


 そう言えば、トレントの葉っぱと枝がたくさんあるな。


「トレントの葉っぱと枝はどうする?」

「葉っぱは薬の材料になるから貰うわ。枝は要らないわね」

「じゃあ俺が貰っておく。そう言えばユグドラトレントの葉っぱもあるけど」

「ボスドロップは悪くて貰えないわ」


 かと言って売りには出せない。

 バーテックスが俺だとばれるからな。

 向日葵がそれで薬を作っても一緒か。

 鑑定で材料がばれたりしそうだ。

 となると、自分で消費するのが良いな。

 乾燥させて、お茶にするか。


 それなら簡単に作れて、自分で消費できる。


「他に何か必要なドロップ品はある?」

「ホーンラビットの角と肉、それとウルフの毛皮が欲しいな」

「いいよ、持ってて」


 悲鳴が聞こえた気がする。

 空耳かな。

 俺は耳を澄ました。

 やっぱり悲鳴だ。


「向日葵、誰かがピンチだ」

「私にも聞こえた」

「急ごう」


 だが、悲鳴の場所が分からない。

 迷った。

 マップがあるから道に迷ったわけではないのが救いだが。

 悲鳴の主はどこだ。


「ちっ、またトレントか。【Pythonパイソン 火球10000改.py】、死んでおけ」


 出てくるザコ敵が煩わしい。

 ザコ敵が現れると時間を取られるからな。


「こっちじゃない。おそらくプレイヤーなら、討伐しながら進んだと思う。リスポーンするまで時間があるから、空白地帯ができてるはず」

「そうかザコ敵がいる方向は間違いなんだな」


 小石を投擲してトレントのいない方向を見つける。

 この方向にはトレントがいないなようだ。


「見て取り残したドロップ品がある。きっとすぐそばよ」

「急ごう。救助は駄目でも固有武器ぐらいは拾ってやらないと」

「プレイヤーの名前が分からないと返すのが大変よ。名前は確認しておきたいところね」


 空白地帯に入ったようだ。

 ザコ敵が一切出て来ない。

 悲鳴の主は近い。

 見えた、モンスターに囲まれている。

 初めてみるモンスターだ。

 エリアが切り替わったらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る