第3話 宿題

「おーい着替えできたぞ...ってなんで机にディープキスしてんだ」


「してない!こっちの話だから気にしないで!」



着替えして下りたら幼馴染が机に突っ伏してた件。その前には胡散臭い笑みを浮かべた我が愚姉がいるからどうせまたからかわれたんだろう。姉ちゃんはことあるごとにナツをからかうからな。見てて面白いけどその後八つ当たりされる身としては堪らない。



「おい、姉ちゃんまたなんか言っただろ」


「今回は何も言ってないよ?」



ってところがまた悪意を含んでるな。流し目を向けながら二階に戻ろうとすると声を掛けられた。



「そう言えば、ヒロちゃん宿題終わらせたの?」


「とっくに終わってるよ。ナツもだろ?」



そう声を掛けると階段を上ろうとしていた人影が急停止し、錆び付いたロボットの様に首を旋回させる。おいちょい待て、なんか嫌な予感が。



「や、やってるよ~...」



この瞬間俺は悟った。あ、こいつやってねぇわ。




□ ■ □ ■ □ ■




「う~」



唸り声を上げながら問題を解くナツ。



「ハァ...毎回言ってんのになんで早いうちに終わらせないかねぇ」


「し、しょうがないじゃん。やりたくないもんはやりたくないんだもん」



場所は変わって俺の部屋。宿題を終わらせてないバカがサボらないように監視している所だ。ちゃぶ台越しに対面で座りシャーペンをノートの上で走らせてると、抗議の意を示される。



「普通こういうのって男側がサボってるもんでしょ!なんで終わらせてんの!」


「フッ、残念。俺は課題は配られた日に終わらせるタイプだ」



まあ復習とか全然しないから提出するときに内容忘れてるが。



「高校入ったらすぐテストあるんだから。しっかり勉強しないと赤点取るぞ?」


「うぐっ。そ、そもそも入学前なのに宿題を出す方が悪いじゃないか!」


「そりゃそうだけどさぁ...でも受験勉強してる時の方がキツかっただろ?」


「た、確かにそうだけど...でもめんどくさいものはめんどくさいよ...」


「う~ん、どうしたもんかねぇ...」



何かナツのやる気を引き出す方法はないかと頭を捻らせる。



「じ、じゃあ...」



するとナツがおずおずといった風に声を出す。



「ん?なんかあるか?」


「あの、ボクの言うことを一つ聞いてくれるならやる気出してもいいかなー、なんて...」


「...ほう」



それは意外ッ!願い事!!



「まあ、常識の範疇なら聞いてやらんこともないな」


「よし!絶対だからな!」



そう言い終わるや否や急にやる気を出してペンを持つ。俺への願い事如きでそんなやる気出されても...。しかも下向いてニヤッて笑ったの見えてるからな。



(こりゃ墓穴掘ったか?)



一抹の不安を胸に抱えて、復習の為に開いていた教科書に目を落とした。

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我慢する俺と惚れさせたいお前 碧天 @hekiten

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