第2話 現実

俺、樋神洪正ひがみひろまさ潤羽夏うるばなつは所謂幼馴染という関係である。同じ年、同じ月、同じ病院で生まれ親同士が親友、おまけに家も隣と来たもんだ。こんなん関係持たない方が難しい。かくして俺は小中と一緒にナツと育ってきた。

ところで全国の男性諸君は幼馴染に幻想を抱いてはいないだろうか。清楚可憐な美少女幼馴染に起こしてもらい一緒に登校する風景を夢想したことがあるかもしれない。


断言しよう!そんなことは決してないッ!


まあナツは世間一般では美少女の類に入るだろう。中学ではそれなりに告白されてたし。だが現実は非常、それを補って余りあるガサツさを備えていた。いちいち乱暴だし勝気で負けず嫌いな性格も相まって男勝りにアグレッシブだ。まあ流石に学校では自重してるらしく鳴りを潜めてはいるが、ひとたび二人っきりになると本性を現す。そのせいで俺の疲労はマッハだ。まあそれでもあいつと関係を切ってないあたり毒されてんなぁ...と思いつつ着替えを終えて階段を下りた。




□ ■ □ ■ □ ■




ボク、潤羽夏と樋神洪正は幼馴染である。同じ年、同じ月、同じ病院で生まれ親同士が親友、おまけに家も隣。そういうこともあって言葉も話せない頃から一緒に育ってきた。竹馬どころかベビーカーの友である。ちなみに生まれたのはヒロの方が早い。誤差の範囲だけどね。


そんな幼馴染から見たヒロの印象は『優しい』に尽きる。ボクの行動に呆れたり苦言を呈することはあれど滅多なことでは怒らないし怒鳴ったりしない。できてないことがあれば指摘してくれるし、必要があれば手伝ってくれる。本人曰く「怒ってもしゃあないしお前の思う壺だから。あと負けた気するし。」らしい。友人たちからは「過保護幼馴染」「ナツお世話マシーン」「ダメ幼馴染製造機」などいろいろ言われているが優しいのだ。あと基本的に無気力だけどやるときはやるし...そんな幼馴染をカッコいいと思っちゃうこともあるわけで。ちょっぴり、ほんのちょっぴり意識しちゃってるのだ。なのにそれとなーくアプローチしようが向こうには全く靡く素振りなし。



(はぁ...どうしたらいいんだろう...)



そうして机に突っ伏す。まだまだ先は長そうだ。

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