三、碧血
宦官が世の善と正義と
身命にかえても帝を洛陽より逃れしむ、またいかにと、王城へ残っていた数少ない人士らは、額をつきあわせて決意し、思案した。
宦官も、人士らの内議の場に居った。居りて、人士らの内議に耳を傾け、その義と志の崇高潔癖なるに内心感嘆し、議事を聞きてはときに一人首肯した。
人士らは宦官の居るを、気にもとめなかった。一つには、宦官の忠なるは既に疑うべくもなかったからであり、また一つには、無学な宦官が人士らの高尚な内議に加わることができるとは露ほどにも思わなかったからである。
よって
「
と人士らは口々に宦官の忠義を賛美した。
「とても宦官とは思われぬ」
――何たる名誉か!
宦官は、感激に打ち震えた。
碧血の意味はわからなかったが、賞賛されていることはわかった。
人士らは、もちろん宦官は知るまいと、碧血の何たるかを説いた。意を理解したる宦官は、また再び打ち震えた。賤しき宦官をかの
この内議で決せられし蒙塵の計画は、こうである。
一行は夜陰に紛れ王城を出で、義人の協力ありて、洛陽の南を流る
「
人士らの此度の冴えなき計画を聞きたまい、帝は計画を奏せし十人あまりの人士へ、かく
決せられし蒙塵の日は、
――もう暗くなるか。
宦官は目をすがめ、刻一刻と細く消えゆく夕の光の中、椀を洗った。
残日も、遂に沈んだ。決行のときである。
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