第6話


 麗羅Side:


 今日は待ちに待った、彼とのデートの日。

 あたしは服選びで凄く迷っていた。


 彼に私服を見せるのはこれが初めて。


 うう……ドキドキする……。


 杉崎に可愛いって言われたい。言わせたい。


 そんな思いが溢れ出す。感情が蠢く。


 これはどうかな? でもちょっとダサいかも。


 ワンピースは今の季節、寒そうだし。


 ふと時計を見ると、服選びを始めてから30分以上が経過している事に気づいた。


 やばい。どうしよ。


 このまま一人で悩んでたら、時間だけが過ぎていくだけだし。


 そうだ! 杉崎に意見を求めよう。


 すぐさまLINEを開く。


『どんな服、着てきて欲しい?』


 すると、すぐに既読がついた。


『麗羅の好きな服でいい。麗羅はどんな服を着ても可愛いよ』


 ……っ!


 こんなこと、言われたらキュン死しちゃうじゃん!


 わあああああ!


『わ、分かった。楽しみにしてて』


 結局、助言は得られなかった。


 だから、自分で選ぶことにした。


 ようやく決まったコーデは、白いシャツの上に茶色のニットベスト。下は紺色のチェックのロングスカートとなった。そして、ニット帽を被り、ショルダーバッグを提げる。


 服選びに一時間以上も掛かってしまった。けど、彼に「可愛い」って言われる為なら、この時間は無駄じゃない。


 一階に下り、朝食を食べに行く。


 すると、お母さんからこんな事を言われた。


「あら、麗羅。今日もオシャレね。というか、貴方随分変わったわよね。彼氏でも出来たの?」


「内緒」


「それに学校、嫌いじゃなかったの? 最近、笑顔で登校してる気がするけど」


「嫌いじゃない。あいつがいるから」


「今日はどこ行くの?」


「内緒」


「誰に似たのかしら、この口の固さは。ま、応援するわ。いってらっしゃい」


 朝食を食べ終え、家を出る。

 待ち合わせ場所は駅前。


 杉崎にLINEを送る。


『いま家、出たから』


『オッケー。待ってるからな』


 彼を待たせていることに、ちょっぴり罪悪感を感じたあたしは小走りになった。


 駅前に着くと、すぐに彼を見つけた。

 彼に向かって手を振る。


「杉崎ー」


 すると、彼も手を振り返してくれた。だが、杉崎はあたしの姿を見た瞬間、赤面して目を逸らす。


 どうしたんだろう……。


「杉崎に可愛いって言われたくて、服選びで迷ってたら、遅くなっちゃったっ。待たせてごめんね。どう? あたしの私服」


「……!」


 あまりのあたしの可愛さに律矢は何も言えなかった。


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